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人と自分を比較して苦しんでいるあなたへ 【自己肯定感より先に必要なもの】


ここ数年、ご相談者さまの中に「私は“自己肯定感”がとても低くて…」とお話しされる方が増えてきた。

【自己肯定感】

本当に市民権を得た言葉なんだなと驚かされている。もともとは学術用語として生まれ、self-esteem やself-efficacyなんかの類似概念としても用いられている言葉だ。医療現場でも使うし、心理学の論文でも普通に使われている。

(ちなみに初めて使われたのは1994年出版のこの本の中だそうだ)↓


先日も、可愛らしい20代の女性がやってきてこんな話をしてくれた。

「私がこんな辛いのは、やっぱり自己肯定感が低いからなんだろうって思っているんです。それをなんとかできたら、苦しまなくて済むんじゃないかって思って。自分で色々調べて、“自分のいいところを探す、出来たことを認める、人と比べない、自分を好きって言ってくれる人と一緒に過ごす”とか、たくさんやってきました。でも、自分のことなんか全然好きになれないし、いいところを探せば探すほど、何にもないじゃん、て。私って何もない、何も持ってないって、絶望的な気持ちになるんです。こんな自分の一体何を“肯定”したらいいの?って…」

私は、すぐにでも彼女の「持っているもの」がどれだけ素晴らしいかを説きたかったけれど、クールな専門家の立場上、じっと我慢して聞いていた。

(わかるよ。あなたはもうすでにめちゃくちゃ頑張っているし、十分に可愛らしくって、まだ20代で人生これからで、可能性の宝庫で、その気になればなんだってできる、誰にだってなれる。だけどそんなこと私が言ったってしょうがないんだよね。あなたにとっては意味がない。あなたはとても苦しい思いをしている。)

彼女の同世代の女の子は、インスタで流行りの【美しい顔】を手に入れて、自己プロデュースで有名になり、フォロワーから信じられない額の投げ銭を巻き上げ、企業からはPR案件でたんまりいただき、おしゃれなカフェや三つ星レストランやブランドファッションにジュエリーを手に入れ、この世のありとあらゆる娯楽と贅沢を楽しんでいる。それをまた発信してまた注目を集める、そうやって人生を謳歌している。

そういう【勝ち組】的な人生を、彼女は日々、スマホの画面越しに見ている。

「私は、顔だって普通だし、頭もそんないいわけじゃないし、SNSもやってるけどほぼ見るだけだし、恋愛も大してうまく行ってないし、仕事だって、私じゃなくて、誰でもできるようなやつだし。この先劇的に人生が変わるって可能性もないと思うんです。将来に希望なんてないし…」

彼女はうなだれてピンクベージュのネイルをいじっていた。

「それでも、生きてるだけで偉いよとか、自分で生活する分は稼いでるじゃんとか、一応彼氏もいて友達もいて、時々美味しいもの食べて、たまに欲しい服とか買って、幸せじゃん、とか、ポジティブに考えようって思うんですけど… でも街歩いててレベル違いの可愛い子とか見ると道の端っこに寄って小さくなっちゃって、もうこんな顔で外に出てるのやだとか、仕事も全然やりたいとかじゃないし、胸張れるようなことが一つもなくて、かといってやりたいこととかなくて、家帰ってそこら辺にあるもの食べてYouTubeとか見て気がつくと夜中で… そういう自分にまたがっかりして、、すみません、こんなどうでもいいこと…私の悩みって、贅沢ですよね」


自分のことなんか全然好きになれないし、いいところを探せば探すほど、何にもないじゃん、て。私って何もない、何も持ってないって、絶望的な気持ちになるんです。こんな自分の一体何を“肯定”したらいいの?って…」


もちろん彼女には「いいところ」がたくさんある。「いろんなもの」を持っている。「肯定」すべきたくさんの力や魅力がある。
でも、彼女が日頃から熱心に覗いている手のひらサイズの小さな窓の価値観では、その“魅力”にはなかなか気づけない。

SNS。インフルエンサー。YouTuber。一握りの大富豪。

現代に生きる私たちは、個々人がそれぞれの価値観を自由に表現・発信できる機会や可能性を手にしたはずなのに、私たちの思い描く【成功】のイメージはむしろ限りなく狭く偏ったものになっているような気がする。

特に若い女性の【成功】例。

誰もが羨む【美しい顔】を手に入れて、たくさんの人の羨望と支持と共感を得て、ゴージャスなものに囲まれて、旅したり遊んだりまたそれを発信したりして有名になる。そのイメージがまるで唯一のゴールのように蔓延している。

幸せになるためのゴールや生き方なんて人の数だけあっていいはずなのに、
私たちはどうしてこうも力を合わせて【成功の主流】を作り出してしまうのだろう?

大変興味深い現象だ。

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