碧魚 まり

小学校の先生。食べることと旅行と喫茶店が好き。子どもたちのこと、食べもののことなど気ま…

碧魚 まり

小学校の先生。食べることと旅行と喫茶店が好き。子どもたちのこと、食べもののことなど気ままなエッセイを綴ります。子どもたちの瞳がきらきらする瞬間を引き出すために奮闘中。2024秋 出産予定。 公式コンテスト受賞#わたしだけかもしれないレア体験 #どこでも住めるとしたらetc…

マガジン

  • 母になるまで。

    妊娠が分かってから、わたしがお母さんになっていくまでの日々を綴ったエッセイたち。

  • エッセイ

    これまでに書いたエッセイをまとめています。🍀

  • わたしの口福

    食べることが大好きな人の、フードエッセイ。

  • 読み返したい誰かのnote。

    また読み返したいたいなあ、と思ったnoteを集めています。

  • 先生だって、あのね。

    碧魚の、小学校の先生としての日常をちらり。

最近の記事

  • 固定された記事

家庭訪問先でステーキを食べて泣いた話。

「さあさ、もう焼き上がりますんで。」 玄関で靴を脱いでいると、にこやかにそう言われた。 もう、焼き上がり、ますんで・・・? 漂う焼けるお肉の、暴力的なまでにそそられるいい匂い。お昼に食べた給食はすっかり消化し終えている。ほどよく空っぽの胃が、物欲しげにきゅるきゅる動く。 ・・・ちょうどご夕食の準備中だったのだろうか。タイミングが悪くて申し訳ない。早くお暇しなければ。 そんなことを考えながら案内されつつ、部屋に続く廊下を歩く。 「さあさ、先生、こちらです。」 そして通さ

    • その日唯一、電車で気づいてくれたのは。

      授かって、5か月とちょっとを迎えた頃の話。 自分ではお腹が丸くなってきたなあとはっきり分かるものの、日頃ゆったりした服を着ていることもあり、見た目からは、まだ妊婦だとわからなさそう。 通勤で使う電車は通勤ラッシュ時とあり、すごく混んでいるというほどではないが、それなりの乗車率。もちろん優先座席だって関係なく埋まっている。 ちょうどその日も、優先座席の前に立ってはいるものの、大学生のような男女、会社員らしき男女、初老の男性、山登りに行くような格好の中年女性、この中で手帳に

      • ありふれたカレーが救った、ある日の夕方。

        カレーが好きだ。 まあ一口にカレーと言っても、欧風カレー、インドカレー、キーマカレー、家庭的なカレー、給食のカレーと多種多様であるんだけど、わたしはカレーと名がつくものなら満遍なく愛している。 ある日の仕事帰り、どうしてもカレーの口と化してしまった。 きっかけは、ほんの些細なことだった。 松屋か何かのチェーン店で窓際に座っていたサラリーマンのおじさんがカレーを食べていた。 彼が美味しそうに、とか期間限定の、という枕詞がつくわけでもない。 ただ、それを一目見た瞬間、気付いた

        • やっぱり至高、会席料理。

          私たち夫婦は毎年必ず、お互いの誕生日あたりの週末に「お誕生日旅行」と称してどこかへ出かける。 ただ、妊娠中の身としては、何かあったときにすぐに戻れないようでは困るので、今回は近場の料理宿である奈良の「飛鳥荘」さんに泊まることに。 秋に出産予定なので、こうやってゆっくり最高の会席料理を味わえるのも、もうしばらくないのかもしれない…なんて思うと、より真剣に料理に向き合おうじゃないか…という気持ちになってきた。 ということで、いつかまた自分が読み返して美味しさの余韻に浸るためだ

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        家庭訪問先でステーキを食べて泣いた話。

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          6本
        • わたしの口福
          33本
        • エッセイ
          122本
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          29本
        • 先生だって、あのね。
          31本
        • 徒然、お茶日和。
          7本

