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【徹底解説】 6年間学費タダで生活費まで貰える?? 返済不要のハンガリー政府奨学金

[[2023.11.29]] 「年度別の受給者数と倍率」、各種情報を加筆しました。
[[2023.07.17]] 「実際に学生が利用したサービス」、各種情報をアップデートしました。
[[2022.08.08]] 「茨城県海外対象医師修学資金」について加筆しました。
[[2022.11.05]] 「各大学の選考の傾向」、「奨学金生の実習」について加筆しました。
[[2022.12.03]] 「2023年度募集情報のアップデート」、「予備コース入試前からのタイムライン」、「実際に利用したサービス」について加筆しました。



ハンガリー政府奨学金は一言でまとめると以下のようなものです。

大学入学後6年間の学費が全額免除、加えて毎月ちょっとした生活費まで支給されて返還は不要。受給できれば日本の国立医学部よりも安くなります。

ハンガリー医学部では日本人医学生が毎年新たにこの奨学金をもらって学業に臨んでおり、現地で学ぶ日本人医学生の母数を考えると、とても寛大な仕組みです。

今回はそんなハンガリー政府奨学金について書きました。概要から申請の準備や日程・条件、選考過程までこの記事だけで一通り理解できるようになっています。

奨学金申請のプロセスは全学部共通のため、医学部以外でハンガリーに留学したい人にも参考になると思います。ただし、医学部生だけ異なる点(日程・条件)もいくつかあるので注意しましょう。

記事の前半では奨学金の概要、後半では申請の準備や選考過程・志望動機書の書き方について説明します。

新しい情報、みなさんからのフィードバックを元に逐一加筆しております。質問は気軽にTwitterで質問箱・DMまでお寄せください。


ハンガリー政府奨学金の概要


ハンガリー政府と留学生の出身国政府との間で取り決められた給付型奨学金です。2014年から開始され、今年は新たに31名の日本人医学生が受給しています。

受給期間は奨学金生に選ばれた年次から専攻過程を修了するまでです。(例: 医学部生で3年次から受給だと6年生修了までの4年間、入学時から受給だと6年間。)

奨学金の内訳は以下の通りです。

・授業料の全額免除 (約1200万円〜1500万円)
・住居費の補助 (毎月43,700ft=約15,000円)
・生活費の補助 (毎月40,000ft=約14,000円)

1番大きなポイントとして、給付型の奨学金なので返済の必要がありません学費が完全にタダになるということです。6年間の生活費だけで医学部に通える上に、生活費や住居費の補助も支給されるとなれば、日本の国立大学医学部よりもさらに安くなります。

選考基準については記事の後半で詳しく説明しますが、ポイントがもう一つ。ハンガリー政府奨学金では家庭の収入は考慮されないため、学生支援機構などの奨学金の対象にならない学生(家庭の収入等により)にもチャンスがあります。


<日本の医学部との費用比較>


以下が各医学部6年間の大まかな必要費用の総額です。

・日本の国立医学部:入学金&授業料360万円(年50-60万円)+生活費1080万円(月15万円)+教材費=約1500万円

・日本の私立医学部
:入学金&授業料1900万円〜4700万円+生活費1080万円(月15万円)+教材費=約3000万円〜6000万円

・ハンガリー医学部(奨学金無し)
:授業料1500万円(年約250万円)+生活費&教材費1080万円 (月15万円) +航空運賃60万円(年1回帰国10万円)+留学保険60万円(年間10万円)=約2700万円
*事務局の手数料(年度による)が別個加わります。

・ハンガリー政府奨学金生:
上記 − 授業料1200万円 − 住居&生活費補助約210万円(月約29000円)=約990万円 
*事務局の手数料(年度による)が別個加わります。

