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掌編小説

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僕の書いた掌編のお話。なかなか明るいお話がないのはそれが書けないからです。それでも面白いと思ったらフォローお願します。随時更新されていくのでよろしく。
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記事一覧

平和

平和

今日もこの国は平和だ。争いも起きなければ、格差も存在しない。なのにどうしてここで生きるのは苦しいのか、それはもう死んでしまいたいくらいに。それでも生に縋りたい、いや縋らなければならない。なぜなら約束の期限はまだ過ぎていないから。少なくともあと100日は生きなければ。。。

今でもあの瞬間は現代映画のようなグラフィックを保ちながら、僕の脳裏から消えることはない。ここにも技術革新が存在するのだろうか。

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おいしかった

僕は大食漢なんて言われている。それもそうだ、僕は食べることが大好きなんだから。よくスイーツは別腹なんて言っている人がいるがとんでもない僕には別腹なんて必要ない。なんていったって僕は満腹を感じたことがないのだから。だから僕は今日も昨日も一昨日も、明日も明後日も食べる。

というかそもそも別腹なんてものは存在していないだろう?そもそも人間には本当の意味での満腹は存在しないらしい。脳が満腹と感じるのは胃

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飽き性

俺は飽き性だ。本当になんでもすぐに飽きてしまう。ゲームも、勉強も、何もかも、すぐに飽きてしまう。

この前だって、友達?みたいな存在のやつに
「このゲーム絶対はまるからやってみ」なんて言われたけれど、今はもうやってない。

なんでこんなに飽き性なのかとも思ったが考えてみても思い出すことは叶わない。少しだけボンヤリと、それでも霞がかって、はっきりと輪郭を見出すのは困難なのだが、一つだけ確かなことがあ

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死者の声

夏も真っ盛りになり、蝉の喧騒も幾分か慣れてきたような気がする。まったくあいつらはとんだブラックな働き方をしているな、と思いながらも皆はその存在をうざったく感じる。ブラックなのに社会貢献も出来ていないのか...ほんとに大変だな。

そういえばそろそろお盆の時期だ。お盆になれば俺は毎年全国のお墓にめぐる。なんでかって?俺にもわからない。

お墓に向かう途中、白い綿あめのような雲が空を覆った瞬間、その雲

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猫

我輩は猫である。ここにいる人間どもは我輩のしもべのような存在だ。 なのにこいつらは我輩のことを自由だ、なんだ、という。本当にけしからん。我輩だって仕事は存在する。ほれ、このように人間どもの相手をせねばな。これは非常に難しい。寄ってばかりではなく時に離れたりと駆け引きが重要なのだ。
人間にはわからんが。しかも近所付き合いにも疲れたものだ。明日からあの角は使えない。全くもって大変だ。生まれ変わるなら我

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俺は雨は嫌いだ。あのうるさい音、曇天とした空、まるで地球が泣いてるみたいなんて言うが、まさに言いえて妙とはこのことだろうか。いや実際泣きたくもなるのだろう。

そうでなくとも人間は一生の内、16カ月は泣いているらしい。そして涙が流れるときは3つに分類できる。それは感情、刺激、正常化の三つだ、これはあくまで専門語ではなく、俺が名付けたものだが、最初の二つは分かるだろう。正常化とは目の保護や栄養の補給

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殺人ドッキリ

やってしまった、ついにやってしまった。目の前にはまるで別人のように見えるあいつがいる。

手には今まで感じたことのないような感覚が残っている。まるで初めて盗んだレモンを手にしたようなあの感覚、いや小さなころ蟻を虫眼鏡で焼いた時のような感覚だろうか。いや違う、決定的に何かが違う。

深紅に変わった部屋の景観は、白かった壁を塗りたくり、残った白さえも森林の如く感じさせる。

俺にこれからどうしろという

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信用通貨

カサカサと落ち葉を踏む音が外から聞こえる。今年の冬は厳しいだろうか。
「おい、帰らないのか?」
僕は呼ばれた方を振り返った。
「うん、まだやらなきゃいけないことあるから。」

「そっかー、生徒会長はやっぱり大変だな。
ところでさ、この世で一番お金を稼げる方法はなんだと思う?」

こいつは資産家の息子だ。だからだろうか何かとお金の話をよくする。
でも俺は嫌いじゃない

「んー、やっぱり企業して、すご

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錯誤

「人ってどうして同じ過ちを繰り返すんだろうね」
息子の声が鼓膜に響いた。
咄嗟に目を反らしたがその先にあったのは妻の写真だった。

どうしてこんなことになったのだろう。
どんな小説も無意識に作者の性格が表れるように、自分を偽ることはピエロにならない限りできないのであろう。

どんなに取り繕っても事実は変わらない、
それでもあのときあんなことをしてしまったのは本当に自分たちから離れて欲しく無かったか

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屋上にて

私の目の前はいつまでも暗いままだ。

だからこんなところにいるのだろう。
何もできなかった自分を終わらせるために。

「もう諦めてよ、人生はとても長い、だから,,,」
「諦めないよ、人生はとても長いからね。」

私は「死なないで」って言葉は嫌いだ。死ぬ事だって一つの選択肢じゃないか。なのに何も知らない人間がそんな言葉を簡単に吐く。

彼は私を熟知してるのだろう。だから私は彼に問いかけた。

「君は

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探偵

探偵

俺は探偵だ。日々依頼者から依頼をもらい様々な仕事をこなす。世間では探偵は華々しく事件を解決しているイメージかもしれない。俺もそう思っていた。

この世にはそういった仕事をこなす人間もいるのだろう。

少なくとも俺じゃないが。

昨日は浮気調査のために張り込み、そして誰も知りたくないようなことを 知った。俺たちは金のため、依頼のためならどんなこともする。

警察なんてこっちから願い下げだ。

よく週

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