Dancer-Joe
この物語は、誰にでも起きるだろう日常に少しだけ刺激を加え、人と人の関わり合いを綴つずったフィクションです。
普段、何気なく考えたことを書いています。
終活とは何ぞや? 66歳になったオヤジが「人生の終わりのための活動」を始めた。 まずは「エンディングノート」からかな~(笑)
この二つの物語は、ちょっと不思議な世界が描かれています。 ある作家の物語を真似て、自分ならどんな物語にするだろうと書いてみました。
この子と過ごした三年間は、本当に充実した幸せな日々だった。 短い日々だと思ってしまいがちだが、長ければそれでいいということではないはずだ。所詮、時間などとい…
【第八章『八雲』-3】 南川ダムで八雲と茉由は話をしていた。自分の気持ちを八雲に伝えた茉由だったが、八雲のイスラエル行きの決心は変わらない。 「さぁ、もう帰ろう…
【第八章『八雲』-2】 東京から帰った八雲は、茉由と待ち合わせて南川ダムに行った。そこで八雲は自身の過去を振り返っていた。 八雲と小百合、二人は似たような空気…
「ちょっと走ろうか」 「いいけど、どこに?」 「星を見に行こう」 そう言って八雲は車を走らせた。茉由は黙って助手席に乗っている。車は北に向かって走っていた。郊…
【第七章『佳奈』-6】 茉由と佳奈は一緒に店に帰った。微笑んで二人を迎えた昇は、「どうです、ご一緒に」と佳奈を誘う。 「本気なの、佳奈さん」 そう言う茉由の耳…
【第七章『佳奈』-5】 佳奈が昇の店を訪ねてきた。来訪者が佳奈とわかると、茉由はドアまで走り、すぐ鍵を開けた。 「茉由さん。よかった、いたのね」と言った佳奈が、…
【第七章『佳奈』-4】 佳奈とのランチの後、茉由は隆夫の病院に行った。髪型が変わった茉由に隆夫は驚く。そんな隆夫の病室に八雲がやってきた。ついさっきまで佳奈と八…
【第七章『佳奈』-3】 佳奈の店でヘアドネーションに協力して髪を切った茉由は、初めてボーイッシュなベリーショートになった。細部を仕上げながら、佳奈が聞く。 「で…
【第七章『佳奈』-2】 隆夫から頼まれた本を探すため、茉由は病院からの帰りに本屋に立ち寄る。そこで偶然、美容師の佳奈に会った。 数年前、初めてヘアドネーション…
【第七章『佳奈』-1】 隆夫が目覚めた翌日、茉由は隆夫の病室を訪ねた。朝食を食べていた隆夫の痛々しい姿を見て、茉由の頬に涙が流れた。その流れる涙を拭くこともせず…
【第六章『病院』-4】 一旦自分のアパートに帰った八雲は、夕方まで仮眠を取った。見舞いを持って再度病院に行くと、八雲の訪問を茉由は喜んで迎えた。 「わかった、こ…
【第六章『病院』-3】 隆夫の無事を確認した八雲は、母親に労いの言葉を残して病室を出たが、母親に呼び止められた。二人は談話室で話をすることにした。 「ところで、お…
【第六章『病院』-2】 病室で茉由の事情聴取が行われた。一人では不安そうな茉由を気遣い、田澤は八雲に同席を促した。 父親の昇が病室に戻ってきた。事情聴取が終わ…
【第六章『病院』-1】 隆夫と茉由が集団暴行事件に巻き込まれた。旅先で田澤から事件の連絡を受けた八雲は、すぐ仙台に戻ってくると田澤のいる東警察署に行った。 「お…
【第五章『事件』-3】 集団暴行事件に巻き込まれた隆夫と茉由は、通報で駆け付けた田澤刑事らに助けられ、病院に救急搬送された。病院のベッドで目を覚ました茉由のところ…
【第五章『事件』-2】 立ち入り禁止の夜の埠頭で、隆夫と茉由は数人の男たちに狙われた。袋叩きにされながらも隆夫は鉄パイプを見つけ、それで反撃に出た。 茉由は目…
2024年4月25日 16:53
