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本当にあったマッチングアプリの怖い話④せめて、人間らしく-前編-

これまで何度か、マッチングアプリを使っていた時期がある。
これは今から6年程前、僕が28歳頃の時の話である。

ある時、一人の女の子とマッチングが成立した。
B子さん、27歳。
一つ年下で、受付をやっているらしい。

男子のみんな、受付って言葉テンション上がらない?
受付だったら絶対可愛いだろ、っていう謎の信頼感あるよね。

初めての待ち合わせは新宿。
イヤな思い出がある街である。

しかしながら、マッチングアプリのトラウマはマッチングアプリで消すのだ。
僕は待ち合わせ場所に向かい、新宿駅の西口改札で彼女を待った。

「oilさんですか?」

顔を上げると、小柄でボブの女の子が立っていた。
華奢で可愛いらしい感じだ。

「そうです!はじめまして。
 よろしくお願いします」

僕がそう言いながら彼女と目線を合わせると、B子さんは恥ずかしそうに顔を伏せた。人見知りなのかな。

しかしながら…何か、服にフリフリが多くないか?
こういうタイプの服装をどう表現したらいいか分からないんだけど、ちょっとメイド感があるというか。
靴下にリボンとか、シャツにフリルとか…正直、あまり得意じゃないタイプの服装だった。

まあでも、服装なんて二の次。大事なのは中味だ。
僕達は予約していたお店に向かった。

「私、実はあんまり恋愛経験がなくて」

「そうなんだ」

まあ、話していると何となくそんな気はした。
長めに目が合うと絶対顔を逸らされるし、会話のテンポとか距離感とか、なんとなく男子慣れしていない感じがする。

「あんまり経験ないとか、気になります?」

正直、気になった。
僕はそこそこ汚れた人間なので、相手の心が綺麗過ぎると距離感を感じてしまうのだ。
しかしながら、包み隠さず言うと相手も悲しいだろう。

「いや、そんなことないですよ。
 それだけ一つの恋愛を大事にしてたってことじゃないですか」

営業経験者のクセかもしれないけど、なるべく響きが良いことを言ってしまうのは何故だろうか。
どうも、僕は相手が自分に自信がなければないほど全肯定マシーンになってしまう傾向があるらしい。

そして、何故か2次会でカラオケへ行く流れへ。
僕はカラオケが純粋に大好きなので、1.5時間分フルで歌った。

「今日はありがとうございました」

カラオケを出た後、B子さんはそう切り出すと言葉を続けた。

「正直、カラオケ行った時どうしようと思って。
 変なことされるかもと」

失敬な。こっちももう良い歳だし、そんな狙いでカラオケには行かない。

「でも、感動しました。
 oilさんみたいに紳士で心が綺麗な人もいるんですね」

…なんか、めちゃくちゃ勘違いされている気がする。
別に僕は心が綺麗なわけではない。
単にカラオケに行ってミスチルを歌いたかっただけである。

かくして、変な好感度を上げてしまった僕はB子さんに二度目のデートを取り付けられることになる。
次回に続く。

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