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エッセー

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#日記

Nothing's eternal

 初めて死という概念を直接体験したのは小学2年生の頃だったか。飼っていたハムスターが朝突然動かなくなり、学校から帰ると死んでいることに気づいた。それが私の人生において初めての死だった。泣きながらかごの前に立ち尽くし、このままここに置いとこうよ、という私に母は「死んじゃったら体が腐ってきちゃうから。悲しいけど、お庭に埋めてさようならをしよう」と牛乳パックを渡してきた。母はそれに小さく丸まって硬くなっ

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アンハッピーアニバーサリーおよびリレーションシップ2度目の月命日

 まだ2ヶ月しか経っていない。

 ってこれ書いたことあるな一回。付き合って2ヶ月の時だっけ。私たちのリレーションシップが死んでから、2ヶ月がたった。奇しくも、私たちのリレーションシップは、それが始まった記念日に命日となった。でも英語では命日も記念日もAnniversaryだから、私の人生は誰か、割とチャーミングな、それでいて遊び心のある人が脚本を書いているのではないかとすら感じ始めた。

 それ

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恋人と別れることになりものすごくブログを書きたい、しかし開設すらできないでいるのでnoteにとりあえず書くことにした。

恋人と別れることになりものすごくブログを書きたい、しかし開設すらできないでいるのでnoteにとりあえず書くことにした。

 Sちゃんと別れることになった。

 'It's a long story' (話すと長いのよ)という感じなんだけど。気が向いたら書きたい。ブログを開設したいんだけど、ワードプレスがエクストラのお金を請求してきて、もう挫折。そんなこんなしながら、もう外は暗い。

 先日、オーストラリアのシドニーで三週間ほどの時間を過ごした。観光地巡りをしようとすると途端につまらなくなるシドニーの、郊外のSちゃんの

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ヌーブラのゆくえ

好きだった子と会ってきた。予備校時代からの友達で、大学も同じだ。私から展示を見ようと誘ったのだ。単純に、友達がいないから。ダメもと。そう思っていたのに彼女はあっさりオーケーした。人前でご飯を食べるのをあきらかに避けていた彼女が夕食も一緒に食べようと言い出したのは不思議だった。私たちの関係性も多分変わったのだろうと思う。彼女は複雑な色のカラーコンタクトを付けた目をくりくりさせながら話す。お金が欲しく

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2017年、「経血は赤い」という告白

2017年、「経血は赤い」という告白

 イギリスの広告界で初めて、生理用ナプキンの広告で「青い経血」の代わりに赤い液体が使われた。動画はこちら。

 母がつけっぱなしにするテレビの中では流行りのモデルが生理用品をポーチから取り出し、開いたものを顔の近くで持ち、その製品の薄さを存分にアピールする。CMの中でそれらが受け止めるのは、「青い経血」である。モデルは生理について具体的なことは一切述べずに笑顔を絶やさず、白いボトムを着たお尻を突き

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レズという言葉

 この間、大学でカミングアウトをした。自己紹介ならぬ「他己紹介」をするという課題で、ペアになったクラスメイトに自分の作品を見せていく中で、自分の作品は、私のアイデンティティの中でも特に、ゲイである、女の子が好きであるというところに深く根ざした、プライベートなものが多かったから、説明しておいた方がわかりやすいかと考えた。最初はゲイという言葉を使わずにいた。なんと言えばいいかわからなかった。カタカナ語

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距離の近い女性二人を「姉妹」って注釈つけるのもう疲れた

 母が働いているクリニックの医師の話を聞いていた。母が倒れた時に家に来て対応してくれた女医さんである。「命の恩人」が、もうすぐクリニックをやめるそうだ。理由は、「パートナーが仕事の都合で東京を離れる、私もそれについていきたい」からだという。大きな病気から奇跡的な回復を遂げた母は、小馬鹿にしたように笑いながら言う。「って言うか、パートナーって言いかた、なんなのかしらね。普通に旦那さんって呼べばいいの

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こどものせかい

「きもいんだよ」「こいつオカマなんだぜ」「オカマ言葉言えよ」「触んな」

都内の駅のホーム。近くに私立の小学校があり、制服姿の小学生の甲高い声が響いていた。ホームドアがない上、線路までの距離も十分にあるとは言えない。混み合っている時に黄色い線の外側をやむなく歩く時、もしよろめいて落ちてしまったら、と慎重になる。急行に無視されるどころか、1本逃せば10分は次の電車が来ない。東京なのに単線で、車体も古

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東京で生きる

私は東京生まれ東京育ちの都会っ子だ。地上にも地下にもびっしりと張り巡らされた線路を時間通りに走る電車に詰め込まれて、味気ない東京郊外ベッドタウンを抜け出す。池袋や渋谷や新宿に出れば欲しいものはすべて手に入る。ごちゃごちゃの文化や文化ともよべなそうなものたちが自由に歩き回っている。スクランブル交差点を、電車から降りていくみたいに人が渡っていく。みんなだいたい同じような顔をしている。テレビの取材。ティ

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夢日記 演劇の稽古場にて

夢を見た。

演劇の稽古中らしく、下の舞台で、みんなが既に集まって各自稽古してる中、私は上半身裸、下はジャージで、遅れて登場し、走って舞台に降りていった。自分の身体は軽く、すっきりしていた。風が吹き抜けて、気持ちが良い。私の体はいつかみたいに平坦だった。恥ずかしさはない。何も恥じることはない。

稽古中の誰かとすれ違う。私が彼らを誰か と認識するように、彼らもまた私を誰か と認識して、全く気にも留

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氷の城と都内某所の廃校にて

某所で開催されたイベントへ行ってきた。イベントと言ってもそこまで規模の大きいものではない。せいぜい参加者は12人ほどで、プラス運営のボランティアの方が3人程度。廃校になった小学校の図書館を利用した会場で、いろんな話をのんびりしようではないか、という趣旨のイベントである。私は主催の団体やこのイベント自体を随分前から知ってはいたが、受験生活が予想外に長引いてしまったことなどもあって今回が初参加となった

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