ヒビノヨアケ

北海道に住んでいます。 子どものころに詩を褒められて文章を書く喜びを知りました。 胸に…

ヒビノヨアケ

北海道に住んでいます。 子どものころに詩を褒められて文章を書く喜びを知りました。 胸にふつふつと浮かぶ言葉で物語と詩を紡ぎます。

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記事一覧

今日もまた零時をまわる

言葉を紡ぐために勤めを辞めたのに 暮らしのためにまた働き始めて再び忙しくなり、 そして言葉を失った 頼りにされて嬉しい 頼られているうちが華だと思う しかしそうす…

ヒビノヨアケ
2週間前
2

頑固だね

「頑固だね」と言われて少し気分が悪くなる がんこ、という響きがすべてを否定しているみたいに感じる だけど 実際わたしは頑固なのだろう 決まりきったルーティンがある…

ヒビノヨアケ
3週間前
1

君を捕まえてみたい

夏の暑さが嘘のようにひいたアスファルト 強い光におびき寄せられる虫のように 君がふらふらと腕の中に引き寄せられないかと夢想している 薄墨色に染まった街並みを歩きな…

ヒビノヨアケ
3週間前
3

毎日が幸せであるように

幸せは、捕まえていないとあっという間に逃げてしまう 美味しい、幸せ 楽しい、幸せ 嬉しい、幸せ 面白い、幸せ 甘い、幸せ 温かい、幸せ かわいい、幸せ 美しい、幸せ …

ヒビノヨアケ
3か月前
6

Conny

コニー、これがあんたのやりたかったことかい コニー、そろそろ自分らしくないって認めたらどうだい コニー、回転木馬に乗って同じところを回ってるだけさ コニー、いい加…

ヒビノヨアケ
3か月前
1

ボディピアス

 ボディピアスと言うそうだ。  娘が臍にピアスを開けたいと言い出した。高校三年生。まだ十七歳。  色々言いたいこともある。でも、最近は少しも言うことを聞きたくない…

5

君へ

君は、美しい十代の終わりに どうして君自身を傷つけるの 寝ることも、 食べることも、 笑うことも、 悲しむことも。 運動することも、 汗をかくことも、 計画することも…

5

お母さん、お元気ですか

近所に出来た新しいパン屋に行った。 外に出るのは久しぶりで緊張した。 思いのほか暖かく、春がそこまで来ていることを知った。 家の中で過ごしている日々が鬱々としたも…

6

久しぶりにあった彼女と

オレンジ色のペンダントライトがふたりの顔を照らし、 夕暮れがすぐそこまで迫ってきていることを知る。 彼女は夕飯をカレーにすると言い、 私は30%オフで買った牛肉でプル…

11

親しい、友達

小学生のとき、親友が欲しかった。 口下手で面白いことも言えず、性格も暗かった私は、漫画の世界にある『親友』がいればいいなとずっと思っていた。『なかよし』とか『り…

16

シルエット

朝ドラの深津絵里を見て、時が止まったような人が実在するのだと知る。 深津絵里(敬称は略させてもらう)は同じ歳なのだけれど、当然のことながら相貌はまるで違う。 変わ…

5

鳴らなかった携帯電話

8時46分。携帯電話の画面に娘から不在着信。 とっくに学校に行ったはずなのに訝しく思いつつ開くと、メッセージが届いていた。 ”痴漢にあった” ただそれだけを、放り投…

3

未成年

未成年って輝きを無駄遣いしてる君がキライだ 制服のスカートを翻して白い素肌を晒す君がキライだ 赤いネクタイを緩めて携帯を翳す君がキライだ 派手に酔い散らかしてそれ…

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甘くてしょっぱい

 ああ、そうか。  先輩の顔を見て、これはナシだなと悟った。  なんてこった。今こそ降臨してくれ、夢の中のアタシ。  夢ではいつも饒舌で、みんなと快活に過ごしてい…

7

【小説】場違いにメロウ

「あいつ、どう?」  後部座席から身を乗り出した陽人が、横断歩道を横切る女を見て言う。 「やだよ、汗だくじゃん」  女のランニングは背中がびっしょりと濡れていた。…

8

つまらなく惨めな気持ち

とてもつまらなく、とても惨めな気持ちなることがある 抗いがたく甘美に、僕をどん底へ誘い込むのは 心に巣食うネガティブな自尊心 雨上がりに虹のかかった空を見上げて …

