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【 短編 番外編】

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この二つの物語は、ちょっと不思議な世界が描かれています。 ある作家の物語を真似て、自分ならどんな物語にするだろうと書いてみました。
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【 自動ドア 】

 私は警察署にいた。いや、正確には警察署の駐車場で彼女の帰りを待っていた。  彼女の名前は菅野莉子という。地元ではちょっと名前が知れているルポライターだ。  私は夕方、その莉子に呼び出された。 「急ぎなの! すぐよ、大至急迎えに来て!」  いつも莉子は自分の都合を最優先する。こっちの都合などお構いなしだ。  何事かと驚いて迎えに行くと、 「泉警察署に行って」  慌ただしく車に乗り込み、そう私に言う。 「どうしたんだ、そんなに慌てて警察署だなんて」  そう聞く

【秋祭り ‐1】

「タマ、タマ、おねがい助けて……」  莉子は、またしても同じ夢にうなされて目が覚めた。 「どうしたんだ? 酷くうなされてたぞ!」  隣に寝ていた和樹も目が覚めて、莉子に声をかける。 「怖かった……」  裸の莉子は汗だくになっていた。 「怖い夢でも見たのか?」 「うん、怖かった……」  莉子は甘えるように和樹に抱きついた。 「大丈夫か? 少しワインでも飲むか?」 「そうね、ちょっと飲もうかな~」 「了解!」  そう言うと、和樹は裸の腰にバスタオル

【秋祭り ‐2】

  莉子は幼稚園児くらいの小さな三人の子どもたちが跳ね回るように走り回っているのを、違和感を感じながら見ていた。  その中の一人が急に立ち止まり、莉子をじっと見つめる。 「なに?」 「あのおねぇちゃんにしようかなぁ……」  莉子には、確かに聞こえた。お祭りの喧騒の中で、聞こえるはずはない小さな子どもの呟きが、なぜか莉子には、はっきりと聞き取れた。 「なにを決めたの? いやよ、気持ち悪い……」  そう思っていた莉子のそばに三人の子どもたちが走ってきて、莉子を中心に

【秋祭り ‐3】

 摂社神社の前で手を合わせ、なにかを唱えている少女の後ろ姿を、莉子は気味悪く感じながら見つめていた。  深々と摂社神社に頭を下げてから、少女は振り返り莉子を見つめる。そして洞窟の入り口を指差しながら言った。 「さぁ、ここからは一人で行くのよ」 「え! 私一人で行くの? 一緒にきてよ」  少女の言葉は、莉子に驚きと不安をいだかせた。 「それはできないのよ、私はもうこっちの住人なの」 「だって……」  莉子はその薄気味悪い洞窟に一人で入ることなど、とうていでき