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自分を取り戻すための日記 55

2022.12.3 正念場

この三年間で多くの仲間が周りからいなくなった。
文字通り突然亡くなった人もいるし、コロナで仕事がなくなって田舎に帰った人もいるし、この業界を諦めてまともな正職に転職した人もいる。
精神的に追い込まれて鬱になって辞めた人もいるし、身体を壊して引退した人もいる。
急に姿を消して行方不明になった人もいるし、心配して何度連絡してももう繋がらなくなった人もいる。
多くの役者やスタッフが演劇界からいなくなった。
 
SNSでも毎日のように「俳優活動を停止します」「引退します」「体調不調のため無期限休養します」というお知らせを目にする。
知っている人もいるし、まったく知らない人もいる。
でも、その告知を目にするたびに、これはまったく他人事じゃないと思う。
私だっていつそうなるかわからない。
みんなギリギリなのだ。
 
最近、業界仲間が集まった時に必ず話題になる話がある。
日本のエンタメ界はもう終わっている。
古臭い慣習と政治とコネと誰かのつまらないプライドを保つためだけに世界が回っていて、良い作品をつくろうとか、世界中の人を幸せにしようとか、素晴らしい未来のために先行投資しようとか、まったく考えていない。
上にいる一部の人たちだけが大儲けしていて、現場の人間にはまったく正当な報酬が支払われない。
興行的な成功を目指しているならまだしも、一部の人間のご機嫌を取るためだけに、意味のない無駄なお金が湯水のように使われている。
どんなに頑張っても真面目に努力しても、ここでは正当な評価はされないしまったく報われない。
むしろ真面目に頑張れば頑張るほど、いいように使われて搾取される。酷い扱いをされて馬鹿をみる。
 
私がいる演劇界に関して言えば、コロナ前から日本の商業演劇は終わっていた。
公演中止や公演延期の相次いだこの大変な三年間を経て、少しは業界の体質も変わるかと、どこかで思っていた。
でも、まったく演劇界は変わらなかった。
30~40年前の古臭くカビの生えた価値観と常識で、未だに前時代的で封建的な組織を運営している。
相変わらず労働基準法違反で長時間休みなしで下は働かされているし、労働内容に見合った正しい報酬は支払われない。
むしろ「コロナで大変だから」という理由でますますギャラは下がってしまった。

相変わらずプロデューサーは現場の人間をバカにし、自分がやるべき仕事を下に押し付け、フリーは潰れたら使い捨てにされている。
それでなくても現場の人手が足りないのに、ますます人がいなくなった。
現場は大混乱している。
より少人数で、コロナ対策でやることが多くなった現場仕事を、ひとりで何人分もの仕事を抱え、馬車馬のように働きながら潰れていっている。
 
多くの有名作品を世に送り出したプロデューサーが、私たちのいる前で「潰れたら、また新しい人を探したらいいんじゃない?」と微笑みながらアシスタントプロデューサーに言い放つ。
まるで「パンがないならケーキを食べたらいいのに」と言ったマリーアントワネットのように。
マリーアントワネットは民衆の力によって、フランス革命で斬首刑にあった。
傲慢と他人の痛みを理解しない君主は歴史の中で断罪されて来た。
でも、日本では革命は起こらない。
何人死んでも古臭い芸能界のヒエラルキーと差別意識はなくならない。
地位と名誉と力が人権よりも命よりも尊重される世界。
 
私が夢見た世界はこんな世界じゃなかった。
 
スポットライトに眩しく照らし出される美しい光り輝く人の影で、死んでいく多くの仲間たち。
私もいつまで身体と精神がもつかわからない。
こんな状況でも私は何故まだここにいるんだろう。
私は何なんのためにここにいるんだろう。
それが解らないことには私はここから一歩も進めない。
 
これはエンタメ界だけの話じゃない。
あなたの会社でも地域でも社会でも同じことが起こっている。
あなたは何故いまそこにいるのか?
あなたは一体そこでなにをしようとしているのか?
 
目を反らさずに誤魔化さずに逃げずに向き合うしかない。
目の前の現実と、そこにある事実と。
怖くても見たくなくても。
いまそこから逃げたら、あなたも私も先には進めない。
いまが正念場だ。
 
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