本当にあったマッチングアプリの怖い話⑥せめて、人間らしく-後編-
B子さんとの二度目のデートから、3週間程過ぎた。
デート終わりには「また遊びに行きましょう!」という言葉と、後日LINEでも似た内容のメッセージを頂いたが。
やはり、あまり気乗りがしなかった。
ニックのコスプレをさせられそうになった恐怖ももちろんだけど、それ以前にノリや話題があまり合ってないような気がしたし。
ということで、申し訳ないと思いつつも僕は無視を決め込んでいた。
その後特に連絡もなかったので、このままフェードアウトしていくだろう。そう考えていたのである。
しかしある日、事態は思わぬ方向へ動く。
ある日お風呂に入った後、携帯を見ると。
LINEに通知が来ていた。
「23」は通知の数である。
驚きと、ちょっとした恐怖を感じた。
同じ人から30分の間に23件も着信があったのは初めてである。
しかも、追いLINEでもなくいきなりの直接攻撃。
心を鬼にして、僕は彼女をブロックすることに決めた。
ちょっと怖いし、どうせ連絡を返す気もないし。
そして、その日からさらに一週間が経ち。
仕事で疲れた僕は、人並みに揉まれながら自宅の最寄駅に帰着しようとしていた。
このJRの駅には、改札が二つある。
僕は、いつも通り自宅に近い方の改札を抜けようとした。
その時、人混みの奥に見たことのある顔を見つけた。
ショートボブ、フリルのついた服、ピンクのスマホ。間違いなくB子さんだった。
僕は人混みに紛れて改札を抜けた瞬間に体を横にスライドさせ、改札のすぐ横にあるルミネの入り口に滑り込んだ。
少し距離を取って振り返ると彼女の姿が見えなかったので、少し安堵する。
話した時に、彼女の最寄り駅を聞いた。
確か、池袋の近くだったはず。
普通に考えたらこの辺りにいるはずがない。
ということは、やはり僕に会いに来たと考えるしかない。
確かに、会話の中で最寄駅を伝えたことはある。
「〇〇駅の近くに住んでるよ」と。
しかしながら、その会話を覚えているだけではなくここまで来ちゃうとは。
僕が何時に帰ってくるかも知らないのに。
その後しばらくは怖かったので1週間程は普段は使わない改札を使い、帰宅する際はメガネを外すようにした。
クソみたいな変装だけど印象はちょっと変わるだろうし、こっちから相手が見えないのも気が楽だった。
その後、彼女と僕が接触することはなかった。
ちなみに、Xに彼女のアカウントはまだ残っており、今もガンガン更新されている。
6年が経過した今、彼女は30歳を超えているはずだけど元気にコスプレを続けているようだ。
今、僕ではない誰かが彼女とズートピアをやっているんだろうか。もはや知る由もない。
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