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竹を咥えてない禰󠄀豆子ちゃんは、禰󠄀豆子ちゃんじゃない

いよいよ今クールの本命というべき、「鬼滅の刃」柱稽古編が始まったね。
その第1話を見たところ、なんと禰󠄀豆子ちゃんが喋っとる!
まだカタコトで「オカエリ」程度だが、凄い進歩である。
ただ嬉しい反面、なぜか私は一種の寂しさを感じてしまった。
竹を咥えてない禰󠄀豆子ちゃんなんて、禰󠄀豆子ちゃんじゃないよな、と。
今回初めて気付いたことだが、どうやら私って竹を咥えた女の子萌えだったみたい。

竹を咥えてない禰󠄀豆子ちゃん
竹を咥えてる禰󠄀豆子ちゃん

ほら、上の禰󠄀豆子ちゃんより下の禰󠄀豆子ちゃんの方がかわいいでしょ?
ひとつ結論が出たと思う。

女の子は竹を咥えると、かわいさが2割増しになる。

ほら?かわいいでしょ?
ほら?チクワだとかわいくないでしょ?
ほら、犬も竹を咥えた方がかわいいでしょ?

ある意味、吾峠呼世晴先生は天才だね。
この人は、かわいさというものの本質を分かってると思う。
いや、吾峠先生に限らず、いまどきの漫画家さんはキャラの衣裳・小道具の設定などが異様にうまいよ。
みんな、「かわいい」を分かっている。
昭和の漫画家さんなんて、キャラのそういう設定とかは完全に無頓着だったからね。

「サザエさん」

サザエさんは髪型だけヴィクトリアン調でアヴァンギャルドにキメてるくせに、衣裳が全くそれについていっていない。
トップスは白襟のポロシャツかと思いきや、よく見ると前ボタンついてないことにお気づきだろうか。
ボタンがない仕様で、あの大きな頭をどうやって服に通せたのかは分からんが、かなり伸縮性ある素材を使用してるのは間違いない。
それより気になるのは、その色彩センスである。
普通、パープルのトップスにオレンジのボトムスをコーディネイトするか?

パープル+オレンジのコーディネート

・・ごめん。
どうやらこれ、色彩コーディネートとしては上級のテクらしい。
そういうことなら、まぁサザエは一応合格ということにしておこうか・・。
それより、私が注目したいのはカツオの方である。

こいつ、一体何種類の「K 」ロゴ持っとんねん?
おそらくKATSUOの「K」という意味なんだろうけど、普通、市販でこんな「K」のついたものは売っとらんやろ?

KENZOのカットソー
イタリアブランドKRIZIAのセーター
NEW ERAのキャップ

・・ごめん。
「K」ロゴの商品、結構あちこちで売ってたわ。
しかも、それなりに高級品ばかりである。
カツオって、ああ見えて意外にオシャレだったんだね。
ごめん、ちょっと「サザエさん」をナメてたわ・・。

かわいいは正義!

みんな、誰しもこのフレーズを一度は耳にしたことがあるだろう。
じゃ、このフレーズがどこから発生したものかというと、実はアニメ発信である。
今から19年前、2005年放送「苺ましまろ」。
この作品のキャッチコピーが、「かわいいは正義」だったんだよ。

「苺ましまろ」(2005年)

このキャラデザインを見て、「そんなにかわいいか?」と感じた人もいるかもしれない。
うん、確かにいまどきの萌えデザインとは少し違う。
おそらく、萌えという概念自体は90年代ぐらいからあったと思うが、それをデザインとして完成させたのは00年代の京アニだと思う。

「涼宮ハルヒの憂鬱」(2006年)
「らき☆すた」(2007年)
「けいおん!」(2009年)

やはり「涼宮ハルヒ」「らき☆すた」「けいおん!」の3発が効いたと思うし、特にトドメの「けいおん!」は社会現象化してたよね。
ただ、これらはキャラデザ+cvがかわいいんであって、衣裳的なかわいいではないんだ。
みんな制服だし。
かわいいの元祖「苺ましまろ」は、実をいうと衣裳がかわいかったんだよ。
この作品を見たことないという人は、ぜひ一度ご覧いただきたい。
いやホント、驚くほど11~12歳女子のファッションが緻密に描写されてるんだわ。

