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本当にあったマッチングアプリの怖い話⑥せめて、人間らしく-後編-

前回までのあらすじ:
時は2018年頃。
当時28歳の僕は、出会いを求めマッチングアプリに勤しんでいた。
ある日デートしたB子さんは、恋愛経験浅め女子。
真面目で誠実な男だと良からぬ勘違いをされた僕は彼女と二度目のデートに赴いたが、そこで彼女がガチ目のコスプレイヤーであることを知る。
ズートピアのキツネのコスプレさせられそうなことに戦慄した僕は、彼女との関係を断ち切ろうとするが…

B子さんとの二度目のデートから、3週間程過ぎた。

デート終わりには「また遊びに行きましょう!」という言葉と、後日LINEでも似た内容のメッセージを頂いたが。
やはり、あまり気乗りがしなかった。
ニックのコスプレをさせられそうになった恐怖ももちろんだけど、それ以前にノリや話題があまり合ってないような気がしたし。

ということで、申し訳ないと思いつつも僕は無視を決め込んでいた。
その後特に連絡もなかったので、このままフェードアウトしていくだろう。そう考えていたのである。

しかしある日、事態は思わぬ方向へ動く。
ある日お風呂に入った後、携帯を見ると。
LINEに通知が来ていた。

B子 不在着信 23

「23」は通知の数である。
驚きと、ちょっとした恐怖を感じた。
同じ人から30分の間に23件も着信があったのは初めてである。
しかも、追いLINEでもなくいきなりの直接攻撃。

心を鬼にして、僕は彼女をブロックすることに決めた。
ちょっと怖いし、どうせ連絡を返す気もないし。

そして、その日からさらに一週間が経ち。
仕事で疲れた僕は、人並みに揉まれながら自宅の最寄駅に帰着しようとしていた。

このJRの駅には、改札が二つある。
僕は、いつも通り自宅に近い方の改札を抜けようとした。

その時、人混みの奥に見たことのある顔を見つけた。
ショートボブ、フリルのついた服、ピンクのスマホ。間違いなくB子さんだった。

僕は人混みに紛れて改札を抜けた瞬間に体を横にスライドさせ、改札のすぐ横にあるルミネの入り口に滑り込んだ。
少し距離を取って振り返ると彼女の姿が見えなかったので、少し安堵する。

話した時に、彼女の最寄り駅を聞いた。
確か、池袋の近くだったはず。
普通に考えたらこの辺りにいるはずがない。
ということは、やはり僕に会いに来たと考えるしかない。

確かに、会話の中で最寄駅を伝えたことはある。
「〇〇駅の近くに住んでるよ」と。

しかしながら、その会話を覚えているだけではなくここまで来ちゃうとは。
僕が何時に帰ってくるかも知らないのに。

その後しばらくは怖かったので1週間程は普段は使わない改札を使い、帰宅する際はメガネを外すようにした。
クソみたいな変装だけど印象はちょっと変わるだろうし、こっちから相手が見えないのも気が楽だった。

その後、彼女と僕が接触することはなかった。
ちなみに、Xに彼女のアカウントはまだ残っており、今もガンガン更新されている。
6年が経過した今、彼女は30歳を超えているはずだけど元気にコスプレを続けているようだ。

今、僕ではない誰かが彼女とズートピアをやっているんだろうか。もはや知る由もない。

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