8
今日もまた零時をまわる

今日もまた零時をまわる

言葉を紡ぐために勤めを辞めたのに
暮らしのためにまた働き始めて再び忙しくなり、

そして言葉を失った

頼りにされて嬉しい
頼られているうちが華だと思う

しかしそうするうちに言葉は形をなさなくなり
私は茫洋とした日々を過ごすこととなる

書こうと思ったところで
言葉は簡単に出てきやしない

言葉を綴るというのは天才でもない限りある程度の訓練が必要なのだ
そして私はどうやら天才の類ではない
訓練し

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頑固だね

頑固だね

「頑固だね」と言われて少し気分が悪くなる
がんこ、という響きがすべてを否定しているみたいに感じる

だけど

実際わたしは頑固なのだろう
決まりきったルーティンがあるし
触って欲しくない場所があるし
誘われてもYESといえないタイミングがあるし
興味のない話題に興味のあるふりが出来ないし
287円と言われて1037円を出すし
犬よりは猫派だし
洗濯物は布巾と分けて洗いたい

だけどもし

「もうち

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君を捕まえてみたい

君を捕まえてみたい

夏の暑さが嘘のようにひいたアスファルト
強い光におびき寄せられる虫のように
君がふらふらと腕の中に引き寄せられないかと夢想している

薄墨色に染まった街並みを歩きながら
二日前の君をまだ噛みしめている

昨日も今日も更新されない君の残像を
長い影に重ね合わせてゆらゆらと思い出している

君のほっそりとしたうなじに落ちた後れ毛を
からかうように触ったKに、
体中の血がたぎるように熱くなった

君の優

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毎日が幸せであるように

毎日が幸せであるように

幸せは、捕まえていないとあっという間に逃げてしまう

美味しい、幸せ
楽しい、幸せ
嬉しい、幸せ
面白い、幸せ
甘い、幸せ
温かい、幸せ
かわいい、幸せ
美しい、幸せ

ささやかな幸せをいくつも積み重ねて、大きな幸せに満たされることがある
そんな日の夜は今日という一日を振り返って
どれほどまでに幸せだったかを思い出し、またやっぱり幸せに満たされる

だというのに幸せは、
ひと眠りするともう薄れてい

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Conny

Conny

コニー、これがあんたのやりたかったことかい
コニー、そろそろ自分らしくないって認めたらどうだい
コニー、回転木馬に乗って同じところを回ってるだけさ

コニー、いい加減に立ち去るべきなんじゃないの
コニー、雨に打たれ続けて哀れを演じて
コニー、いったい誰に同情して欲しいってのさ

コニー、泣き顔なんてみせちゃいけないよ
コニー、あんたの居場所はここじゃないんだ
コニー、その優雅な二本足で歩いていって

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ボディピアス

ボディピアス

 ボディピアスと言うそうだ。
 娘が臍にピアスを開けたいと言い出した。高校三年生。まだ十七歳。
 色々言いたいこともある。でも、最近は少しも言うことを聞きたくないらしく、小言は全部「ハイ、ハイ」とあしらわれる。

 私は、高校生のときに親に内緒で耳にピアスを開けた。
 当時は簡易器具もなく、まことしやかに噂されていた方法は、安全ピンで穴を開ける方法。
 神経が出て失明するとか、傷口が膿んで耳たぶを

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君へ

君は、美しい十代の終わりに
どうして君自身を傷つけるの
寝ることも、
食べることも、
笑うことも、
悲しむことも。

運動することも、
汗をかくことも、
計画することも、
失敗することも。

つながることも、
愛することも、
綴ることや、
読むことだって。

人生にはたくさん
やるべきことがあって
たくさん
学べることがあって
その小さな、
小さな箱の中に入ってることが
すべてじゃないって
君に伝

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お母さん、お元気ですか

お母さん、お元気ですか

近所に出来た新しいパン屋に行った。
外に出るのは久しぶりで緊張した。
思いのほか暖かく、春がそこまで来ていることを知った。

家の中で過ごしている日々が鬱々としたものなのか、
それともそれなりに豊かなのか、自分では判別出来ない。
ベランダの汚れを落として猫を開放した。
そういえば旭川に住む母が、そろそろこぶしが咲くと言っていた。
真っ白いこぶしが木々にぶら下がる様を思い浮かべた。
カタクリの群生地

