よしなしごとたち

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網戸越しに秋

4週間以上も好きな人にふれられていない指先が、熱を持ってじんじんと痺れるような感じがする。

最近の頭のなかはいつも鉛をつめこまれたかのようにぎゅうぎゅうで、それはからっぽに比べたら喜ばしい状態ではあるのだけれど、ずっと続くとなかなかにしんどくて、だから半ば強制的に、一時的にからっぽにしたい。
すなわちそれは、好きな人とふれあいたいということ。わたしのなかには、人肌のぬくもりでしか埋められないもの

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スキしてくれるアナタがスキ!
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はなちゃんと過ごした日

「お母さんからバタークリームのケーキが届いたの。良かったら一緒に食べへん?」
そんなとびきり素敵なお誘いに乗って、はなちゃんの家に遊びに行った。この春上京してきたはなちゃんは、大学時代からのたいせつな友人だ。

前回会ってからそう間が空いたわけでもないのに、再会するたびうれしくて顔はでろでろにほころぶし、手を取り合って子犬のごとくくるくると回ってしまう。
はなちゃんの最高な提案に基づいて、マックの

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君にいいことがあるように♡
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あなたのフォローはなんのため?

芸能・音楽の関係者や各種クリエイター、起業家などではない、ごく一般人の感覚として、SNSのフォローはいったいなんのために行うのだろう。

①親しいorお互いによく知っている友人・先輩・後輩
②趣味・実用(ファッション、食べ物、動物、クリエイターなど)
③義理(ほぼない)

わたしの目的は、以上の3つである。
というか、SNSなんてあくまでも楽しむためのものだし、大部分の人がおそらくそうだろうと思っ

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今日もいい日になりますように。
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あいによばれて

ソーセージマフィンは就活の味。
早朝、夜行バスで東京駅に着くと、いつも近くのマクドナルドで時間をつぶした。朝食を済ませて歯を磨き、化粧をほどこして身支度をととのえる。万年金欠の就活生にとって、たった数百円で長々と居座らせてくれるあの場所は大変貴重であった。

当時はマフィンとコーヒーのコンビで200円だったと記憶しているが、さっき訪れた空港の店舗ではそんなメニューは見当たらなかった。この2年の間に

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今日もいい日になりますように。
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フィクションの日々

エンドロールが流れはじめてもなお、涙がぽろぽろと頬をつたう不思議。
激情とは程遠い。いったいなぜ泣いているのか自分でもうまく説明のつかないまま、ただ静かに心が揺さぶられつづけているのをひたひたと感じていた。

黒木華さんの演技を無性にみたくなって、数年ぶりに映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』を観た。
冒頭から大好きな曲が流れたので胸がときめく。そうだった、主題となる「フルートとハープのための協奏

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今日もいい日になりますように。
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コロナ禍の決意

コロナ禍において、もっとも納得がいかないこと。
それは「恋人に会えないストレスで食べすぎて太る」という構図である。

だって、だってですよ、「恋人に会えるからストレスフリー、食べすぎることもなく体型キープ!」って、いったいぜんたいなんやねん?
ちょっと、いいとこどりすぎやしませんか。
ずるい。せめて後半だけでも交換してくれないと絶対つじつまが合わない。わたしもそっち側がよかった。圧倒的ずるい。

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今日もいい日になりますように。
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いっしょにおいしくなりたいの

南極に駐在する8人の男たちの日々を描いた映画「南極料理人」を観た。
近頃、涙腺がすっかりばかになり参っているのだけれど、ついにむさくるしいおじさんたちの食事シーンでぼろぼろ泣くまでに至ってしまい、さすがに我ながらぎょっとしている。

彼らは決して、心を尽くした賛辞を口にするわけでも、にこやかに笑顔を交わしあうわけでもない。
基本的に、食事中は終始無言。時には、堺雅人演じる料理人の作るごはんに対して

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映画のなかの音

映画のなかの音というのは、なんだか特別な響きを持って耳に届く。

特に際立つのは、“生っぽい”、すなわちフィクションみの少ない映画のなかにある、なんてことのない生活音だと思う。
ほとばしるシャワーの水音、かすかな衣擦れ、ポーチのファスナーを閉める音、ひかえめな鳥のさえずり、コンビニの安っぽい来店音、店員のけだるそうな挨拶の声、ビニール袋を開くかしゃ、という音。

画面にうつる彼ら彼女らの為す所作は

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普門館との邂逅

日中の長時間を外で過ごした日の夜は、身体にこもった熱がいつまでも抜けなくてだるい。
外出を控えるようになって約2か月、すっかり体力が落ちてしまったなと思う。近所の公園をぐるっとひと回りする散歩ルートにも飽きて、近頃は新規開拓にいそしむようになった。

家を出て北東方面(たぶん。わたしには方角というものがよくわからない)へ少し進むと、環七通りに突きあたる。
そこをずーっと南下(たぶん)するのは、今日

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スキしてくれるアナタがスキ!
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日日是好日

今からちょうど一年前、わたしはこんな歌を詠んだ。

年間の二百余日は家にいて窓から世界をながめていたい

社会人になってまもないころ、仕事云々以前に毎日決まった時間に会社に行かなければならないことが苦痛で仕方なかった。好きなときだけ軽やかに働いてつつましく日々を送れたらそれでいいのにと切実に思っていたのだけれど、まさかあれから一年後、こんな形でその願いが実現されるなんてもちろん想像してもみなかった

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今日もいい日になりますように。
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