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村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」(新潮文庫)を読む② ー退屈さとセクシュアリティ
小説を読むということ、読まれるということ 村上春樹は、以下のように話している。私の大好きな文章だ。
小説を読むうえで「大事なことは固定の中にではなく、推移の中に」あるというのは、非常に示唆的な言葉であると思う。
小説の構造を言語化し、様々な視点から位置づけを行うのが文学研究であり、私自身も過去に研究に携わっていた身ではあるため、その意義や有用性を否定するわけではない。
しかしながら、村上春
村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」(新潮文庫)を読む①
はじめに ーー村上春樹の”読み方” はっきりと言ってしまえば、私は、村上春樹の小説がよくわからない。
文学部生だった頃は、冗談で「彼の小説はコーヒーを淹れ、パスタを茹で、熱いシャワーを浴び、女性を抱いてばかりいる」と、よく友人に言っていたものだ。
実際、村上春樹の小説はどこか掴みどころがなく、まるで身体を抜けてゆく風のようで、読後にはぼやけた印象しか残らない。ただ、日常のふとした瞬間に、彼の世