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本のこと

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読んだ本の感想です。
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記事一覧

あの哲学者にでも聞いてみるか/鷲田小彌太#89

生きていく毎日のなかで誰もが「なぜ?」という疑問を持つことがあると思う。

本書は自殺やニート、ホームレス、親子の仲の良さ、専業主婦ということ、援助交際はいけないのかということまで、「なぜダメなのか?」ということを、答える人として哲学者の思考から解決策を見出すというもの。

目次を読めば、疑問に対してどの哲学者が答えているのかわかる。
例えば、問1の「働きたくない!」はいけませんか?にはエピクロス

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Kindle Unlimitedを使い倒す#86

Kindle Unlimitedを使い倒す#86

わたしは2017年にKindle Paper whiteを購入して、まもなくしてKindle Unlimitedに加入したのですが、数ヶ月で退会。

理由はというと、その当時まだ小説や専門書などの数は対象になってないものがほとんどで、あまり見るものがない印象だったからです。

月に1000円近くもかかるわけで、年間でいうと12000円弱。
なので退会した後は、購入したい本だけKindleにダウンロ

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三途の川の渡り方/水木しげる#82

私の父は本が好きで、家の本棚には天井まで新書や小説などが並べてあった。
その中から自分が理解できそうな本だけ読んでおり、中でも面白かったのがこの「三途の川の渡り方」である。

水木しげるのエッセイで現在は販売されていないようだが、1章「三途の川の渡り方」、2章「地獄ツアー」、3章「霊と暮らす」、4章「おばけのいる人生」で構成されている。
漫画家・妖怪研究家である水木しげるが、あの世や地獄、霊や妖怪

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しをんのしおり(人生劇場)/三浦しをん#75

しをんのしおり(人生劇場)/三浦しをん#75

エッセイというものを、それまでほとんど読んだことがなかった。

他の人はわからないが、私の場合はよっぽどその作家さんを好きにならない限りエッセイを読むということはない。

読みたくないというよりかは、後回しになっているような感じ。

まず作品を読みたい気持ちの方が勝る。

三浦しをんのエッセイは、たまたま購入した雑誌「BAILA」を読んでいた時に知った。

「のっけから失礼します」というエッセイを

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BLUE GIANT/石塚真一#72

BLUE GIANT/石塚真一#72

先日、「BLUE GIANT」の新刊が発売された。

石塚真一といえば、山岳救助をテーマにした「岳 みんなの山」で有名だ。
もちろん岳も読んだことあるのだが、岳の主人公である三歩に劣らないほどポジティブなのがBLUE GIANTの主人公・宮本大である。

私がこの漫画を知ったのは何だったか。
とにかくこの作品に出会えて良かったと、過去に読んできた漫画の中でも一番好きだと言える。

物語がジャズ音楽

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1分で大切なことを伝える技術/齋藤孝#69

1分で大切なことを伝える技術/齋藤孝#69

「聞かれたことに答える」という基本ができているか。

本書の目次に書かれてあるこの一文を読んで、ぎくっとした。
まず1分で大切なことを伝えられるかということは一旦置いて、この基本ができているかいないか。
結果、できていない。

本書を読んで、「聞かれたことに答えているか」ということに注意して人の話を聞いてみた。実際には、真っ当な受け答えができている人は意外と少ない。
私自身も、「あれ?私の話って質

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弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール/高木啓成#64

弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える音楽・動画クリエイターの権利とルール/高木啓成#64

わたしが著作権フリーのサイトへ音楽を登録し始めた数年前と比べると、DTMをする人も動画クリエイターとして活動している人もかなり増えている印象がある。

わたし自身も音楽を配信していると、「これって違法じゃないよね…?」という疑問が浮かぶことはよくある。どういった権利が自分にあるのか、制作する際に契約はどうするのかといったことまでかなり分かりやすく書かれている。

著者自身が弁護士であり、作曲家でも

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色の辞典/新井美樹#60

色の辞典/新井美樹#60

たしか、この本は熊本市内の長崎書店で購入したのだったと思う。

長崎書店は上通りというアーケード街にあり、置いてある本が芸術的なものが多いように思う。流行ものというより「こんな本あったんだ」という他の書店にはない品揃えで、つい長居してしまう。

