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【短編小説】愛しい時間

567文字/目安1分


 彼との二人暮らし。

 外でデートをするのもいいけど、家の中で一日中のんびり過ごすのが好き。話をしたり、お互いに違うことをする時があったり、いつの間にか寝てしまったり。時間の流れはゆっくりに感じるのに、気がつけば終わってしまう。
 夕飯を食べ終えて、お風呂も入って、見るわけでもなくテレビをつけている。時折ぽつりぽつりと会話をしながら、ソファーに並んで座っていた。

「お腹すいちゃったね」
 わたしは彼に、同意を求めるようにして話しかけた。
「んー、確かに。夕飯の時間、少し早かったからね」
「コンビニ行く?」
 そうやって聞いてみると、彼は「えー」とあからさまに嫌そうにする。
「だって外寒いよ」

 やっぱりだめか。彼は寒さが大の苦手なのだ。
 わたしは少し考えて、
「じゃあさ」
 彼の顔を覗きこむ。

「ちょっと散歩がてら外に出ようよ。『寒い寒い』なんて二人で言い合いながら手をつないで、くっついて歩くの。道は静かで、息は白くて、見上げると星が出てることに気がついて、『今日も何もしなかったね』って言って笑って、コンビニであったかいもの買って帰るやつやりたいんだけど、だめかな?」

 わたしは意識して、目に力をこめて彼を見つめた。彼はしばらくの間考えるそぶりを見せた後、口を開いた。

「まぁ、それだったらいいかも」

 呆れたように笑っていた。今日はわたしの勝ち。



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