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なぜ「かみちゅ!」はメディア芸術100選に入ったんだろう?

皆さんは、「日本のメディア芸術100選」というのをご存じだろうか?
これは、文化庁がメディア芸術祭10周年を記念して実施した企画であり、日本のメディア芸術をアニメ・漫画・娯楽・アートの4つに分け、各々にオールタイムベストを25作品ずつ発表したものである。
オールタイムベストとはいえ、これが発表されたのが07年なので、この年以降の作品は対象外なのであしからず。
とはいえ、国の文化庁が決めたベストというのはやはり無視できないので、皆さんにはその内容を知っておいてもらいたいと思う。

日本のメディア芸術100選のうち、アニメ25選

(2007年文化庁選定)
・AKIRA
・カードキャプターさくら
・風の谷のナウシカ
・かみちゅ!
・機動警察パトレイバー2the Movie
・機動戦士ガンダム
・機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
・機動戦士Zガンダム
・銀河英雄伝説
・紅の豚
・クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
・攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX
・GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊
・新世紀エヴァンゲリオン
・涼宮ハルヒの憂鬱
・千と千尋の神隠し
・天空の城ラピュタ
・となりのトトロ
・ドラえもん
・ドラゴンボールシリーズ
・鋼の錬金術師
・劇場版鋼の錬金術師 シャンバラを征く者
・蟲師
・もののけ姫
・ルパン三世 カリオストロの城

さすがオールタイムベストとともなれば、名作揃いである。
やっぱ、宮崎駿が強いね!
ひとりで6作品が選ばれ、全体の24%も占めてる。
あれ?
高畑勲の「火垂るの墓」、入ってねーな・・。
どうやらこれは、専門家400名の投票+一般人のWEB投票だったらしく、この25選はその集計結果ということなんだろうか?
と考えた時、25選の中にひとつだけ「何でこれ入ってんだ?」というのがあるのよ。
そう、「かみちゅ!」である。
とにかく、これだけ違和感がハンパない。
まるで、セレブのパーティにまぎれた一般人(ジャージ着用)である。
「かみちゅ!」なんぞに敗れた高畑勲、さぞや無念だったに違いない。

「かみちゅ!」

いやね、まるで「かみちゅ!」をディスってるように感じたかもしれんが、実は私、これ大好きなのよ!
というか、愛してやまない作品のひとつである。
まず、ヒロインがいい。
これがゆりえという女子中学生なんだけど、性格はおとなしくて冴えない子という設定で、いやホント、冴えない感じがよく出てるわ~。

いわゆる、もっさり系である

何といっても、これの第1話は神回だと思う。
まず、ゆりえが学校の教室で友達とお弁当を食べてるシーンから始まるんだが、その会話がサイコー。

ゆりえ「みつえちゃん」
みつえ「ん?」
ゆりえ「私、神様になっちゃった」
みつえ「何の?」
ゆりえ「分かんない。昨日の夜、なったばかりだから」
みつえ「ふーん」

・・何なの、これ(笑)。
そう、これはヒロインが神様になった物語なんだけど、なぜそうなったのか、昨日の夜に何が起きたのか、そのへんが語られないまま、物語は淡々と進行していく(というか、最後まで前日譚はなく、何も語られなかった)。
その後に試しで神通力を使ってみたら、超大型台風が町を襲ってしまった。
そこそこ凄い神様なんだろう。
という割には周りの反応はのんびりしたもので、学校の先生やクラスメイトは「神様になってもお前は変わんねーなーw」という感じ。
このヒロイン=神様という設定は、後に「神様はじめました」というヒット作を生むことになるが、あっちは悪い妖怪との争い等があって常にゴタゴタしてるのに対し、「かみちゅ!」の方はそういうのがなく、常にほのぼのした感じで話は進行していく。
視聴者側も、ぼーっと脱力して見るべき、ゆるアニメである。

