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シーザーサラダが好きな彼女と僕の恋物語
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#連載小説

& episode 025

& episode 025

 僕のオーソドックスな感性を持つクニちゃん。

ハーバードの生活に慣れ、それなりにアグレッシブなマインドへ染まりつつある。

財務諸表論、マーケティング論、コミュニティー論and son on...。

彼女が吸収するもの、広がっていくアンテナを僕は目を瞠るばかりだ。

プログラグラミングにも関心を持ち、深夜、明日のレシピを考えるかのように生き生きとした表情で、構想を練っている。

コードを打つ手

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& episode 023

& episode 023

起床は午前5時。

僕の愛しい彼女は、温め直したコーヒーを片手に早々に家を出た。

入れたてのコーヒーがいつも定番だったが、ここではそうはいかない。

僕らは今、ケンブリッジに居る。

晴れてハーバード大学に合格し、MBA取得に向け大忙しのくにちゃん。

大学時代のラクロスは、この日のためにあったんだと思う。と、夜を徹して宿題に取り組んでいる。

オイルサーディンとマッシュポテト、薄くスライスした

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& episode 022

& episode 022

りんの挙式は、見事なもだった。

さすが、くにちゃんの同僚。世界を股にかけるスーパーサラリーマンの力強さは、本物だと思う。

世界が混乱に陥っても、必ず助けに来てくれるんじゃないか。

同性の僕ですら、そう感じる挙式だった。

あっぱれ。

本当に、幸せになって欲しい。

りんのあの日の涙を思い出しながら、改めて思った。

感動したのは、式の最中、二人のエピソードの中で紹介されたこんなエピソードだ

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& episode 021

& episode 021

「ママになった女友だちが、口々に「でーきーなーいー!」って言うじゃないですか。」

リンが三谷製糖の和三盆を、くにちゃんがたてた抹茶で頂く。

茶道とかしこまったものではなく、カフェのような感覚で抹茶を楽しむ。

「大声で「出来ない」と言える権利が欲しくて「結婚したい。」と、たまに思います」

セレブ雑誌から抜け出したようなリン。街中で、ハッと目を引くことも多いだろう。

「でも、」

と彼女は続

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& episode002

& episode002

太巻き。が、今日の彼女の主たる朝食。

バイタリティーあふれる彼女は、朝食を欠くことが無い。まるで、一食たりとも逃すものかという勢いで食事に臨む。世界を股にかけ、仕事をするビジネスパーソンは、男女問わずこれくらいでなければやっていけないだろう。

しかし、なぜ、太巻き?

リーマンショックから少し景気が上向きだした最近、接待もまた少しづつ増えてきており、昨夜も彼女は2件、都内の美味しい小料理屋でお

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& episode 003

& episode 003

今日は、趣味のランニングのオフ会で豊洲でバーベキュー。

くにちゃんは、ヨーロッパに出張中で1週間程不在だ。

ラン友の佳久(よしひさ)に、近況を聞かれる。

「どうよ、彼女とは?」

「順調だよ」

「相変わらず、放置プレイか(笑)」

「信頼関係と言ってくれ(笑)」

俺だったら耐えられないなと、佳久はバンズをほおばりながら言う。

「コーラ、飲むかい?」

どうも、と佳久は受け取る。

佳久

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&  episode 004

&  episode 004

くにちゃんと僕の出会い。

それは、7年前になる。

当時、僕とくにちゃんは大学生だった。大学も、学部も、サークルも全く接点がなかった僕らは、ある就活のイベントで知り合った。

今も昔も、就職活動というやつは学生をより強い人間する「試練」だと思う。

たった大学4年間で、どんな差がつくのか。

僕は建築を専攻しており、すでに専門が決まった立場だった。

就活イベントは、高校時代からの友人にどちらか

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&   episode 005

&   episode 005

「総合商社に行きたいんですか?」

僕は、彼女に聞き返した。

くにちゃんは、まっすぐな目で一呼吸おいて答えた。

「はい。第一希望です」

海外で戦える人間になりたい!そう思いながら、大学時代を過ごしてきたそうだ。

朝一に英会話学校へ通い、それから学校の授業へ。夕方は、家庭教師を行い、夜は、第二外国語である中国語のレッスンをオンラインで。

サークルは体育会系のラクロス部で英会話と調整をしなが

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&   episode 006

&   episode 006

僕がくにちゃんと付きあい始めたのは、桜がほころび始める3月。

銀行の内々定が出て、本命を控えた時期だった。

僕は、研究室からの推薦で大手建設会社の内定が決まったところだった。

理想的なキャリアはエッジが効いた憧れの建築家の元で働くことだったが、社会人としてのスタートは組織だった会社の方が、後々仕事がしやすいぞという先輩からの助言に従った。

くにちゃんは、手堅く銀行の総合職の内々定をゲットし

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& episode 009

& episode 009

七草粥を食べ、年末年始ムードに区切りをつけた。

年始の挨拶回り最終日なので、くにちゃんは今日はおそらく午前様だ。

七日以降の挨拶回りは、ご愛嬌だよ。

と、すっかり天下無敵のスーパーウーマンが板についた彼女。

「シーザーサラダ+お米+お味噌汁」

が、好物な彼女に、その組み合わせと七草粥のなにが違うのか聞いてみた。

「体にやさしい。心地よい食生活」

は、共通項である。

彼女は首を横に振

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& episode 010

& episode 010

六本木駅、徒歩8分。

ある有名芸術家が、小さなギャラリーで個展を開くとインビテーションをもらった。

建築業界というのはゼネコン業務でなければ、華やかな世界だったりする。

大まかに「土木・不動産・建築」を一つのカテゴリーにすると、建築は群を抜いて華麗である。

建築業を営みながらプロダクトデザインを行ったり、出版を行ったり、メディアで露出したり。と、花形スターが存在する。

僕もどんな形かわか

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& episode  011

& episode  011

りんはカウンターで信州りんごのジュースで割ったジンをオーダーし、ギャラリーの回覧をしようと言った。

今回の個展のテーマは、「LIFE with clothes」

フォトグラフ、グラフィック、CG、彫刻、プロダクトデザインなど、多様な表現方法で服と生き様を切り取っている。

りんは、一枚のグラフィックの前で足を止めた。

女の子がいかにも好きそうなマカロンカラーでメルヘンチックにまとめられた一枚

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&   episode  013

&   episode  013

ひな祭りの朝は、

「苺大福とお抹茶」

100円均一で見つけた、フェイクの桜の飾りを添えて。

もちろん、大食漢の彼女なので苺大福ではお腹は満たされない。

口直しに、味噌ラーメンと菜の花を炒めたソテーとゴマおにぎりを添える。

どちらが口直しなのか。

なんて、

それは「年度末」という3月に免じて許して欲しい。

この苺大福、男料理の極みという気持ちで、彼女が帰宅する前にせっせとこしらえた。

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&  episode  014

&  episode  014

忙しい3月の朝。

彼女の午前中を支えるのは、「ラーメン」。

塩ラーメンが定番で、長ねぎを多めに刻み、好みで柚子ごしょうを加えたり、柚子を乗せたりする。

飲み会が前日にあった時は、チャーシューもしくは、ウインナーをトッピングする。

このラーメン期のくにちゃんは、全国各地の気になるネギをネットでオーダーする。

本当は農家の直売がいいようなんだけれども、まだそういう農家は少ないようで、もっぱら

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