「苺ましまろ」

「苺ましまろ」のかわいさは、同年代である「ドラえもん」のしずかちゃんと比較するとよく分かる。

しずかちゃん

出た!
「サザエさん」でお馴染み、例の「前ボタンがない白襟ポロシャツみたいなやつ」
まぁ、しずかちゃんの場合は服の色と靴の色を合わせてるあたり、彼女自身にはそれなりにファッション感度があるとも考えられるが、多分彼女の母がサザエと同じ店で購入したんだろう。

ボタンというのは取れて紛失したりすると結構メンドくさいので、敢えて「前ボタンがない白襟ポロシャツみたいなやつ」を購入してしまう、サザエやしずか母の気持ちは分からんでもない。

おいおい、のび太もかよ・・。
この商品、バカ売れしとるやないか!
・・というより、これは作者のファッション感度の問題だろう。
長谷川町子先生にせよ、藤子F不二雄先生にせよ、おそらく服を記号としか捉えていない世代である。
そのへんが「苺ましまろ」とは決定的に違っている。
「ましまろ」作者のことは全く知らんにせよ、服が好きな人だろうなということは画からも伝わってくるよ。

これは漫画的にデフォルメされたものでなく、実際販売してそうな服ばかりである。
こんなオシャレな小学生はおらんやろ!と思う人もいるだろうが、いまどきの子供服は大体こんな感じさ。
逆に、しずかちゃんやのび太のような子供の方が珍しいって。
とにかく、「苺ましまろ」は「かわいい」の教本ともいうべき名作なので、ぜひ見てください。
京アニにより体系化される前の原石というべき「かわいい」がここにあり、あぁ、こういうのが「かわいい」の原点か・・、と納得いただけると思う。

特に茉莉ちゃん(cv川澄綾子)のかわいさは破壊力抜群!

最近は「かわいい」も世の中に浸透しすぎて、逆にあざとさみたいなものが目につき、正直私はウンザリ。
特にイラっとさせてくれるのが、妙に頭身の低い「SDキャラ」というやつである。

さすがにここまでくると、あざとすぎるやろ~。
好きという人は好きなんだろうけど、私はアニメの中でもデフォルメ表現があまり好きじゃなく、コミカルなシーンになるとキャラが急に頭身低くなるとかあるじゃん?
あれ、正直苦手なんだよね・・。
この「頭身が低くなる」というアニメ独特の表現を逆手にとり、ネタ化したのが「干物妹!うまるちゃん」(2015年)である。
この作品のヒロインうまるちゃんは、意図して頭身を変えられるという設定だった。

「干物妹!うまるちゃん」(2015年)

なぜ服まで小さくなるんだ?とツッコみたくもなるし、こういうの見ると、いよいよ「かわいい」もロジックとして収拾つかなくなってきたよなぁ、と思う。
そう考えていたところに、いきなり冒頭の話に戻るが、ここで禰󠄀豆子ちゃんというスーパースターの登場ですよ。
この禰󠄀豆子ちゃんの何が凄いかって、彼女もまたうまるちゃん同様、頭身を自在に低くすることができるんだ。

頭身を低く変化させた禰󠄀豆子ちゃん

しかもこれ、ギャグとしてやってるわけじゃないんだからね?
状況は意外と切迫しており、斬られるかもしれない状況を、頭身変えることで切り抜けたという名シーンである。

なぜか頭身が低くなると顔の造形が簡素化されるという不思議もあるけど、一方で、うまるちゃんのように「服まで体に合わせて小さくなる」みたいなご都合主義はなく、ちゃんと服はそのまま(つまりブカブカ)という描写が施されている。
頭身を変えられる、これは真面目に彼女の「鬼」としての能力である。
ある意味、禰󠄀豆子ちゃんって最強じゃないか?

①竹を咥えている
②頭身が低くなる

この世の「かわいい」2大要素を彼女だけが兼ね備えており、さすがにこれちょっと反則やろ?

私だって、小さくなった禰󠄀豆子ちゃんを膝の上に乗せてみたいぞ?
敢えて冒頭に書いたことを繰り返させてもらうが、吾峠呼世晴先生は天才だね。
この設定の作り方からして、先生は「かわいい」を分かってらっしゃる。
「苺ましまろ」から始まった「かわいい」を、遂に吾峠先生が禰󠄀豆子ちゃんで至高の領域にまで昇華させたといっていい。
「鬼」なのに陽の光を浴びても平気だとか、そんなことは、この際どうでもいい。
禰󠄀豆子ちゃんの「鬼」としての最大の能力はそんなことじゃなく、

「かわいい」


これこそが彼女の能力じゃないか?


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