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ワークショップデザイン・ファシリテーション論

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ワークショップデザインやファシリテーションに関する知見や論考をまとめていきます。
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#問い

ファシリテーションにおける「誘導」と「提案」の違い

ファシリテーションにおける「誘導」と「提案」の違い

ワークショップデザインやファシリテーションの講座をしていると、初心者の方によくいただく相談に「ここまでプログラムを作り込むと、誘導になってしまうのではないか」「参加者をファシリテーションによって誘導していないか不安なのですが..」というお悩みがあります。

今回の記事では、ワークショップデザインにおいて気をつけなければいけない「誘導」とは何か。建設的な「提案」と何が違うのか、ということについてまと

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「問い」と「アナロジー」の往復で、アイデアに磨きをかける

「問い」と「アナロジー」の往復で、アイデアに磨きをかける

金属のレーザー加工を專門とする株式会社インスメタル様のご依頼で、自分だけの理想の空間をカスタマイズできる結界型オフィス家具「ADDMA(アドマ)」を開発・リリースしました。本プロジェクトは、スーパークラウズ、インクワイア、ツクルバなど贅沢すぎるほどの多様なパートナーにご協力いただきながら、ミミクリデザインの淺田史音・小田裕和らが主導してくれました。複数回のワークショップを通してプロダクトアイデアを

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問いの「深さ」を測る:ワークショップデザインのシミュレーション

問いの「深さ」を測る:ワークショップデザインのシミュレーション

ワークショップの「問い」のデザイン論を考えていく上で、問いの立て方、組み合わせ方などの「作り方」の議論もとても大事なのですが、試作した問いの「評価方法」についても考えなければなりません。

デザインはプロトタイピングと仮説検証をしながら進めていくプロセスですが、「いま作っている問いは、実際に参加者に投げかけた際にうまくいくのか」についてシミュレーションができなければ、「良い問いが完成した!」と判断

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書籍『問いのデザイン(仮)』の執筆プロセスを公開します

書籍『問いのデザイン(仮)』の執筆プロセスを公開します

ワークショップにおける「問い」の設計について体系化した書籍『問いのデザイン(仮)』を、来年春に出版に向けて絶賛執筆中です。

2015年くらいから問いに関する研究会を繰り返し、知見を貯めながら「書籍を出版します!」と宣言していて、出版社も決まっていたのですが、なかなか筆が進まず..気づけば4年ほど経ってしまいましたがが、ようやく重い腰をあげ、共著者の塩瀬隆之先生(京都大学総合博物館 准教授)と決意

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自己認識の科学:「問い」を通して、内なる「衝動」を耕す

自己認識の科学:「問い」を通して、内なる「衝動」を耕す

組織心理学者のターシャ・ユーリックの著書『insight(インサイト)』を読みました。起業家やリーダーにおける「自己認識」の重要性と、その具体的な方法論についてエビデンスに基づいて体系的に解説された本です。ワークショップデザインやファシリテーションの観点から他者や集団の内的な「衝動」を耕し、メタ認知を促す方法論の参考にもなると思い、手にとってみました。

自己認識の方法論本書では、自己認識を「内的

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続・問いの因数分解|問いの探索先のバリエーションと制約の効用

続・問いの因数分解|問いの探索先のバリエーションと制約の効用

イノベーションプロジェクトやワークショップデザインにおける「問いのデザイン」の性質を方法を検討するなかで、以下の記事では「問いの因数分解」という考え方を紹介し、そこから見えてくる問いの基本性質を5つにまとめました。

<問いの基本性質>
1. 「問い」は、いくつかの「前提」「制約」「小問」によって構成される
2. 「小問」は、問われた側に対して、なんらかの探索を誘発する。
3. 「制約」は、「探索

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問いの「因数分解」から見えてくる、問いの5つの基本性質

問いの「因数分解」から見えてくる、問いの5つの基本性質

拙著『問いのデザイン』では、複雑な問題の本質を見抜き、適切な課題をデザインする方法から、実際のファシリテーション場面の具体的な問いの設計まで、体系的に解説しました。

