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#tanka

2024年のうた (五月)

2024年のうた (五月)

2024年のうた五月

エマホイがひっそりひとりでうたった歌をひとりでひっそりと聴く

雨脚が強まり音も騒がしく蛙も鳴いて胸騒ぎする

どんよりとして肌寒い雨降りの日も沈む気分は沈みゆく

本を読むすべて忘れてしまうため何の役にも立たぬ抵抗

ちからなく腕をのばして指先で感じる紙の本の手ざわり

目の前に何もなかった頃のこと思いださせるまぶしい西日

エマリンどうか夢を諦めないできっと輝く星になれ

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2024年のうた 第一期 冬・春

2024年のうた 第一期 冬・春

2024年のうた第一期 冬・春

新年やまたふるさとが遠くなる二〇世紀は記憶のかなた

元日のポストはまるでオルゴールどこであけてもあけおめことよろ

かためを買った歯ブラシがあんまりかたくなかったのこれも時代か

力尽き年を越せずに一一時一一分で止まった時計

ごま煎餅をもらったひととあげたひと因縁のあるあの二人

つぎつぎと地震津波の情報が画面のうえで白くまたたく

百万の顔なき顔の虚ろな笑顔

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2023年のうた 第四期 秋・冬

2023年のうた 第四期 秋・冬

2023年のうた第四期 秋・冬

代々木の地下のミラーボールとスモークマシン「ラヴザライフユーリヴ」

シベリウス交響曲の四番が吹き抜けてったあとの静寂

自由民主の名のもとに塗り潰されて忌避された未来をおもう

これやこのさびしさこそはせつなけれそれともしらずながるる涙

雨の降る窓の外から午後四時になる帰りのチャイムあきはきぬ

銅鑼の音が宵と夜更けと明け方の情緒にあわせ響きをかえる

星はお

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2023年のうた 第三期 夏・秋

2023年のうた 第三期 夏・秋

2023年のうた第三期 夏・秋

終わらないこのレコードが終わらないヒステリックな侯爵夫人

なんかこう打ったその場で歩きだすホームランとか打ちたいきぶん

じょぼじょぼと高いとこから低いとこよごれはすべて海にじゃぼじゃぼ

びきびきと破線にそってふた月分のカレンダーめくりとる午後

まだ青い葉をめきめきとのばしてる稲が穂をだしふくむ文月

文月のおのずからふる雨のついたち神祗釋教戀無常

むしむ

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2023年のうた 第二期 春・夏

2023年のうた 第二期 春・夏

2023年のうた第二期 春・夏

ぼんやりと物思いする万愚節つみなき嘘はありやなしやと

四月馬鹿りちぎに用意した嘘を噴かすツイート眺めたりして

駅前で信号待ちをしていると頭のうえにまた飛行船

駅前のスクランブルする交差点見上げる先をビルがさえぎる

その先の道が見えてる春ならば散る花ですら目に楽しかろ

ひらひらり書いて消してのその後ろ桜吹雪がとめどなくふる

あの頃のリアルスティックどこい

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2023年のうた 第一期 冬・春

2023年のうた 第一期 冬・春

2023年のうた

第一期 冬・春

新年も代わり映えのせぬ朝なれど御慶御慶とだけ言っておく

Eテレの年の初めは短歌雅楽体操はさみ能狂言

雁鍋の二階の窓からぶっ放すそんな威勢のよい一年に

茶碗割れ数増えたのはめでたいが附子をあむあむ死んでお詫びを

阿弥陀の慈悲にぶら下がるイエスキリスト描き出す鯉昇の深み

元日も普段通りにぼんやりしててすぐに落ちゆく日なりけり

ライヴカメラで参拝客の頭上

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2022年のうた

2022年のうた

2022年のうた

2022年のうた

ああ馬猿この悪しき世に生くべくばむしろ狂いてあれと思いぬ

生きた心地もしない日々だがともかくもあなたまかせの年の暮れ

年の瀬の雉鳩の鳴き声をモールスで解読すると「タウタウ」

ぼろ切れのような手拭いくるくると封印された人情つつむ

文七を聞いたり見たりする大晦日ひとごとでない吾妻橋

遣る瀬ない思いとともに年を越し年を越しても遣る瀬ないまま

たくさんの

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