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一子相伝、宮崎駿の後継者候補は4名。やはり筆頭は「ポノック」?

今回は、スタジオポノックを取り上げてみたいと思う。
スタジオポノック、皆さんはこの制作会社をどう捉えているだろうか?
ジブリの分家。
大体、そんなところだろう。
制作スタッフは多くが元ジブリだし、別に本家と喧嘩別れをしたというわけじゃなく、例の巨匠の引退宣言を受け、有志が集まった流れでしょ?
決して悪くない形の独立だと思う。
この独立の中核になったとされるのが、ポノック第1回作品「メアリと魔女の花」の監督を務めた米林宏昌
めっちゃ正統な巨匠の弟子だね。

巨匠と米林宏昌
宮崎吾郎より、このふたりの方がよっぽど親子に見える・・

鈴木敏夫いわく、「米林がジブリで一番作画がうまい」とのこと。
どうやら巨匠も、それは認めてるっぽい。
しかし、画力だけが後継者の条件というわけでもあるまい。
そういう単純なものじゃないんだ。

分かりやすく、「北斗の拳」で考えてみてほしい。
仮に、宮崎駿が北斗神拳の現当主リュウケンだとして、リュウケンには4人の弟子「四兄弟」がいるわけよ。

北斗神拳当主リュウケン(巨匠)
リュウケンの4人の弟子

【長男ラオウ】

長男ラオウ(本名・押井守)

ジブリ出身ではないが、巨匠の自宅に押し掛けて居候をしてたというから、内弟子ともいえる存在だろう。
何度も師匠に全否定されてるが、そのたびに屈辱をバネにして蘇り、今では一緒に旅行をするなど、対等にも近い関係を築いている。
巨匠を「殺してやりたいと何度も思った」と言いつつ、実は敬愛しており、近年の実写作品「GARM WARS」は、おそらく「ナウシカ」オマージュだろう。
一説によると、彼が作る作品は全て「巨匠が見ること」前提で構築されてるらしい。

【次男・トキ】

次男トキ(本名・片渕須直)

ジブリ時代、巨匠の信頼が厚かったこともあり、そのスタイルは宮崎駿本人に最も近い存在ともいえるかと。
ただ「魔女の宅急便」では、両者の意見が真っ向から対立する事態になった。
「絶対に意見を曲げない」あの巨匠が、最後は片渕氏の意見を採ったことは前代未聞の画期的なことだったというのに、あるいは心苦しくなったのか、その後の彼はなぜか巨匠から離れていってしまう・・。
ラオウのように目立とうとしないから地味な印象もあるが、その実力は長兄と互角、もしくはそれ以上かも。

【三男・ジャギ】

ジャギ(本名・庵野秀明)

ジブリ出身ではないが、「ナウシカ」時代に巨匠の厚い信頼を得る。
その「構図」の極意を受け継いだ人物。
長兄ラオウ同様、巨匠のエグい闇の部分にこそ惹かれてるクチで、それもあってかラオウとはまぁまぁ仲がいい。
逆に、巨匠の健全なファンタジー要素はあまり引き継いでおらず、そっちには多分興味ないんだろう。
彼の興味は、あくまでも「ナウシカ2」である。
もしこれが実現すれば、皆に一歩リードするのは間違いない。

【四男・ケンシロウ】

四男ケンシロウ(本名・米林宏昌)

巨匠の健全な部分を継承してるといっていい末弟。
そのスタンスは、一種の「宮崎駿オタク」。
巨匠の画風を100%再現できる男であり、よく人気漫画家さんが抱えてる「優秀なアシスタント」にも近いニュアンスがある。
長男ラオウや三男ジャギのように巨匠が隠し持つドス黒さを継承したのではなく、その点でいうと次男トキのスタイルにやや近いかもしれない。
長男や三男と違い、戦闘服に肩パットを付けないタイプかと。
その画力は巨匠も認めるほど折り紙付きだが、まだ若いので今後どうなっていくのかはまだよく分からない。

【特別枠・ユリア】

ユリア(本名・宮崎吾郎)

ある意味、北斗神拳浮沈のカギを握るメインヒロイン。
このユリアを射止めることこそ、実は正統後継者の条件なのでは?