        記事

          紫陽花祭りで見かけた、残念な人。

          先週末、植物園で行われていた「紫陽花祭り」に行ってきた。 7月を迎え、暑さが本格的になると紫陽花シーズンも終わってしまうので、ぎりぎり駆け込めて良かった。 紫陽花は大好きな花の一つなので、梅雨の時期になってたびたび通勤路で目にすることが出来てうれしい気持ちになっていた。 けれど如何せん、立ち止まってじいっと見つめる時間の余裕も心の余裕もなかったので、こうしてただただ紫陽花を見るという目的のために出かけられて満足。 広大な敷地の植物園の中での紫陽花祭りであり、鉢に植えられた

          紫陽花祭りで見かけた、残念な人。

          卵で産みたい。

          「つわりはしんどい。」 情報として、知ってはいた。 本や映画でそれらの描写は度々見てきたし、大好きな作家さんや友人が、妊娠当時のことを書いた血の通った文章だって読んできたから。 それらを読みながら、 「わあ、妊婦さんって大変なんだなあ。」 「ずっと吐き気なんて、気の毒だなあ。」 だなんて、その辛さに共感していたつもりだったけど今なら分かる。ちっともわたしは分かってなんかいなかった。 実際に自分の身体で起こって初めて、その辛さが本当に分かるのだと痛感することになる。

          卵で産みたい。

          自分の誕生日プレゼントに、人生初アートを買う。

          3年前から、毎年自分の誕生日前後にエッセイを書くことにしている。 そのときその瞬間の自分のリアルを文章という形にして後から見返すと、ほうこんなことを思っていたのか…と自分のことにも関わらずちょっと俯瞰的に見ることが出来る。 これがなかなか興味深い。 ちなみに、去年の。 なんだかつい最近な気がする。 でも、このときみたいな焦りのような気持ちはだいぶ緩やかになったような。 一昨年の。 結婚してちょっぴり変わったこと。 誕生日は、あんまり関係なかった。笑 3年前の。 20

          自分の誕生日プレゼントに、人生初アートを買う。

          ポテト欲、爆発中。

          クラッカー5枚入り、2袋。 粉末味噌汁。 小さいおにぎり。 チョコレート3つ。 干し柿。 これはとある日のわたしのおやつである。 これで普通に朝昼晩も食べているからこわい。 吐きづわり、食べつわり、眠りつわり…。 妊娠中、様々なつわりがある中でどうやらわたしは、空腹になったら気持ちが悪くなる「食べづわり」らしい。 なんせ、少しでも空腹になるとしんどい。 横にならなければいけないほどではないが、車酔いのような何とも言えないような不快感…。 あの感覚が嫌で堪らないので、しん

          ポテト欲、爆発中。

          きっと他の人が素通りしてきたアレを集めてる。

          シール、イヤリング、マスキングテープ、ハンカチなどなど。昔からこういった細々したものを集めるのが好きだ。 お気に入りのあのお店で。 出先あるいは旅先でふと訪れたお店で。 運命の出会いを果たし、きゅんと心が弾む可愛いセンサーにひっかかったそれらを、自分のものするという行為は、わたしの心のうちを幸せな色で満たす。 ちょっとしたアクセサリーや小物、文房具、それらを愛好している方はきっと世の中にたくさんおり、きっとその気持ちに共感してくれる方々も多いと思う。 しかし、わたしは

          きっと他の人が素通りしてきたアレを集めてる。

          子どもを泣かせた、ベテラン先生の一言。

          「すみません、まだ子どもが帰っていなくて・・・。」 ーまた? 電話で保護者からのその知らせを耳にしたとき、正直そう思って心がざらついてしまった自分がいた。 ちらりと職員室前方の時計に目をやる。 時計の針は、16時を過ぎたところ。 1年生の下校時間からは、もうすでに30分以上過ぎている。 クラスのれおくん(仮名)は、少し前にも同じように下校時間を過ぎても帰宅していないということがあった。 そのとき彼は家に帰らず、ランドセルのままで直接友だちの家に遊びに行っていたのだ。

