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& episode 010

六本木駅、徒歩8分。

ある有名芸術家が、小さなギャラリーで個展を開くとインビテーションをもらった。

建築業界というのはゼネコン業務でなければ、華やかな世界だったりする。

大まかに「土木・不動産・建築」を一つのカテゴリーにすると、建築は群を抜いて華麗である。

建築業を営みながらプロダクトデザインを行ったり、出版を行ったり、メディアで露出したり。と、花形スターが存在する。

僕もどんな形かわからないけれど、いつか「ああ!」と言われるような建築家になろうと思っている。

そう、これから行く芸術家のように個展を開いて喜んでもらえるくらい。

ギャラリーは、オープニング当日でとても混んでいた。

ドリンクスタンドへ足を運び、シェフおすすめのホットチョコレートを頼んだ。仕事が後に控えているので、アルコールは飲めない。

カウンターの奥に大きく背中が開いたネイビーのドレスを着た、センス良い女性がいた。

りんである。

りんは、ファッション業界で活躍するバイヤーだ。

こうしたギャラリーに出向くと、アンテナが似ているようでよく会う。

「やあ、りん」

と声をかけると

「今日は一人?」

と、横にくにちゃんがいないことを気遣った。

「水曜日だからね」

「出陣日ですね♪」

りんは、僕にカードを差し出した。

「何?これ?」

「通販サイト、始めたんです」

彼女は、一呼吸おいてこう付け加えた。

「くに子さんみたいな女性を応戦したくて」

くにちゃんが魅了するのは、僕だけじゃない。

同性をも強烈に惹きつける。

僕が彼女と付き合ってから、僕は女性からもてなくなった。

全てを初恋にさせる。

僕のくにちゃんはそういう人なのだ。

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