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エッセイ・コラム

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#現実

弱さのマウント

弱さのマウント

大学には様々な地域から人がやってくる。初対面となると話をするのは大概地元の話なんかが多い。
大学1年生だった頃「地元が田舎である」と言っていた九州のほうからきた人がいた。
その根拠として「コンビニにいくために車で30分くらいかかる」と頑強に主張されたのだが、個人的には「知らんがな」状態でその人の話を聞いていたものである。

人はマウントを取り合う生き物である。
多くの場合はひとを蔑んだり馬鹿にした

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人生の癖~私の場合は「現状の否定」だと思う~

人生の癖~私の場合は「現状の否定」だと思う~

人間には誰しも癖がある。手癖だったり口癖だったりそれは様々であるが、性格や物事の捉え方、人生の癖みたいなものもあると思う。

私自身、ふと人生で意思決定をしてきたタイミングを振り返ってみると、ひとつの「癖」があることに気づいた。
それは、現状の否定こそが己を動かしてきたということだ。

明確に意思決定をした最初の瞬間は水泳をやめたときである。詳しい話はここで書いているが、簡単に言うと水泳に限界を感

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私たちは演劇の中に生きている――たぶん、夢以外は。

私たちは演劇の中に生きている――たぶん、夢以外は。

夢を見ることを愚かだとする風潮が、何となくある気がする。大人も大人で若者に「お前たちは若いから現実が見えていない」などと言う。

若者は夢を見ているから現実を見ていないのは至極当然である。しかし現実が見えているからといって何なのだろう、とも思う。

人はなぜ夢を諦めるのだろうか。それは、そこに現実があるからである。

夢ばかりを追っていたらそこには現実的なものが喪われる。
結婚とか育児とか介護など

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好きになった瞬間などわかりはしない

好きになった瞬間などわかりはしない

アニメやマンガの王道ジャンルの一つが「ラブコメ」である。
大概は男性が主人公で正ヒロインや周りの女性とついたり離れたりしながら結局は正ヒロインといい感じになる。

最近のラブコメは恋に落ちるタイミングが心底しょうもない。
作品の設定として始まった時から好きな場合もあるのだが、作品中に好きになるときなんかはちょっと優しくされたとか手をつないだとか一事が万事そんな調子で、恋愛の進展に深みがない。

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幼年期に新鮮だった日常は時とともに腐敗し、大人はそれに「退屈」という名をつけている

幼年期に新鮮だった日常は時とともに腐敗し、大人はそれに「退屈」という名をつけている

お稽古でやっているお茶で、時々子供を連れてやってくる人がいる。
和室でダッシュしたり寝転んだりドラを鳴らしたり、私のことをなぜか「せんせい」と呼んだりと自由気ままであるのだが、まあそれはそれでかわいいし良いかと思いながら適当にお稽古をしている。

フランスの哲学者であるジョルジュ・バタイユはこんな言葉を残している。

日常を単なる退屈にせず、ただ幼い少年少女のごとく鋭いアンテナを張り続け、平凡な何

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あの時隣で泳いだ友人は、将来のトップスイマーだった

あの時隣で泳いだ友人は、将来のトップスイマーだった

「プールに行きたい」

以前、父親がそんなことを言ってきたので、久しぶりに一緒に泳いだことがあった。
よぼよぼの父親がおぼれるように泳いでそのうち死なないようにするためにただ観察する、いわばお守みたいなものだ。
私自身は頑張って泳いだわけではなかった。

もっとも、少し水に触れば、己の衰えは手に取るようにわかる。まず腕も足も筋肉が限界を迎えるのが早く、すぐにまともに水が掻けなくなる。筋肉が落ちすぎ

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