この子と過ごした三年間は、本当に充実した幸せな日々だった。 短い日々だと思ってしまいがちだが、長ければそれでいいということではないはずだ。所詮、時間などという概念は、人の猿知恵が作り出したものにすぎない。この子は自分の一生を精一杯生きたのだし、この子と一緒に過ごした日々は、何物にも代えがたい幸せな日々の連続だったのだから。 三年前のこの子との出会いは、運命以外の何ものでもない。この子はそ
2024年4月16日 17:20
【第八章『八雲』-3】 南川ダムで八雲と茉由は話をしていた。自分の気持ちを八雲に伝えた茉由だったが、八雲のイスラエル行きの決心は変わらない。「さぁ、もう帰ろう」 助手席に茉由を乗せ、八雲は南川ダムを後にした。 自宅まで茉由を送る。駐車場に車を停め八雲が外に出ると、店から女性が現れ、ゆっくり八雲の方に近づいてきた。「送ってくれたのね、ありがとう」 そう言って女性は助手席のドア
2024年4月16日 17:19
【第八章『八雲』-2】 東京から帰った八雲は、茉由と待ち合わせて南川ダムに行った。そこで八雲は自身の過去を振り返っていた。 八雲と小百合、二人は似たような空気を纏っていたのだろう。一緒に暮らすまで多くの時間は必要なかった。やがて二人は入籍し、昭夫を出産して小百合は母に、八雲は父になった。 家族ができて、孤独から抜け出したように見えた二人だった。事実二人は昭夫を中心に幸福な日々を過ごして
2024年4月16日 17:15
「ちょっと走ろうか」「いいけど、どこに?」「星を見に行こう」 そう言って八雲は車を走らせた。茉由は黙って助手席に乗っている。車は北に向かって走っていた。郊外の住宅地を抜け、県立図書館の横を通り、尚も八雲は北に向かって走り続ける。「どこまで行くの?」「南川ダム」 問いかける茉由に、八雲は目的地だけ言う。その「南川ダム」には一時間もかからずに到着した。八雲は資料館の駐車場に車を
2024年3月25日 14:26
【第七章『佳奈』-6】 茉由と佳奈は一緒に店に帰った。微笑んで二人を迎えた昇は、「どうです、ご一緒に」と佳奈を誘う。「本気なの、佳奈さん」 そう言う茉由の耳元で、佳奈が囁くように言う。「あなたは彼に電話してきなさい。遅くなったら失礼よ」「本当にもう、知らないからね」 そう言い残して、茉由は自分の部屋に行く。心配そうに茉由を見つめる昇を、佳奈は微笑ましいと思いながら見つめた。
2024年3月24日 16:57
【第七章『佳奈』-5】 佳奈が昇の店を訪ねてきた。来訪者が佳奈とわかると、茉由はドアまで走り、すぐ鍵を開けた。「茉由さん。よかった、いたのね」と言った佳奈が、驚いた表情で茉由を見つめる。茉由の瞳には大粒の涙が溜まり、いまにも流れ出しそうになっていた。「ど! どうしたのよ、いったい」 佳奈がそう言ったと同時に、「わぁ〜」と茉由が佳奈にしがみつき大声で泣き出した。「まさか!」「
2024年3月23日 13:57
【第七章『佳奈』-4】 佳奈とのランチの後、茉由は隆夫の病院に行った。髪型が変わった茉由に隆夫は驚く。そんな隆夫の病室に八雲がやってきた。ついさっきまで佳奈と八雲の話をしていた茉由は、八雲を目の前にして動きがぎこちなくなり、次の言葉が出ない。「あ、あ、あの、私、お茶買ってきます」 耐えきれず、茉由は逃げ出すように病室を出た。「どうしたんだ、アイツ?」「だから、私は『おじゃま虫だ
2024年3月22日 17:43
【第七章『佳奈』-3】 佳奈の店でヘアドネーションに協力して髪を切った茉由は、初めてボーイッシュなベリーショートになった。細部を仕上げながら、佳奈が聞く。「で、今は男いないの?」「うん……」「怪しいな~ いるんでしょう」「ちゃんとお付き合いしてる人はいないわ」「じゃ、ちゃんとではない人はいるんだ」「だから……」「話しなさい。昨夜、本屋で推理小説なんか探してた理由もね
2024年3月21日 17:34