「神様はじめました」は少女漫画の名作

ただ、第4話はアニオリ回らしくて、ゆりえは内閣総理大臣の依頼を受けて地球に来た火星人との交渉役を務めるというトンデモ展開となる。

ゆりえと火星人

火星人を米国に引き渡そうとする政府に対し、火星に帰してあげたいゆりえは脱走を企てるんだが、自衛隊に包囲されてしまう・・。

米国の忠犬のような総理大臣(モデル中曽根康弘)
銃口を向けられるゆりえと火星人

正直この回だけ少し浮いてるんだけど、これはこれで笑わせてもらった。
まぁとにかく、ゆりえがめっちゃ可愛い~。
これは2005年の作品だから、まだ萌えブームの初期の頃といっていいだろう。
初期ゆえの初々しさがある。
萌えも2010年代ともなるとテンプレ化され、正直面白みがどんどん失せていくわけで、このぐらいの時期の萌えが私は一番バランスいいと思うんだよね。
そうそう、2005年といえば「苺ましまろ」もあったでしょ?

「苺ましまろ」

「かわいいは正義」という有名なフレーズは、この作品から出たんだよね。
これは「かみちゅ!」と並び、いまだ私の中で萌え作品の最高峰である。

「ドジっ子メガネ」の原点はこの作品だと思う

いや~、いいよね、05年って。
この翌年には「涼宮ハルヒの憂鬱」が始まり、アニメが完全に市民権を得るようになっていく。
「かみちゅ!」も「苺ましまろ」も、いわば満開直前の桜の趣きとでもいうべきか。
あと個人的には、02年の「アベノ橋魔法☆商店街」も捨てがたい。

「アベノ橋魔法☆商店街」

一応、これもメディア芸術祭で優秀賞を獲っている。
特に私はこれのOPが好きで、林原めぐみの曲では一番好きかも。
ちょっと映像を見てみて。

この短い映像の中にも、一体いくつのオマージュが盛り込まれていることやら。
これはガイナックス作品だが、「FLCL」と同じで、まさにガイナックス成分100%、アニメーターの趣味全開である。
とにかく映像が凄くて、というのも金田伊功を始めとする作画テクニックのオマージュがこれでもかというぐらい大量に詰め込んであるのよ。
もはや「作画テクの百科事典」という感じ?
アニメオタクであればあるほど、たまらん作品である。
そうでない人には、多分ワケ分からん作品だと思うけど・・。
で、何とも魅力的なのが、ヒロインの朝比奈あるみ。

このノスタルジー感あふれるビジュアル、いいよなぁ・・。
いまどきの美少女テンプレからは、ややズレている。
なぜって、いまどきはこういう日焼けした浅黒い子を描かないから。
萌えそのもののルーツは80年代まで遡るというが、それを形あるものとしてしっかり体系化したのは、京アニの功績だと私は思ってるのね。

・涼宮ハルヒの憂鬱(2006年)
・らき☆すた(2007年)
・CLANNAD(2007・2008年)
・けいおん(2009年)

そう、00年代後半はまさに京アニの時代。
ここで、萌えの地盤が固められたといっていい。
2010年代以降のアニメは、00年代後半に京アニが作ってくれたものを若干マイナーチェンジしつつも、ただ模倣してるにすぎない。
いや、それが悪いというわけでもないんだが・・。
ただ、私は京アニ以前の萌えがとても好きでね。
・かみちゅ!(2005年)
・苺ましまろ(2005年)
・アベノ橋魔法☆商店街(2002年)

あと付け加えるなら
・あずまんが大王(2002年)

「あずまんが大王」

たまたま「日本のメディア芸術100選」は2007年だったがゆえ、その年以降のアニメはカウントされていない。
つまり、京アニが作ったムーブメント以降のものは100選に入ってないのよ(ギリギリ「涼宮ハルヒ」だけ入ってるが)。

萌えを体系化し、作られた京アニのキャラクターたち

そのうち、メディア芸術100選も第2弾が実施されることもあるだろう。
といっても07年の25選は宮崎作品を始め、大半が不朽の名作で構成されてるので、がらっと総入れ替えになることはないんじゃないかな。
替わるとして、せいぜい10作品ほど?
ただひとつだけ断言できるのは、「かみちゅ!」は外れるだろうねぇ(笑)。


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