【#9 新入部員!】「けいおん!」を三幕構成で分析する
▶ 「三幕構成」を詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ😁 → シド・フィールドの「三幕構成」をバッチリ説明するぜ!!
分析対象
三幕構成
ポイント①
<1>
本話の主人公は、梓。
そして、本話のストーリーをざっくり整理すると……
・1:梓は、唯らのライブパフォーマンスに感動。「軽音部に入ろう」と決意する【第8話~インサイティング・インシデント】
・2:梓は、「軽音部にはすごい先輩方がいて、すごい練習をしているに違いない!」と期待を抱いていた【第1幕】
・3:ところが実際には、唯らは遊んでばかり。一向に練習しない。梓は「自分の予想」と「現実」のギャップに戸惑う【ファーストターニング・ポイント】
・4:春が過ぎ、初夏になっても相変わらずだ【第2幕】
・5:さらに梓は、自分が唯らのノリに馴染みつつあることに気づく。梓は「このままでは私はダメになってしまう……!」と危機感を覚え、軽音部を見限った。そして、軽音部に代わるバンドを求めてライブハウスへ【ここから、セカンドターニング・ポイント】
・6:ところが、唯らのような素晴らしい演奏は見当たらない
・7:さらに、改めて唯らに演奏してもらうとやはり素晴らしい。梓は再び感動する【ここから、第3幕】
・8:梓は混乱「いつも遊んでばかりなのに、一体なぜこんな素晴らしい演奏ができるの!?」
・9:澪が言った「私たちは、このメンバーで演奏するのが楽しいんだ。だから、いい演奏になるんだと思う。ダラダラするのも必要な時間なんだ」。その言葉に、梓は息を呑んだ。そして、引き続き軽音部員として活動することを決めた
<2>
梓が軽音部に愛想を尽かすところまではいいとして(軽音部だというのにちっとも練習せず、紅茶を飲んだり、ケーキを食べたり、おしゃべりしたりするばかりですからね。そりゃ愛想を尽かすでしょう)、問題は「梓は、なぜ軽音部に戻ることにしたのか?」という点です。
この時の梓の気持ちは、ややわかりづらいかもしれません。
しかしこれ、軽音部を「企業」、梓を「新入社員」に置き換えてみるとわかりやすくなると思うんですよ。
すなわち……
・1:新入社員Aくんが、憧れの企業に入社した
・2:Aくんは、「キラキラした先輩方と共に、キラキラした仕事をするぞ!」と意気込む
・3:ところがいざ入社してみると、地味な雑務ばかり
・4:Aくんはうんざりする。そして、転職を考え始める
・5:だがある日、Aくんは気づく「地味な雑務の積み重ねがあるからこそ、お客様に満足していただける素晴らしい仕事ができるんだ!」
・6:かくして、Aくんはやる気を取り戻した
つまり本話は……梓が、【予想(軽音部にはすごい先輩方がいて、すごい練習をしているに違いない!)】と【現実(遊んでばかりなんですけど)】のギャップに戸惑い、悩むものの、最後には「ネガティブにしか見えなかった【現実】にも、ちゃんと意味があった」と気づくに至る物語、と言えるでしょう。
<3>
かくして軽音部に戻った梓ですが……しかし、人間というのはそう簡単に考えを改められるものではありませんよね。
先ほどの新入社員Aくんの例でいえば、「なるほど!地味な雑務が重要なんだな!」と頭ではわかったとしても、しかし雑務をこなす内に「ううっ。やっぱり、もっと華やかで面白いことがしたいよー!」と思うのが人間でしょう。
梓も同様です。
梓は今回、「ただただ練習すればいいというわけではない」ということを知りました。皆で紅茶を飲み、ケーキを食べ、ダラダラおしゃべりすることにも意味があるのだと知った。
しかし、「なるほど!だらけるのも重要なんだな!よし、唯先輩らを見習って私もだらけよう!」……とはいきませんよね。
梓の中には、やはり、いつもだらけてばかりの唯や律に対する疑問、苦手意識が残っている。
梓が本当の意味で軽音部を受け入れるのは、第10話です。
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そしてですね、「けいおん!」シリーズの魅力ってこういうところだと思うんですよ。
そう、人間はそう簡単には変わらない(変われない)!
昨日まで「黒だ!」と言っていた人が、今日から突然「やっぱり白です!」とはなりません。
いくつかのステップを踏んで、つまりは灰色の段階を経て、時には逆戻りしたりしつつも、ゆっくりと変化していく……それが人間ってものじゃないですか。
「けいおん!」シリーズは、こうした「人間の変化」の描き方が上手いんだと思うのです。
ポイント②
ここまで申し上げてきた通り、本話は、
・1:梓が、「練習しない唯ら」に不満を抱く
・2:梓が、「紅茶を飲んだり、ケーキを食べたりしながら、ダラダラおしゃべりすること」の意味を理解する
……というエピソードです。
ここには、「頑張って練習するのもいいけれど、皆でワイワイ楽しむのもいいよね!っていうか、むしろそれが一番大切なことじゃない!? = 『頑張って練習する ≦ 皆で楽しむ』という価値観」が見受けられると言えるでしょう。
そして第1話を思い出していただきたいのですが……そもそも、唯も紬も「楽しそうだから」という理由で軽音部に入部したんでしたよね。
「皆と演奏したい」「ギターを習得したい」といった目標があり、それを実現するために入部したのではない。
どうやら「けいおん!」シリーズには、「何よりもまず、楽しむことが重要だ」という価値観が通底しているようです。
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