その中でも、書籍の後半で紹介している問いのミクロな性質分析が、マネジメントの目標設計やミーティングの問いかけなど、さまざまな場面で有用です。

問いを"因数分解"するという考え方ファシリテーションの場面で実際に投げかける「問い」の基

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ファシリテーションにおける問いの4パターン

ファシリテーションにおける問いの4パターン

イノベーションプロジェクトにおける「問いのデザイン」の照準を検討する上で、「質問」と「発問」との違いと比較することで、ワークショップ的な問いの特徴は、ファシリテーターも参加者も答えを知らない課題について、創造的対話を促すトリガーとしての特徴があることが確認できました。

同じように「問いの答えはどこあるのか」という観点から整理すると、ワークショップの進行中の「ファシリテーション」における問いかけに

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"道具"を通して課題を問い直す:異なる専門分野によるリフレーミング

"道具"を通して課題を問い直す:異なる専門分野によるリフレーミング

イノベーションプロジェクトにおける「問いのデザイン」のなかでも、プロジェクトデザイン段階における課題のリフレーミングの重要性についてこれまで述べてきました。与えられた課題をそのまま解こうとするのではなく、「本当に解くべき課題」は何なのか、視点や解釈を変えながら、再定義するプロセスですね。以下、参考記事です。

さて、今回紹介する安斎のお気に入りの書籍『ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問

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ワークショップにおける"良い問い"とは?

ワークショップにおける"良い問い"とは?

ワークショップにおける「良い問い」とは、どのような問いだろうか?「良い問い」とは、どのようにすれば立てられるのだろうか?

そのような素朴な疑問から、これまで安斎が主催する研究会に参加してくださった300名以上のファシリテーター(初心者から熟練者まで)を対象に、それぞれが考える「ワークショップにおける良い問いの条件」について尋ねてきました。ワークショップらしく、それぞれが思い浮かべる条件をひとつず

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デザインした「問い」の答えは誰が持っているのか:質問と発問との違い

デザインした「問い」の答えは誰が持っているのか:質問と発問との違い

イノベーションプロジェクトや、創造的な学びの場としてのワークショップの「問いのデザイン」について研究を進めていると、インタビュー調査やコーチングなど「質問」の方法論や、学校教育における授業設計の「発問」の領域など、”問い"に関連する近接領域の知見に行き着くことがありますが、「問いのデザイン論」に参考になる部分とならない部分があると感じます。※問いのデザインって何?という方はまず以下を。

今回の記

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問いをデザインするのは誰なのか

問いをデザインするのは誰なのか

書籍「問いのデザイン」の執筆に向けて、これまで「プロジェクト設計段階の課題のリフレーミング」から「ワークショップデザインにおける課題の制約と構成」まで、異なるレイヤーの「問い」の工夫の仕方について「デザイン」という言葉を使って説明してきました。

引き続き、問いのデザイン論を深めていきたいと思いますが、述語としてのデザインの方法論を深掘りする前に、本記事では、デザインの「主語」について確認しておき

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なぜ「問いのデザイン」なのか

なぜ「問いのデザイン」なのか

2015年頃から「問いのデザイン」を一つのキーワードに掲げて、研究会や講座イベント、さまざまなプロジェクトを実施してきました。次第に外部企業様からお声がけをいただくかたちで「問い」を題材にした研修やセミナーなどの機会も増えてきました。

"問いのデザイン"というテーマに対するニーズの強さを感じると同時に、一口に"問いのデザイン"といっても現場によって指し示しているもの(要望のレイヤー)が異なると感

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「問いのデザイン」マガジン始めました

「問いのデザイン」マガジン始めました

書籍と論文のアウトプットに向けたリハビリ&ウォーミングアップとして始めたnoteですが、3月31日にアカウントを開設してからいまのところ平日は毎日更新しています。だいぶ執筆の感覚と習慣が戻ってきました。

連休以降はどのようなペースで更新していくかは模索中ですが、無理のないペースでまた更新を続けて生きます。

さて、出版を予定している書籍の一つに『問いのデザイン(仮)』がありますが、これについても

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