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創作物(詩)

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#詩作

【詩】人参主義99連発

  人参主義99連発

 1
日傘の下から
俺にこびを売っている
影まみれの黄色人種が
不都合なキャロットジュースを
うさぎのように飲み干して
鎮座しようと腕をくねらせ
歪んだY字を笑顔で演ずる

 2〜98


 99
差別趣味者のよだれを集めて
日傘の上へとそそがせよう

【詩】小便臭い救いの光が


小便臭い救いの光が
覚醒主義者を置き去りにして
夜の売女を打ちのめす


光の粒のふりをしている虫たちの通り道が俺の部屋で床を塞いでいる
発言権以外は何も行使できない虫たちのざわめきが
救われていくつもりでいる通り魔の
哀れみを誘っている

【詩】悪いやつらは、みな同じ

  悪いやつらは、みな同じ

足をもがれて地を這う虫が、
羽をもがれた羽虫を羨む。

手足をもがれた片輪の幼女の視界には、
羽をもがれた小鳥の他には誰もいない。

なんの悪気もない聾唖者が、
音を出さない壊れた鈴を
踏み潰す。

【詩】司書

  司書

表紙くらいしか汚れていない
誰も読まないビジネス書が
救うはずだった人生を
背負い込んでいる読書家たちが
増えていくのを目安に近づけ
図書館へ

人知れず焼かれ煙と化して
鼻腔をくすぐるはずだった
読む価値のない実用書に
挟まれ書棚に並んでいる
ノートをほんの何冊か
救い出すために
図書館へ

書庫であるという事実を除いて
知的な気配が少しもない
だだっ広い空間で
十年前のヒット曲を

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【詩】光線

  光線

俺の体から出る光の線が
壊してはいけない機械を
壊す

何本もの光の線が
傷つけてはいけない壁を
ひっかく

押してはいけないすべてのボタン
触れてはいけないあらゆるパネルはことごとく
見計らったかのように
光の線の先にある

俺の体から出る光の線が
残してはいけない跡を
束になって残しにかかる
読ませてはいけない跡を
束になって読ませにかかる
俺が生きてきた経緯すべてを
俺の代わりに

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【詩】子

  子

夜の鏡は
醜い娼婦にこびを売り
望まぬ姿を押し売りし
他人の良心以外のすべてを
拒む女を太らせる

朝の妊婦は
すすけた鏡にこびを売る

叩き割られた鏡の破片が
かつて映した醜い女と
同じ目を持つ子供の群れが
互いを見つめ
あわれみ合う

【詩】誰

  誰

誰に対しても逆らったことのない奴隷を俺だけのための玩具のように偽った罪悪感を蒸し返そう
冬らしくもないきせかえ人形ごっこには
許されがたさのかけらもない

通報先にしか通じない公衆電話の備品のように
誰を刺しても良い凶器

誰が殺しても同じだった死体の傷に指を突っ込み
ほじくり返して葬ろう
墓穴のような深い傷口
以外の何かを塞いだところで
替えのきかない玩具の数には
変化がない

【詩】怪人

  怪人

怪人たちが
悪巧みするついでに犬を殺していく

悪知恵を働かせる
ついでに犬を殺していく

悪事を重ねるついでに暇を
つぶすついでに刑吏に寝返り
人を助けて世を直す
ついでに犬を殺していく

怪人たちが
野放しにされるついでに押しかけ
飼い主たちを
火葬する