【詩】 花衣
真っ赤なトマトに
ザックリと包丁を差し入れながら
彼は言った
あの国ではこうやって切るものなんだよ
もうなんでもいいから
ただ分かり合いたい
古い額縁の中で
エコーがかったひとひらの感情
何の約束もできないから
せめてその白いドアを開ける
草原が広がるあちら側
小雨の降り続くどちら側
時系列が交錯する
キャンパスはいつだって白
いつか世界を塗り替えたい
彼はそう言ったのだったか
私に見せたい湖があるのだと
呟いた夢は遠く消え
その湖面の色の名前は
もう覚えてはいない
何処か異国の響きは溶けて
蹄の音だけが残った
空白のカレンダーは
焼き捨てられてある
全てを纏って私は今ここにいる
ようやく花が綻び始める季節である
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