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等距離恋愛。_1丁目13番地 求めあうアパートの前
帰り道、さすがに真冬の夜ということもあってお酒で火照った体もすぐに冷え込む。
冷え性だった私は握られた手がどんどん冷えこんでいくのを自分では止められなかった。
手と手が触れているところは彼の体温でなんとか温かさが保たれていたが、指先と手の甲、それに反対側の手が猛烈に凍えて霜焼になっていた。
片手を必死に吐息で温める私に気づいた彼は、私の正面に向かい合って立ち残りの一つの手で反対側の手を握ってき
等距離恋愛。_1丁目11番地
喫茶店を出る頃、外は既に日が傾いていて寒さが一層身体を凍りつかせた。
冷えた手を自分の口元にあてて息を吐き必死に温めていると突然、両手を掴まれて
「摩 擦 熱 〜!」
と言いながら必死に擦りあわせてきた奏太くんの行動に呆気に取られてポカーンとしてしまう。
「なにその顔w」
あほ面になってたことに気づき、
「ちがっ!だっていきなりそっちが変なことするから〜〜〜!」
って腕をポカポカ叩くとそ
等距離恋愛。_1丁目9番地 あちらこちらな遊具
なんとなく立ち寄った小売店。
そこは文房具から日用品、衣類、それに電化製品まで扱う「何でも屋さん」だった。
小さい頃、地元で一番栄えてる駅前にしかなかったそのお店。電車で1時間かけなきゃいけなかった「何でも屋さん」。
東京にくると家から徒歩20分もかからないでたどり着いてしまう。そこだけじゃないコンビニだって車で15分だったのが徒歩1分で行けちゃうし、スタバだってチェーン店の本当の意味を強く
等距離恋愛。_1丁目3番地 受話器越しの声
_pluuuuuu.
_ピッ
_はっ、はい。
からっぽの鳥かごのような部屋に鳴り響く、ほんのりと微熱を帯びた着信音。発した言葉は思いの外うわずり、小さな音とになって沈黙に溶けていった。
受話器越しでクスッと笑う声が聞こえる。
_小鳥のさえずりみたいな声やな。
からかったような言葉とは相反してその声はとても優しく、かすれていた。
_...キミがそう聞こえたならそうなんじゃないかな。ほら