【最終回(#12) 軽音!】「けいおん!」を三幕構成で分析する
▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ😁 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!
分析対象
三幕構成
ポイント①
<1>
本話は、「けいおん!」の最終回(実際には第13~14話がありますが、ストーリーはここで決着を迎えます)。
第1話との比較を通じて、唯の「成長」が描かれています。
<2>
唯の成長が明示されるのは、「第2幕後半」です。
唯がギターを取りに自宅に戻り、そして再び学校に向かって駆け出すシーン……これ、第1話の「第1幕」に対応しています。
ここでは、「第1話『第1幕』の唯」と「本話『第2幕後半』の唯」の相違に注目してみましょう。
▶ 第1話「第1幕」の唯
・1:唯は「寝過ごした!」と勘違いして、慌てて飛び起きる。そして、通学カバンを背負って駆け出した
・2:途中、唯は足を滑らせ尻もちをつく
・3:唯が学校へ急ぐ。しかし途中、ふらふらと寄り道をする(猫を撫でる、おばあさんの手を引いて横断歩道を渡る etc.)
・4:道すがら、律・澪・紬とすれ違う(なおこの時点では、彼女らは面識がない)
・5:唯が学校に到着する。だが、ガランとしている(唯を待つ者はいない)。じつは唯は時計を見間違えており、本当はまだまだ時間に余裕があったのだ
▶ 本話「第2幕後半」の唯
・1:唯は、ギターを背負って駆け出した
・2:途中、唯は足を滑らせるがグッと踏みとどまる(尻もちはつかない)
・3:唯が学校へ急ぐ。脇目も振らず、猛然と走る
・4:途中、誰かとすれ違ったりはしない
・5:唯が学校に到着する。律、澪、紬、梓、憂、和、そして多くの観客……皆が唯を温かく迎える
両者の相違は明確ですね!
<3>
さらに学校へ急ぐ途中、唯が過去(第1話「第1幕」)を回想します。
唯「そういえば、入学式の時もこの道を走った。何かしなきゃって思いながら。何をすればいいんだろうって思いながら。このまま大人になっちゃうのかなって思いながら」
唯「ねぇ、私。あの頃の私。心配しなくていいよ。すぐ見つかるから。私にもできることが。夢中になれることが。大切な大切な……大切な場所が!」
第1話時点では、唯は「何かしたいけれど、何をしたらいいかわからない」と悩んでいました。
しかし、それから1年半。軽音部に入り、仲間と出会い……唯には大切な場所ができた!
素晴らしい成長ですね!
ポイント②
なお、唯以外のキャラにも「成長」が見られます。
ざっくり整理してみましょう。
<澪>
極度の恥ずかしがり屋で、律の後ろに隠れていることが多い澪。
しかし本話では、リーダーシップを発揮します(「私たちにいまできることを、精一杯やろう」という発言 etc.)。
さらに唯が到着するまでの間、ボーカルとしてライブを盛り上げることにも貢献しました。
<紬>
おっとりお嬢様らしく、これまであまり目立つ行動を取ることのなかった紬。
しかし最後の最後、演奏が終わった後に再びキーボードを弾き始め、「まだ終わりたくない!」とアピールしました。
<梓>
4月に入部して以来、軽音部、特に唯に対して苦手意識を持っていた梓。
しかし本話では、「唯抜きで演奏することになるかもしれない」と聞き、猛反対「皆でできないのなら、辞退した方がマシです!」。
軽音部、そして唯に対して、強い愛着を抱いていることがわかります。
※補足:律についてのみ、明確に「成長」が描かれていないように見えます。これは、「律は一見子どもっぽいが、じつは誰よりも大人。したがって、成長余地が比較的小さいため」だと推測されます。ただし、「より女性っぽくなる」「恋愛をする」といった方向の成長余地は残されており、第13話ではこれがテーマになります。
ポイント③
<1>
「焦る必要はない」……これこそが「けいおん!」の重要なテーマであると、第1話の記事で申し上げました。
本話はまさに最終回らしく、「焦る必要はない」というメッセージが強く感じられる物語になっています。
▶ 例①
唯は、本番を前に風邪を引いてしまいます。
当然、唯は焦る。
いつもは冷静な憂も取り乱す。
梓もショックを受ける。
しかし……焦ってはならない。焦る必要はないのです。澪が言いました「私たちにいまできることを、精一杯やろう!」。
そう、その時々でベストを尽くす!それでいいのです。
▶ 例②
唯は、遅れて講堂に到着します。既に演奏は始まっている。
しかし……皆が唯を温かく出迎えた。そして律が言った「皆、唯が大好きだよ!」。
そう、遅れたっていいのです!大丈夫。皆、あなたを温かく迎えてくれるはずです。
※補足:この「唯が遅れてくる → 皆が歓迎 → 律が言う『大好きだよ』」というシーン、「新世紀エヴァンゲリオン」(アニメ版)の最終回によく似ていると思いませんか?無論これは「『けいおん!』が『エヴァ』をパクった」とかそういう話ではありません。一見すると別物だけれど、「主人公が居場所を見つける物語」という意味では両者はよく似ている。ゆえに、最終回も自然と似てくる……ということなのかなと思います。
<2>
ところで本話は、唯が奇妙な夢を見るシーンから始まります。
「紬の眉は、じつは沢庵だった。唯がそれを食べて『旨い!』と言う」……何とも名状しがたい夢です。
みなさんはどう思います?
初めて本話を見た時、私、メチャクチャ戸惑ったんですよ。「唯はユニークだなぁ!」「確かに紬の眉って沢庵っぽいかも!」なんて笑って見過ごせるシーンではありません。
だってこれ、最終回ですよ。フィナーレです。その冒頭に沢庵の夢ですよ。
何か意味があるに違いないじゃないですか!
で、あれこれ考えてみたのですが……
・1:「沢庵」といえば、「沢庵和尚(沢庵宗彭)」
・2:「沢庵和尚」といえば、「宮本武蔵の師匠的なキャラ」
・3:「宮本武蔵」といえば、「巌流島の決闘」
・4:「巌流島の決闘」といえば、「宮本武蔵が遅れて登場し、佐々木小次郎を苛立たせる。その甲斐あって、宮本武蔵は勝利した」(= 遅れるのは悪くない。むしろメリットもあるのだ)
つまりこれ、「焦る必要はない」というテーマにつながっているのではないかと思うのです。
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