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言葉の行方

近頃、ひとりごとが多い。

いつからという明確な区切りはなく、本当に気付くと、仕事中・買い物中、唇から言葉がもれている。

「あ、数字打ち間違えてる」

「あ、桁違い」

「仕訳逆じゃん」

「この調味料はまだストックがあったはず」

ふっと脳をかすめた、思考のカケラ。

唇からさらさらと(たぶんそんな綺麗な音ではないと思うけれど、この表現が一番ぴったりだった)こぼれた、自分に向けたものですらないそれらの言葉。

おそらく誰の耳にも届かず、目にも触れず、消えていくそれに、かすかな寂しさを覚える。

それは最後、どこへ行くのだろう。

私たちを包む空気には、誰かのひとりごとが、おそらく無数に漂っている。

文字通り、言葉の海にたゆたっている。

だったら、産み落とされたひとりごとも、寂しくはないのかな。

何を考えているのかと、思わず笑う。

でも、こういう取りとめのないことを考える時間は好きだ。

自分は今日、どれだけの〈ひとりごと〉を生むのだろう?






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