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夢路

近づけば風を受けそうな

エゾリスの尻尾の振れる

春よ

何故ゆえに生き急ぐ

色とりどりの息吹をよそに


いつ枯渇するやも知れぬ源泉の傍らにて

凛と咲くカタクリの花

俯きながら手折ると

片葉は落ちゆき

手籠に球根を集めては

次の春を夢見るけれど


喉を潤す一掬いの水分は

重力に従いながら

真っ直ぐに浸透してゆき

胸の奥深く融け入る


失うことで豊かになるもの

現実的な公式が

反比例に美しく描く孤

弦を結んで矢を引けば

社を潜って真っ直ぐに消える

腕に残る感覚は

いつかまた

蒴果のはちけるときに蘇るのだろう


しばし家路を忘れるそちらの世界

蝦夷延胡索の花を両手に一輪ずつ

音の鳴らない神楽鈴遊び

遠くの麓で

山蕨笑う


    

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