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#音楽

フリクション「ライヴ・イン・ローマ」

フリクション「ライヴ・イン・ローマ」

聴いた瞬間に受けた衝撃の大きさという点でいうならば、もしかすると人生のうちで十指のうちに入るかもしれないくらいのものがあった。それくらいに最初の一音めを耳にした時点で、いきなりずどんときた(ザ・ジャムのファースト・アルバムはがつんだったが、これはずどんであった)。一〇代のあのころに時間を限定するならば、このライヴ・アルバムは間違いなくとてもとても重大な意味をもつ一枚であった。貸レコード店のG7から

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ナンバーレス・ランドを聞く

ナンバーレス・ランドを聞く

「実在と無数」(ナンバーレス・ランド考)

なんとなくフレーズやメロディの断片を思い出して、しばらくそれが頭からはなれなくなり、あとでユーチューブで聴いてみようかなと思う曲というのが、毎日の生活の中でぽこっと出現することがある。しかし、ほとんどはそこまで止まりであり、しばらくすると思い出したことすらすっかり忘れてしまっていたりする。だが、たまには思い出したことを忘れずに覚えていたりして、あとで本当

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20年代のアンビエント

20年代のアンビエント

20年代のアンビエント(序論)

不安ビエント(三)「不安だらけの世界とぐっすり眠れるアンビエント」

日常のアンビエント

今やもうアンビエントは、普通に日常的に広く聴かれるものとなっている。まあ、おそらく政財界の大物たちなんてのは多忙な毎日を生きているのでアンビエントなんて聴いていないんだろうけれど、専らわたしたちにとってはそれは日常的なものなのである。そして、多分そういうわたしたちは、政財界

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ネコ・ナイン「イゾラ」

ネコ・ナイン「イゾラ」

ネコ・ナインについて

これはネコ・ナインのアルバム「イゾラ」である。そして、ネコ・ナインにとっては約八年ぶりの新作である。アルバムとしては、11年にリリースされたファースト・アルバム「サマー・イズ・ユー」以来、約十一年ぶりのセカンド・アルバムとなる。これほどに長いブランクを挟みながらも、堂々たるニュー・アルバムのリリースをもってネコ・ナインが完全復活を遂げたことを、まずは喜びたい気分である。かく

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続・不安ビエント

続・不安ビエント



突如として世界を襲い、猛烈な勢いで地球上の隅々にまで広がり、そのまま世界を覆い尽くしてしまい、あちこちに良くも悪くも変化をもたらし、勝手に句読点やピリオドを打ち幕をかえてしまう。それがパンデミックというもののイメージである。目まぐるしく動いていた人間の(経済活動を中心とする)(ほとんど見せかけばかりの)活動は、見えないウィルスの大繁殖によって、みるみるうちにスローダウンしていってしまった。三

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日曜日の出口

日曜日の出口

日曜日の夜、ひとり椅子に座ってぼんやりと本を読む。目で活字を追ってはいるが、あまりその文章の内容はすっと頭に入ってこない。すると、テレビから聴き覚えのある音楽が流れ出す。大河ドラマのテーマ曲だ。「5分で分かる「西郷どん」」が始まった。深夜に、つい数時間前に見た「西郷どん」のダイジェスト版が放送されている。もうすでに見て知っている内容なので、読んでいる本に集中するためにテレビのヴォリュームを極限まで

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