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久しぶりにあった彼女と

久しぶりにあった彼女と

オレンジ色のペンダントライトがふたりの顔を照らし、
夕暮れがすぐそこまで迫ってきていることを知る。
彼女は夕飯をカレーにすると言い、
私は30%オフで買った牛肉でプルコギにすると笑う。

こんなにも長く話してしまったことで、
語りすぎた私の口は止まらず、自嘲して虚しさが胸に沸き起こる。
自信を持って輝く彼女は真っ直ぐな眼差しで同調するも、
それが却って私の口を滑りやすくするのだ。

彼女らと別れて

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親しい、友達

親しい、友達

小学生のとき、親友が欲しかった。
口下手で面白いことも言えず、性格も暗かった私は、漫画の世界にある『親友』がいればいいなとずっと思っていた。『なかよし』とか『りぼん』とかにある、キラキラした関係。

4年生になって、クラスに転校生が来たことでチャンスが訪れた。
彼女の名前は「さえちゃん。」

さえちゃんは”都会”から来たと言う。
さえちゃんの話すことは自分の住んでいる場所にはない新しいことが多くて

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シルエット

シルエット

朝ドラの深津絵里を見て、時が止まったような人が実在するのだと知る。
深津絵里(敬称は略させてもらう)は同じ歳なのだけれど、当然のことながら相貌はまるで違う。

変わらぬ透明感やピンと背筋の伸びた感じが違ってて、
皺の刻まれ方も、笑顔の作り方も、
年齢を重ねた落ち着きも、だというのに感じられる色香も、
なにもかもが違う。

私がどこかに落としてきたものはなんだろう。

まだこの手のひらにあるのか、そ

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鳴らなかった携帯電話

8時46分。携帯電話の画面に娘から不在着信。
とっくに学校に行ったはずなのに訝しく思いつつ開くと、メッセージが届いていた。

”痴漢にあった”

ただそれだけを、放り投げるみたいに送りつけてその前後がまるで無い。
時間を見ると今より40分も前に送ってきたもので、電話にもメッセージにも気づかなかったことになる。
慌ててリダイアルすると、今から警察と一緒に帰ってくるという。

「ごめん、電話に気づかな

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未成年

未成年

未成年って輝きを無駄遣いしてる君がキライだ
制服のスカートを翻して白い素肌を晒す君がキライだ
赤いネクタイを緩めて携帯を翳す君がキライだ

派手に酔い散らかしてそれをSNSにアップする君がキライだ
本当は早くに起きているくせにわざと遅刻する君がキライだ
料理が出来るのに出来ないふりをして馬鹿を演じている君がキライだ

猫が好きなくせに気のないフリをしたり
子供が好きなくせに苦手なフリをしたり
勉強

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甘くてしょっぱい

甘くてしょっぱい

 ああ、そうか。
 先輩の顔を見て、これはナシだなと悟った。
 なんてこった。今こそ降臨してくれ、夢の中のアタシ。

 夢ではいつも饒舌で、みんなと快活に過ごしているじゃないか。
教室でボッチ飯したり、日直の忘れた黒板拭きを誰にも見られず行うような幽霊女じゃない。
 どんな状況にも明るく笑って立ち向かえる、そんなアタシが出てきてくれたら、言葉を探して佇んでいる先輩に、

「なあんちゃって!」
 と

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【小説】場違いにメロウ

【小説】場違いにメロウ

「あいつ、どう?」
 後部座席から身を乗り出した陽人が、横断歩道を横切る女を見て言う。
「やだよ、汗だくじゃん」
 女のランニングは背中がびっしょりと濡れていた。ショートパンツから伸びた脚は筋肉質で、色気など感じられない。
「それに胸もないじゃん。俺おっぱい大きいのがいい」
「でもさ、走って疲れてるから、案外パッと捕まえれんじゃね?」
「やだって。汗くせぇだろ」
 仁成がぐずぐず言う間に、女はラン

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つまらなく惨めな気持ち

つまらなく惨めな気持ち

とてもつまらなく、とても惨めな気持ちなることがある
抗いがたく甘美に、僕をどん底へ誘い込むのは
心に巣食うネガティブな自尊心

雨上がりに虹のかかった空を見上げて
「死にたい」
と言ってしまいそうで怖い

ずっと誰とも喋らずに
SNSの世界で生きていることを
母が知ったら嘆くだろう

こんな風に生きるよう
父は教えはしなかった
こんな風で生きてるよう
僕は想像しなかった

何月何日何時何分
どこか

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