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透明な水底の夢 ❘ 詩画集

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詩画集 ❘ 十代の透明な悲しみの断片。【絵:音羽しょうこ】
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記事一覧

専門書に載っていないことーー但し書き ❘ 詩画

専門書に載っていないことーー但し書き ❘ 詩画



切り傷の意味を、大人は知らない

私たちだけが、知っている

――言葉ではなく、理屈でもなく、感情だけで知覚していた

  理由をみつけることの難しい衝動の数々

  身体が言葉を見つけるのは、いつだって時間がかかる

詩:銀森そのみ 絵:音羽しょうこ

専門書に載っていないこと ❘ 詩画

専門書に載っていないこと ❘ 詩画



心が痛くて耐えられなかったから
心の痛みを別の場所に移植した

切り傷の意味を、大人は知らない
私たちだけが、知っている

詩:銀森そのみ 絵:音羽しょうこ

片思いの権利 ❘ 詩画

片思いの権利 ❘ 詩画



神様にお願いをする
私の ”好き” を奪わないでください

告げられなくてもいい
届けられなくたっていい
添い遂げられるなんて、思っていない

ただ、今はあの人を好きでいさせてください

神様、お願いです
私の好きを奪わないでください

詩:銀森そのみ 絵:音羽しょうこ

友情と同情と、その名を隠した感情と ❘ 詩画

友情と同情と、その名を隠した感情と ❘ 詩画



心を半分、あのこにあげた
問題をきいて、解決するために

時間も半分、あのこにあげた
悩みをきいて、慰めるために

「だって、親友だもの」という、それは大変に便利な隠れみのだった
実際、親友だったのだから、それはしごく当然なことだった

あのこは、左にいけば問題は解決するというところを
どうしても、右を選んでしまう
わかっていても、いつも右を選んでしまう

――つまるところ、私は肩入れをしすぎ

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十代の真実/ サイドB ❘ 詩画

十代の真実/ サイドB ❘ 詩画



私たちの恋は死に
私たちの心は死に
私たちは死んだ

心が痛くて耐えられなかったから
心の痛みをどこかに移植したくて、そして結果的に、私たちは死んだ

心が流した見えない涙は、あふれ、たまり、流れ、
一つの大きな泉をつくった
私たちは、そこに棲む

私たちの悲しみは終わらない

詩:銀森そのみ 絵:音羽しょうこ

十代の真実/ サイドA ❘ 詩画

十代の真実/ サイドA ❘ 詩画



私は死んだ
私たちは死んだ

私たちは恋をしていた
自分の全てを捧げてしまうほどの、大きくて熱い恋

その恋は、叶わなかった
私たちの恋は、叶わなかった

私たちの恋は死に
そして、私たちの一部も死んだ

私たちの心が流した涙は、あふれ、たまり、流れ、
一つの大きな泉をつくった
死んでしまった心のカケラは、そこに棲む

私たちは生きている
生きて人生を進めている

それでも、私たちの悲しみは終

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気付かれない失語症 ❘ 詩画

気付かれない失語症 ❘ 詩画



思考は、言葉になる前に消える
くちもとまで出かかって、わたあめのように消える

伝えたいことがあるのに
言葉に置き換えることができない

伝えたいことがありすぎて
どこから始めていいのかわからない

誰にも届かない
誰にも届けられない

たまった言葉は湖になり、私はそこに沈んでゆく

水の中ではもう、声を出すことも出来ない

詩:銀森そのみ 絵:音羽しょうこ

私はいつも私を裏切る ❘ 詩画

私はいつも私を裏切る ❘ 詩画



本当は知っている
知っていて、目をそらしているだけ

頭の中で考えなければ、言葉にならないから、
そしたら認めなくてもいいから、
だから、見ないふりをしているだけ

簡単なこと

いつだって、こうやって、私は自分をごまかして、
見つめたくないことから注意をそらす

そのせいで、心が思考に裏切られたと思うなんて、ちっとも考えもしないで

詩:銀森そのみ 絵:音羽しょうこ

感情に関する覚書 ❘ 詩画

感情に関する覚書 ❘ 詩画



その正体を知らないふりして
金色の小箱に閉じ込めて鍵をかけて水に沈めた

名前もつけず

本当は空に放ってやるべきだったのだ
鳥のように

詩:銀森そのみ 絵:音羽しょうこ