【第七章『佳奈』-2】 隆夫から頼まれた本を探すため、茉由は病院からの帰りに本屋に立ち寄る。そこで偶然、美容師の佳奈に会った。 数年前、初めてヘアドネーションのことを知った茉由は、協力するべきか迷っていた。そんな茉由に佳奈はこう言ったのだ。「迷うわよね。でもね、ちょっとだけイメージしてみて。あなたが勇気を振り絞って寄付してくれるこの髪は、きっとそれを待ちわびている少女の一生分の笑顔にな
2024年3月20日 17:41
【第七章『佳奈』-1】 隆夫が目覚めた翌日、茉由は隆夫の病室を訪ねた。朝食を食べていた隆夫の痛々しい姿を見て、茉由の頬に涙が流れた。その流れる涙を拭くこともせずに、茉由はただ隆夫に頭を下げていた。「隆夫…… 本当にゴメンね、私のためにこんなになって……」「なに泣いてる、こんなのかすり傷だ。心配するな、すぐ退院できる」「だって……」「大丈夫だからもう泣くな。お袋が帰ってきたら、オ
2024年3月11日 12:53
【第六章『病院』-4】 一旦自分のアパートに帰った八雲は、夕方まで仮眠を取った。見舞いを持って再度病院に行くと、八雲の訪問を茉由は喜んで迎えた。「わかった、これからは気をつけるよ」「本当は恥ずかしがる歳でもないのよね」 そう言うと、茉由は八雲から離れベッドに腰を落とした。「何か……」そう言いかけて、「お茶でもと思ったけど、何もなくて……」と、申し訳なさそうに茉由は続けた。「
2024年3月10日 15:13
【第六章『病院』-3】隆夫の無事を確認した八雲は、母親に労いの言葉を残して病室を出たが、母親に呼び止められた。二人は談話室で話をすることにした。「ところで、お話というのは?」「はい……」 談話室に入ってから、母親は黙って椅子に座り俯いている。話の内容は予想がついていた八雲だったが、母親が話し始めるきっかけになるようにと、あえて聞いてみた。「大丈夫ですよ。隆夫くんに不利になるよう
2024年3月9日 14:49
【第六章『病院』-2】 病室で茉由の事情聴取が行われた。一人では不安そうな茉由を気遣い、田澤は八雲に同席を促した。 父親の昇が病室に戻ってきた。事情聴取が終わった田澤たちは病室を離れる。「また、何かありましたらお邪魔します」「私は隆夫くんの様子を見てきます」 八雲はこの時を逃すまいと、田澤の後を追いかける。「田澤さん、さっきの話だけど……」 談話室に田澤を押し入れて、八
2024年3月8日 18:01
【第六章『病院』-1】 隆夫と茉由が集団暴行事件に巻き込まれた。旅先で田澤から事件の連絡を受けた八雲は、すぐ仙台に戻ってくると田澤のいる東警察署に行った。「おう、昌ちゃんおはよう。早かったな」 警察署の受付で八雲は田澤を呼んだ、時刻は朝の六時を過ぎたばかりだった。呼ばれた田澤は眠っていない様子で、ボサボサの髪に無精髭という、ますます一般人からかけ離れた風貌で現れた。「徹夜組ですか?
2024年2月23日 17:01
【第五章『事件』-3】集団暴行事件に巻き込まれた隆夫と茉由は、通報で駆け付けた田澤刑事らに助けられ、病院に救急搬送された。病院のベッドで目を覚ました茉由のところに、その田澤刑事が来ていた。「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」「ま、我々はそれが仕事です。ところで事件のことですけどね、お話できますか?」「ごめんなさい、まだちょっと頭が混乱してて……」「そうですか…… では、もう少
2024年2月22日 11:26
【第五章『事件』-2】 立ち入り禁止の夜の埠頭で、隆夫と茉由は数人の男たちに狙われた。袋叩きにされながらも隆夫は鉄パイプを見つけ、それで反撃に出た。 茉由は目を開けることができなかった。「隆夫が私のために人を殺した!」そのことを直視する勇気が茉由にはない。茉由の意識はそこで途切れその後の記憶はなかった。「なんだこいつ! びっくりさせやがって!」 隆夫が振り落とした鉄パイプは、相手に