太極拳の前に【基本の基本】その6
Ⅴ 身体の形
1.S字からJラインの身体の形へ
太極拳だけではなく、全ての武術は下図の右の赤線のように「Jライン」(先生は、始めの頃はCラインと言っていた気がする)が基本になります。骨盤の下が前にやや傾斜して、背骨とともにJの形をしている状態です。先生は「丹田を上に持ち上げておく」とか「尻尾を股の間から、前に持ってくる」という表現もしていました。
これは、足で地面を掴んだり蹴ったりして起こった勁力が、背骨を中心とする回転運動(螺旋)となって手に伝わりやすくなるからです。それを「気の螺旋運動」と言ったりする人もいるようです(S字では、背骨がコマ軸のように軽やかに回らない)。
先生は「古代人の背骨は元々このようなJの形をしていた。それが、戦わなくなり安定した歩行の方が必要な生活が変わったので、背骨がS字に進化したんだ。その証拠に、古代ローマの兵士の人形はJラインで作られている」とよく言っておられました。
そして「この背骨のS字が、腰痛の原因になっている。だから、太極拳をして背骨がJ字なれば腰痛は嘘のようにすぐ治る」とも言っておられました。
2.Jラインの確認
この背骨のJラインは、太極拳の練習の間、常に意識しておくことによって何年かかかって作り上げていくものです。初めの内は、Jラインを作っておくために、お腹に力を入れて丹田を持ち上げておくのはしんどい感じがしますが、慣れてくるとその方が身体が軽く手足が自由に動くようになってきます。
丹田を持ち上げたまま、丹田が左右、前後、上下、八の字に自由に動くように感じたら、Jラインは完成に近づいていると言えるでしょう。そして同時に、武術をする体ができあがったということができます(そうなればもう中級です)。
Jラインがどのようなものか、確認する方法を説明します。
①まず、基本の足の形で立ちます。
②お臍の下に、両手でハート型を作ります(親指をへその当てる)。
③そのハート型を、天井に向くようにお腹を動かします。
(実際は、少ししか上向きませんが)
④すると、両足つけの前の部分がやや後ろに引っ込んむことで
(指が入るほど引っ込む)、背骨がJラインになります。
3.Jラインに特化した練習方法
Jラインは、長年練習しながら身につけるものです。でも、初心者が早くJラインを身に付けたいときは、先生は次の2つの方法が効果的であると教えてくれました。
①「壁立」
これは、壁の前にやや離れて立ちます。つまり、踵を付けません。そ
れからやや膝を曲げて身体を沈めながら、頭、背中、お尻を全部壁につ
ける練習方法です。これを「1日30分やりなさい」と言うときと「1回5
分でいいから何回でもやりなさい」とい言うときがありました。
②揺禅ウォーク
臍の下のハートマークでJライン(丹田が持ち上がった感じ)を確認し
たら、それを維持したまま散歩する方法です。「これは、いつでもどこで
もやったらいいよ」と言ってました。初めは、1分くらいしか持ちません
が、慣れてくるとずっとそのまま歩くことができるようになります(呼吸を吐くときに、丹田が落ちてしまいJラインが崩れる)。
「通勤電車の中で吊り革にぶら下がりながらでもいい。周りにバレない
いい練習方法だ」と言っている時もありました。