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よすけの短編小説まとめ

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書いた小説を投稿した順にまとめています。短いのから長いの。暗いものから明るいものまで。ほっと一息つけるように。
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#カップル

【短編小説】こんばんは、カレー

【短編小説】こんばんは、カレー

1,064文字/目安3分

 くつくつと歌う鍋に、ゆれて踊る湯気。
 部屋の中はカレーのにおい。

 今日はわたしが先に家にいる日だから、晩ごはんの準備をする。
 彼からはすでに『今から帰る』の連絡が来ている。帰ってくるまでの時間はわかるから、そこから逆算して調理を進めていく。家に着くちょうどのタイミングでご飯を食卓に並べられるように。

 これは完全にわたしの自己満足。ささやかなプライド。

 

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【短編小説】愛しい時間

【短編小説】愛しい時間

567文字/目安1分

 彼との二人暮らし。

 外でデートをするのもいいけど、家の中で一日中のんびり過ごすのが好き。話をしたり、お互いに違うことをする時があったり、いつの間にか寝てしまったり。時間の流れはゆっくりに感じるのに、気がつけば終わってしまう。
 夕飯を食べ終えて、お風呂も入って、見るわけでもなくテレビをつけている。時折ぽつりぽつりと会話をしながら、ソファーに並んで座っていた。

「お腹

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【短編小説】ほえっほよ

【短編小説】ほえっほよ

1,577文字/目安3分

 雲はゆっくりと形を変えながら、どこまで続くかわからない空の中を進む。まるでわたあめのよう。太陽は流れる雲に時々隠されながら沈んでいき、一日を終えようとしている。
 この時間のパンは腹に膨れやすい。今にも爆発しそうだ。ああ、お腹がすいた。

 それはそうと、今夜は家の階段を登らないといけない。登ったら降りないといけない。降りたら手をあわせていただきます。その時はパンだけ

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【短編小説】二人乗り

【短編小説】二人乗り

457文字/目安1分

 君と自転車を二人乗り。
 わたしを後ろに乗せて、君はぐんぐんと風を切ってゆく。
 二人乗りは違法なんだよってわたしが言うと、知ってるよって君は言う。罰金になっちゃうかもしれないよってさらに言うと、俺が払うからいいなんて言う。嘘でしょ。

 わたしの行きたいところ、わたしの知らないところ、上り坂も下り坂も、追い風の時も向かい風の日も、君はどこまでも連れていってくれる。
 君

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