          子どもを泣かせた、ベテラン先生の一言。

          「母になるまで」わたしが綴っていく理由。

          先日は、妊娠するまでと妊娠が分かってからの気持ちのエッセイを投稿したところ、沢山のあったかいコメントが並んでて、数日にへらにへらと読み返しておりました。 いつもnoteで親しくさせてもらってる方々。 わたしの文章をフォローしていただいてる方々。 縁あってわたしの文章にたどり着いたくれた方々。 ことばや表現が好きなnoteの町の住人はやっぱりあったけえ……涙 ほえ、妊娠?! え、何のことよ、聞いてないわよ?! って方はこちらをご覧くださいな。 先日書いた通り妊娠生活のこと

          「母になるまで」わたしが綴っていく理由。

          ようこそ、まめちゃん。

          いつからだったんだろう。 Instagramに並ぶ友人たちの赤ちゃんの写真を可愛いねえ、という気持ちだけで見れなくなってしまったのは。 彼女らの作る美味しそうな料理とか、心動いた素敵なお店とか花や空の写真とか。 それらから垣間見える日常への眼差しが好きだった。 しかしその内の何人かは子どもが生まれてからかなりの頻度で更新されるのは、我が子の写真一色になった。 そりゃあ1日の大半は育児になるし、関心ごとだって何よりもまず愛しい我が子のことになるよね、なんて頭で理解しながら

          ようこそ、まめちゃん。

          美しきパフェに浸る。II

          パフェとは、つかの間の夢であり刹那のエンターテイメントである。 以前、ブライトンホテル東京ベイのロビーラウンジ「シルフ」にて「美しすぎるパフェ」として苺をふんだんに使用したスワンパフェを堪能した。 そして今回また別のブライトンホテルに泊まることになり、他のスワンにもお目にかかれると知ったとき、これはぜひ会いに行かねばと思った。 というわけでパフェを食す、あの夢のような時間を求めてブライトンホテル京都のラウンジ「ク―・オ・ミディ」へ。 期間限定の「パフェ スワン・プリン

          美しきパフェに浸る。II

          「風が気持ちいい」のかっこいい言い方。

          茶室に入った瞬間に、あれ、とほのかな違和感を抱いた。 それもそのはず。 先月までぽっかりと畳をくり抜いて、備え付けてあったはずの炉がない。その場所は何事もなかったように畳になっていた。 その代わり、勝手付けに近い方の畳の上の釜でしゅんしゅんとお湯がたぎっている。 風炉、である。 5月からは気温が高い時期は、こうして畳をくり抜いた「炉」から畳の上でお釜を沸かす「風炉」に切り替わる。 前回前々回と、用事と体調不良とお稽古に行けない日が続いてしまい、今日は久しぶりの茶道のお稽

          「風が気持ちいい」のかっこいい言い方。

          京都で小学校だった建物でお籠りステイ。

          ホテルやら旅館やら、わたしにとってのお宿とは、観光地へ赴くための足掛かりではない。 ここ最近は、どちらかというと、ゆっくり過ごすための非日常と日常のあわい的な要素が強い。 いつもと違う環境の場所で、お気に入りの飲み物片手にゆったり過ごす。 それは、リフレッシュであり、贅沢であり、またゆるやかな現実逃避でもある。 関西圏に暮らすわたしは、京都、奈良、大阪、和歌山など関西にお気に入りのお宿が多いが、また一つお気に入りリストに加わった。今回もひたすら、お宿について綴っていこうと

          京都で小学校だった建物でお籠りステイ。

          風情ある奈良の今井町にて、そぞろ散歩。

          奈良公園、ならまちはもう行ったしなあ…。 というあなたにすすめたい、また違う奈良の魅力を。 訪れたのは橿原神宮前駅の二つ隣の駅、八木西口駅から徒歩5分歩いて見えてくる今井町。 町全体が重要伝統的建造物群保存地区であり、江戸時代の民家が残る、風情たっぷりの町である。 到着したのがお昼過ぎ、腹が減ってはなんとやら、ということで重要文化財の古民家をリノベーションしたカフェ「Hack berry」さんへ。 ランチ時のピークを外しているので、あまり混んでいないかなと思いきや、受付表

          風情ある奈良の今井町にて、そぞろ散歩。