その中でもこの「色の辞典」は、オシャレなカバーに窓が開けられていて、本体表紙の色鉛筆がのぞく仕様になっていたので思わず手にとった。

数ページめくると、「

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Today/ニュージーランドの子育て支援施設に伝わる詩より#55

Today/ニュージーランドの子育て支援施設に伝わる詩より#55

わたしは自他ともに認める、まじめで几帳面な性格だ。

それは学業や仕事でも役に立ったので非常にありがたい性格だと思っていたし、そのまじめで几帳面な性格がわたしを良い方向へと導いてきてくれたとも思っている。

しかし、育児が始まるとそうではなかった。
そんなまじめで几帳面な性格が、自分で自分を追い込んでいった。

以前にも書いたが、育児は孤独な日々の連続だった。
時間はあるのに暇ではない。
なぜかい

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塩狩峠/三浦綾子#51

塩狩峠/三浦綾子#51

三浦綾子の作品との出会いは、「氷点」だった。

遠藤周作と同じく、大学時代にハマった小説家の一人で、「氷点」「道ありき」「この土の器をも」などを読んだ。

その中でも「塩狩峠」は、1966年4月から約2年半かけて月刊雑誌「信徒の友」に連載された小説だ。

あらすじ
大勢の乗客の命を救うため、雪の塩狩峠で自らの命を犠牲にした若き鉄道員の愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う。
結納のため

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「点-ten-」「線-sen-」/宇多田ヒカル#45

「点-ten-」「線-sen-」/宇多田ヒカル#45

わたしが中学生の頃、ラジオから流れてきた時からすきな宇多田ヒカル。

わたしよりちょっと年上で、近所のお姉さんくらいの人がこんな曲を作るのかと衝撃的だった。

何よりわたしは宇多田ヒカルの声と歌詞がすきで、アルバムはすべて購入。

「初恋」が発売されたときには、コンサートの応募券が入っていたのでもちろん買った。妊娠中だったので結局行けなかったが、必ずいつかコンサートに行きたいと思っている。

たぶ

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僕はいかにして指揮者になったのか/佐渡裕#44

僕はいかにして指揮者になったのか/佐渡裕#44

数年前に一度だけ、佐渡裕さんのコンサートに行ったことがある。

まだ子供もおらず、あっちこっちにひとりで出かけていた頃だ。
熊本県立劇場で演奏会があり、一人で行った。

ちなみにわたしはそれほど多くのコンサートへは行ったことはないのだが、坂本龍一、久石譲のコンサートもそれぞれ福岡と長崎で行くことができた。
死ぬまでに一度は行ってみたい!と思ったのが、佐渡裕さんのコンサートだ。

演奏会はもちろん素

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もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学/渡辺誠#40

もしも宮中晩餐会に招かれたら-至高のマナー学/渡辺誠#40

いつでもOK!へいへい!早く菊の紋章入りの招待状カモーン!

読後、そんな気持ちにさせてくれる一冊がこの「もしも宮中晩餐会に招かれたら」である。

そもそもこの本に出会ったのは、結婚したての23歳の頃。
6つ歳上の夫が持っていた本で「これでいつでも宮中晩餐会に行ける、あなたも用意しておきなさい」とわたしにそっと手渡してくれた。
そんなくだらないやりとりをして読み進めると、わたしの知らない晩餐会の世

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たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く/石村博子#38

たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く/石村博子#38

本当にこんなことが可能なのだろうか?と思うほど、10歳の少年には過酷で、そして希望がある。

たった独りの引き揚げ隊の物語は、1945年の満洲から始まる。
同じく引き揚げの本はいくつか読んでおり、藤原ていの「流れる星は生きている」も感動する内容ではあるが、かなり悲惨な現実が描かれており読後は気分が落ち込む。
それは引き揚げの状況からして当然のことではあるのだが、この「たった独りの引き揚げ隊」は悲壮

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