見出し画像

31-接客業チャレンジラウンドスリー:イジメ!

【前回のお話】

(1504字・この記事を読む所要時間:約4分 ※1分あたり400字で計算)

 いじめの主犯格は、とあるパートの女性だった(Yさんとしよう)。
 彼女を中心に、加えて1~2人ほどの共犯者がいた。だが、全員Yさんの圧に負けて仕方がなく同調しているような、そんな感じであった。

 手口としては、
・挨拶しても無視する
・乱暴な言葉であれこれ怒鳴りつけてくる
・何かにつけて叱ろうとする

などなど。

 他の人に対してなら見逃すような小さなミスも、私がやったと知った途端大声で「こんなことも出来ないの?!」と叫ばれたりした。

 調理中にいきなり怒鳴られてびっくりしてしまい、手に大やけどを負ったことでさえあった。


 幸い、他の仲間達は皆優しかった。

 私がいじめられていることを知ると、「お食べっ!」と言って自作のジャンボおにぎりを差し入れてくれる主婦の方や、「これ飲んで頑張れぇい」とエナジードリンクを渡してくれたオヤジさんもいた。

 「気にしない気にしない!竹子さんがしっかり仕事しているのは、みんな分かっているから」と慰めてくれる人がたくさんいた。

 苦しかったけど、寂しくはなかった。
 こんな私にも、ちゃんと味方がいたのだ。

 とても嬉しかった。


 ただ、一方でいじめはどんどんエスカレートしていった。
 精神が崩壊寸前になった。

 シフトがYさんと同じ時間帯にあたった日は体調不良が起こり、めまいがひどく真っ直ぐ歩けないこともあった。

 いよいよ大学院の授業でさえまともに受けられなくなると、これを見かねたS教授は「お仕事を変えるか、きちんとお店の担当者に言って改善してもらいなさい!身が持ちませんよ」と言ってくれた。


 「こんな若造の訴えなんて信じてもらえるのだろうか……」と心配するも、いざ電話で状況を伝えると「またYさんか……」と店長がポツリとつぶやいた。

 周りだけでなく、上層部もYさんの人格については把握していたのだ。
 ただ、簡単にやめさせれられないのもあって、仕方なく目をつぶっていたようだ。

 「Yさんと被らないよう、シフトをなるべくずらすように努めるよ……
  けど、竹子さんの体調で、このバイトは続けられそうかい?」

 店長は親身になって心配してくれた。

 「店側としては、竹子さんのような素晴らしい戦力を失いたくないのが本音だ……けれど、大学院にも通っているんだろ?
  具合が悪化しそうなのであれば、無理して働けとは言わないさ。竹子さん自身が、今後続けるかどうかを決めなさい」

 私は涙を流しながらお礼を言った。
 同時に、精神が限界なので、残念ですが辞めさせていただきますと伝えた。


 数ヶ月限りの勤務だったが、このバイトは自分を知るのに大きく役立った。

 コツコツ作業が好きなこと。
 ルーティーン作業となれば効率は高く、誰にも負けない集中力を発揮出来ること。

 一方で、やはりどうもガヤガヤとした環境ではお客様の声や、仲間達の声掛けでさえも聞き取れない点があること。
 時折、コミュニケーションが上手くいかず、空気が読めないこと。
 簡単な小銭の計数でさえも間違えが多発し、計算にはひと一倍時間がかかること。


 何よりも、「味方」という存在を体験出来たのは大きかった。

 完璧でなくても良い。
 不得意があっても、得意分野で一生懸命でいれば、その姿勢を認めてくれる人は必ずいるのだ。

 はっきりと自分の「強さ・弱さ」を見えたことによって、自信がついた。


 後日、S教授に無事アルバイトを辞められたことについて話した。
 また、これまでの人生経験も交えながら、自分の「出来る・出来ない」ことの落差さが激し過ぎてどうカバーしたら良いか悩んでいるとも言った。

 S教授は黙々と聞いてくれた。

 そして、私の話がひと段落つくやいなやーー

 「竹子さん、それはひょっとしたら、『発達障害』なのかもしれませんね」
と衝撃的な言葉を放った。

(つづく)

📚見え隠れする、自分の「正体」

↓↓↓🐈たけねこさんの四字熟語エッセイ集はこちらから!↓↓↓


この記事が参加している募集

自己紹介

振り返りnote

記事は気に入っていただけましたでしょうか? もしよろしかったら、サポートお願いします!(◡‿◡✿) 不求多,真心便知足~!(量より真心!) よろしくお願いします~请多指教!✿