ということで、なんかやたらと前置きが長くなってしまったけど、そろそろポノック第1回長編作品「メアリと魔女の花」について触れたいと思う。
やはり、主人公・ケンシロウの技はチェックしとく必要があるからね。

「メアリと魔女の花」(2017年)監督・米林宏昌

これ、意外と評価しない人たちが多いんだよ。
結構、面白いのに。
見てて、なんか懐かしい感じがした。
思えば巨匠がファンタジーをやったのは「崖の上のポニョ」が最後で、それ以降はまるでファンタジーじゃないもんなぁ・・。
どっちかというと、このところの巨匠は死期を悟って人生を総括というか、作風が「自分語り」の終活モードに入ってきてるもんね。
こういうの、確か晩年の黒澤明もそんな感じだったと記憶する。
あの黒澤も、60年代に見せてたワクワクする作家性が最後の方はすっかり枯れ、だんだんと違う方向性に向かっていったんだ。
あれはあれで独自の味があったにせよ、正直ちょっと寂しいなぁ、と。
思えば彼に後継者はいなかったが、一方でスピルバーグジョージルーカスがそのスピリットを受け継いだともいわれており、黒澤黄金期のワクワクは主にハリウッドが継承することになってしまった。
国外流出か・・。
そういや、ジョンラセターもまた、宮崎駿の継承者を名乗ってるという話もあるね。

巨匠とジョンラセター

話を戻そう。
よくオールドファンが既視感を理由に「メアリと魔女の花」をディスってるのを聞くんだが、そもそも既視感ってそんなにマイナスポイントなのか?
これは作風を見てもお分かりのように、もともとオッサン・オバサン向けに作ったというわけじゃなく、メインターゲットはあくまで現役の子供たちのはず。
そういう子供たちは、いちいち既視感でディスったりとかしないと思うんだけど?
これ、普通にいいアニメだと思うよ。
ただ、ちょっと物足りなさは確かにある。
しいていうなら、味に深みがないかな・・。
味における「おいしい」というのは、「甘い」「辛い」「酸っぱい」というふうに単純に分類できるものじゃなく、複数のものが絡み合った調和の中でようやく成立するものである。
よって、「隠し味」的なもの、たとえば苦みのようなものでも意外と必須だったりして。
正直いうと、「メアリと魔女の花」はハチミツの味しかしなかったよ。
そういうところが、いかにも「初期ケンシロウ(胸に7つの傷がつく前)」というテイストだ。
どこか甘さが残る印象。
このままいくと、いずれ・・

ユリアを連れ去る日テレ

ちなみに、米林宏昌といえば私の印象に強く残ってるのは
思い出のマーニー」(2014年)。

もうひとつ「借りぐらしのアリエッティ」というのもあるんだが、こっちは脚本を巨匠が手掛けてて、半分宮崎作品みたいなものだった。
それに対し、「マーニー」の方は巨匠が一切タッチしていない。
で、この作品はジブリにしては珍しい百合系アニメで、おまけにヒロインは陰キャだし、ちょっと変化球気味の作風だったんだわ。
そういう意味じゃ、米林さん自身の作家性は必ずしもジブリ王道ではないのかもしれない。
・・というより、この人に作家性はあるのか?
長男、次男、三男には各々「俺はこれがやりたい」というのがハッキリ見てとれるんだが、この末弟にはそれが見えてこないんだ。
まぁ、なんにせよ、ポノック第1回作品としては「魔法」「冒険」「成長」というコテコテの王道をやっておきたかったのは分かる。
それこそ旧ジブリメンバーにとっての基礎であり、記念すべき旗揚げを飾る作品として最も相応しいわけで。
ただ問題は、ここから先だよね。
今後のジブリとポノックは、「餃子の王将」と「大阪王将」みたいな関係になるんだろうか?

じゃ、ポノックの方向性を探る意味で、米林さんが「メアリと魔女の花」の後に作った、短編をひとつご覧いただきたい。
「カニーニとカニーノ」監督・米林宏昌(2018年)

どうだろう?
子供向けだねぇ・・。
かつてジブリから独立し、STUDIO4℃を立ち上げた田中栄子さんは
「王道はジブリがやる。
私たちは側道を埋める」

と言ってたんだが、どうもポノックの作風を見る限りだと
側道を埋める
という意識はないように感じる。
それはそれで、かなりイバラの道かな、と思う。
ことあるごとにジブリと比較され、みんな嬉々として揚げ足とってくる様子が今から目に浮かぶよ。
ジブリのモノマネ、とディスってくる奴は100%出てくるし・・。

ただ、私は今後のポノックに敢えてこう言いたい。

山田康雄のあとを継いで、今なおルパン三世を立派にやってるモノマネ芸人・栗田貫一のことを今後見習え、と。

確かに、彼はモノマネから入った人だが、今じゃ立派にホンモノ認定されてきてると思わないか?
継続は力なり、である。
モノマネもずっと続けていけば、いずれはホンモノになる。
と信じようじゃないか。


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