このように、医学部6年間でかかる費用は「日本の私立医学部>ハンガリー医学部>日本の国立医学部>ハンガリー政府奨学金生」となります。

もちろん必ず受給できる保証はないため、奨学金無しでも留学生活を賄える資金は必要です。

最安値の私立医学部に通える資金があれば、政府奨学金次第では学費タダの可能性があるハンガリー医学部留学は費用的にも魅力のある選択肢だと思います。


<対象者の条件は?年齢制限はある?>


大学在籍中に受給する奨学金なので、医学部予備コースの期間は対象外
です。

予備コース在学中に申請を行います。

大学入学後も年に一度申請が可能(大学により異なる、詳細は後半へ)で、医学部の場合は最大6年間(受給開始からコース修了まで)が対象期間です 。

年齢の制限は明記されておらず30代で受給している学生もいます。現時点で政府奨学金の年齢制限(例:30歳など)はありません。

加えて世帯主の収入による制限もないので家庭の経済状況は関係なく、申請条件は”ハンガリーで学びたい外国人留学生”ということです。


<大学毎に選考基準の違いはある?>


年度によって奨学金の対象大学が変更になることがあり、申請年度にならないと志望の大学・在籍する大学で奨学金が申し込めるかは分かりません。
例:ペーチ大学医学部は奨学金設立当初は対象でしたがその後数年間対象外になり、今年は再び対象になりました。

また、予備コースから大学に入学する際に受給対象になる人が多い大学もあれば、入学後に申請した人のほうが申請が通りやすい大学もあります

大学附属の予備コース (デブレツェン、セゲド)の学生は優先的にその大学に進学できるため、各大学の奨学金の傾向は予備コース選びの一因にもなっています。(詳しくは記事後半をご参照ください。)

2022年度に奨学金の対象の医学部は以下の通りです。

センメルワイス大学
デブレツェン大学
セゲド大学
・ペーチ大学


<申請の流れ 医学生は奨学金選考の入試期日が早い>


上記のようなタイムラインで1月15日に書類提出完了、6月末-7月頃に奨学金の審査結果が通知されます。

ここで注意してもらいたいのが医学部で奨学金の選考対象になるためには、入試期日が他学部よりも少し早いことです。

他大学・他学部でハンガリー政府奨学金に申し込むのと比べて、医学部では奨学金の実質的な期日や倍率が異なります。

政府奨学金公式のタイムラインでは5月末までに教育機関が入試合格者(=奨学金候補者)を選考するとあるものの、医学部生はさらに早い時期に対象大学に合格する必要があります

これは奨学金申請の志望大学順位が関係しています。

記事後半にて、実際の入試期日や各校の傾向など、諸々の要素を考慮した上で奨学金申請への予備コース入試からのタイムラインを紹介します。

より詳しい選考過程の日程が知りたい方のために、こちらの画像を貼っておきます (2023年度の例)。


<必要書類>


申請はオンラインで下記の書類を提出します。

・個人情報
・パスポートコピー
・同意書
・健康診断書
・高校の卒業証明
・最終学歴の成績表
・TOEFL/IELTS等の英語能力スコア
・志望動機書


<受給にあたっての制約・条件>


ハンガリー国内での就業を対象にした奨学金のため、学期中にERASMUSなどの交換留学生として他国に出向くことはできません。

また、学期中に私用でハンガリー国外に滞在できるのは原則10日間以内(休日を除く)というルールも追加されました。

新しい制約が追加されることもあるので、申請する年度の規約を確認しましょう。


ハンガリー政府奨学金を貰うために


奨学金選考の段階や日程・基準、他の奨学金との併願、準備の進め方について具体的に説明していきます。

受給者数の変遷や倍率、各大学の選考傾向志望順位の重要性についても書いています。

また、志望動機書を書く際に奨学金の機構側から出される質問と、志望動機書の書き方も掲載しました。

アカデミックな志望動機書を英語で書くにあたっての説明をしている日本語のリソースは少ないです。

私が志望動機書作成時に利用したサービスや、イギリス・アメリカのトップスクール学生30人以上の志望動機書の書き方をリサーチした上での要点をまとめました。

さらに各校の傾向や入試期日を考慮した上で、今から奨学金申請に向けて準備するならこれがベスト、というタイムラインも載せています。


これは私の意見ですが、ほとんどの人が“奨学金=約1500万円(6年間の学費)+毎月約3万円”、しかも返済不要という超強力な事実を真剣に捉えた努力をしていないように思います。

運の要素もあるにせよ、選考において個人差が出る部分(英語スコア、志望動機書など)に労力を惜しんでいては始まりません

「奨学金取りたい」と思い立ったその日から準備を始めましょう。

獲得できたら1000万円以上浮くと思えば、全力で対策する価値はあるはずです。

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