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なんでもない日

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なんでもない日のつぶやき
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2020年1月の記事一覧

はじまりの場所

はじまりの場所

通勤途中、ふと視線を上げて、虹を見つけた。

雨上がりの、まだ薄い灰色の雲が残るものの、澄んだ美しい青に、ゆるい弧を描いて、虹がかかっている。

たぶんあの辺りがはじまりかな、と見当をつけて歩を進めるけれど、いっかな距離は縮まらず、それどころか、どんどんその場所は曖昧になっていく。

小学生のときだったろうか、教科書に載っていた吉野弘さんの詩が脳裏に浮かんだ。

自らが虹のはじまりだとは知らない場

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自分を好きになること

自分を好きになること

私は、自分自身が嫌いだ。

いきなり何を言うかと、読んだあなたは面食らうだろう。

自分に対する嫌悪感ばかりが積みあがっていくのは、私の日常の中ではごく当たり前のことだった。

外見はもちろん、服のセンスもなく、仕事も近頃ミスばかりで、リカバリーしようと先んじて準備を整えたら裏目に出る、家族からの注意にいらいらし、それをぶつけてしまう。

あとでそれを後悔して自己嫌悪の海の底に深く沈み、就寝前にこ

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空を飾る

空を飾る

昨夜はことさら月が美しい夜だった。

晴れていれば、帰宅時にほぼ真正面に月をのぞむことが出来るのは、この時期ならではの贅沢だ。

地方の一都市ゆえ、背の高い建物が皆無で、徐々に明度を下げていく空が視界いっぱいに広がっていて。

真円に近い月が、薄雲越しに地上を見下ろしている。

黄金色の光を透過している雲が、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出している。

それは空を飾る、最上にして最高の装飾。

鬱々

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居場所

居場所

というと、大袈裟かもしれない。

私がnoteをはじめたきっかけは、

・日常や、その中で感じたことを何かで吐き出したい。

・でも紙媒体だと三日坊主どころか一日で挫折してしまうだろう、確実に。(実体験)

・blogだと仰々しい気もするし…

あーだこーだと悩んでいる中、noteの存在を知った。
創作というと、どうしても敷居の高さを意識してしまっていた私は、投稿されている作品に衝撃を受けた。

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誰かが見ていてくれる

誰かが見ていてくれる

いっぱいある。
いっぱいあるけど、一番はお手紙をいただくこと。
自分がやったことを素直に喜んでくれたり、色んな解釈をしてくれたり。

やっぱり、どこかで誰かが聞いてくれているというのは大きい。

上記の言葉は、あるラジオで「この仕事をやっていて、いちばん嬉しいことは?」という質問に、私の推し声優の答えである。

いやもう嬉しすぎますよ……!

Twitterやブログで、「お手紙をいただきました」と

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言葉の行方

言葉の行方

近頃、ひとりごとが多い。

いつからという明確な区切りはなく、本当に気付くと、仕事中・買い物中、唇から言葉がもれている。

「あ、数字打ち間違えてる」

「あ、桁違い」

「仕訳逆じゃん」

「この調味料はまだストックがあったはず」

ふっと脳をかすめた、思考のカケラ。

唇からさらさらと(たぶんそんな綺麗な音ではないと思うけれど、この表現が一番ぴったりだった)こぼれた、自分に向けたものですらない

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日常と非日常のあわいで

日常と非日常のあわいで

書店は、日常と非日常が同時に存在している稀有な場所だと思う。

一歩足を踏み入れれば、本たちが纏う不可視の匂いが溶けている、独特の空気が満ちている。

抑えめの照明に照らされた、背の高い本棚が、自分たちを手に取る来訪者を歓迎するように整列していて。

そこに、装丁も厚さも、題材も多岐にわたる書籍が、ぎっしりと隙間なく並んでいる。

ときに腰をかがめて、ときに少し背伸びをして、背表紙に目を凝らし、興

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”好き“だけで十分

”好き“だけで十分

・本を読むこと

・noteを書くこと

・声優さんを応援すること。

私が現在趣味としていることだ。

その中でも特に本は、日常の一部として組み込まれている、欠くことのできないもので。

上記のことを趣味にしている理由を尋ねられても、たった一文に集約される。

好きだから作家さんが好きだから、表紙を開いてページを繰るときの指に伝わる感触が好きだから、ものがたりの中に沈むような感覚が好きだから。

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文字に託す

文字に託す

午前から昼過ぎまでは冬とは思えぬほど、濃い空の青が美しい、気持ちのいい日だったのに。

退勤時間が迫るころ、文字通り天気が急変した。

すさまじいほどの音にぎょっとして窓を見やると、木々の太い枝をしならせるほどの風と、耳を弄するほどの雨音が外を支配していた。

いやいやこれから徒歩で帰宅するとこなんですけどどうしてくれるの?

案の定、家に辿りつくころには、靴の中は雨をたっぷり吸い込み、歩くたびに

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ネギとピーマンの肉巻きカツを、金曜の夜ということでテンションがおかしくなっていたのか、家族に呆れられるほどの量を作ってしまった。残りは明日の昼に。視界が狭まると一緒に思考の幅も狭まってしまう癖。
特に夕飯はどうしても焦ってしまって度々やりがち 。反省。

最近の食器洗い洗剤、お茶にレモンにブラックベリーと、実に多種多様な香りを取り揃えている。特に果物系は口に含むと甘そうな、熟した甘いものが多く、気が重くなりがちな作業に華を添えてくれる。開発したひとたちも、その辺りに思考を巡らせていたのだろうか?
感謝です。

一日の終わりの楽しみは、ベッドに入ってnoteを読むこと。身体にはよくないだろうけど。
あのひとの絵や、あのひとの文章がじんわりとこころに沁みて。質感はないのに、はらりとお気に入りを閉じ込めた本を捲るような感覚が、たまらなく好きだ。

溜まったストレスは書店で晴らすタイプだ。それができない時はコスメのHPを流し見る。きらきらしたアイシャドウやリップを、似合わないと思いつつ、これを自分の肌に乗せたらどうなるのだろうかと想像を巡らせる。いつか使ってみたいと僅かに早くなっている鼓動を沈め、ブラウザを閉じる。

今日は、油断すれば車道へと押しやられてしまうほど風の強い日で。剥き出しになっている、枯れた茶色の街路樹を眺めながら、私が枯れ葉だったら何を思い、空を舞うだろうと、そんなことをふと思う。行き先が分からないことに不安を抱くだろうか、それとも楽しみに思うだろうか?