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【#6 学園祭!】「けいおん!」を三幕構成で分析する

▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ😁 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!


分析対象


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三幕構成


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ポイント①


本話の主人公は、

学園祭当日を舞台に、「澪の緊張・不安が高まっていく様子」「澪をさりげなく気遣う3人(特に律)の姿」が描かれています。


ポイント②


<1>

まずご注目いただきたいのは、「オープニング」です。

唯ら3人は、やる気十分。

それに対して、小刻みに震える澪……!

明らかにヤバイ。まともに演奏できる状態ではない。失敗するのが目に見えている。多くの鑑賞者は、「果たして澪はどうなってしまうのか!?」と不安になるでしょう。


<2>

しかしその直後、時間がさかのぼります(「インサイティング・インシデント」)。

こうして私たち鑑賞者は、午前中から昼、そして本番(15時頃)までの軽音部の動向を目にすることになるのですが……まぁ、落ち着きませんよね。


だって、私たちは「『ステージ上で小刻みに震える澪』という不吉な未来」を知っている

それゆえに、物語が進み、本番が近づくに連れて喉が渇いてくるのです。

「澪は、大失敗をやらかすのではないか……」と悪い妄想ばかりが膨らみ、胃が痛くなってくるのです。

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<3>

そして、「セカンドターニング・ポイント」。いよいよその時がやってきました。

緞帳が上がる。目の前にはたくさんの観客。澪が小刻みに震え出す。……そう、「オープニング」と同じ場面です。

私たち鑑賞者の不安はピークに達します。


と、そこで、唯が澪に声をかける「澪ちゃん!皆んな、澪ちゃんが頑張って練習してたの知ってるから」「絶対大丈夫だよ!頑張ろう」。

律と紬も、澪を激励する。


澪は、3人の言葉を受けて落ち着きを取り戻します。いつの間にか震えは止まっている。


<4>

この後、4人は見事な演奏を披露するのですが……それはさておいて。

この4人は、本当に素晴らしい仲間ですよね!唯も律も紬も、何と優しいのか!


彼女らを見ている内に、私たち鑑賞者は「幸福感」に包まれる。

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ご覧ください、この激しい感情変化!

「不安のピーク」から「最高にハッピー」へ急上昇です。


そして、これだけ感情を揺さぶられるわけですからね、少なからぬ鑑賞者が思わず涙を流したはずです


<5>

ここまで申し上げてきたことを整理しましょう。

すなわち……

・1:「オープニング」を利用して、鑑賞者に不安感を与える

・2:鑑賞者の不安がピークに達したところで、鑑賞者が最高にハッピーになれる場面を用意する

・3:かくして鑑賞者の感情は大きく揺さぶられ、思わず涙を流す


ポイント③


<1>

律が小学生時代を回想して「澪は、幼い頃から恥ずかしがり屋だったんだよ」と語るシーンがあります(「第2幕後半」)。

一見するとただの思い出話に見えるのですが……これ、じつはかなり重要なシーンだと思います


<2>

そもそもこのシーンでは、

・1:小学生時代、律が、澪の髪を見て叫んだ「うわー!きれいな髪だねぇ!」

・2:クラスメイトの目が澪に集まる

・3:恥ずかしがり屋の澪は、顔を真っ赤にして萎縮してしまう

……といったエピソードが紹介されます。

つまりこれ、「澪の気持ちがわからず、意図せずして傷つけてしまった小学生時代の律」ですね。


<3>

それに対して本話では、「緊張する澪を、律がさりげなく気遣うシーン」がたびたび描かれます。

つまりこちらは、「誰よりも澪の気持ちを理解し、さりげなく気遣えるようになった現在の律」


<4>

「小学生時代の律」と「現在の律」……重要なのはこの差です鑑賞者は、ここに「律の成長」を見るでしょう。

そして一般的に、私たちは「生まれついて能力を持っている人」よりも、「成長の末に能力を獲得した人」に心を動かされるものです。


「緊張する澪を、律がさりげなく気遣うシーン」は、それだけで十分感動的です。「律っていいヤツだなぁ」「友情って素晴らしいなぁ」と感じる。

しかし、回想を通じて「律は昔から気遣いできたのではない。彼女は成長したのだ」と鑑賞者に伝えると……そう、より一層感動的なシーンに仕上がるのです


「『過去(できなかった頃)』を描くことで、『現在』をより感動的に見せるテクニック」と言えるでしょう。


ポイント④


唯ら4人は、本話の「第3幕」で初めてオリジナル曲を披露します。

タイトルは「ふわふわ時間(ふわふわタイム)」。第5話で澪が作詞した曲です。


ところが本話では、演奏シーンは描かれません。

代わりに、PVっぽい映像が流れます(映画「テルマ&ルイーズ」風、もしく「ナチュラル・ボーン・キラーズ」風の映像)。


はて、なぜ演奏シーンは描かれなかったのか?

おそらくは……第12話(実質的な最終回!)で、同曲を演奏するシーンが再び登場するからでしょう。

それがどれほど見事なシーンでも、似たようなものを2度見せられては感動は薄れてしまう。最終回を最大限に盛り上げるために、敢えて本話では演奏シーンが描かれなかったのだと推測されます。


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(担当:三葉)

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