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【読書ノート】42 「トランジション ――人生の転機を活かすために」

1980年に出版され現在まで版を重ね読み継がれているロングセラー。このような人生の転機に関する本を初めて読んだので学ぶことが多かった。トランジション(転機)は変化と異なり、「終わり」「ニュートラルゾーン」「新たな始まり」により構成されており、多くの人が経験する。これはつまり通過儀礼であり、多くの神話でも描かれてきたこと。筆者はオデッセウスやオイディプス王など有名な神話を例に挙げて説明しており、様々なことが腑に落ちた。多くの人に読んで欲しい優れた内容。

トランジションとは、 自分自身の心の内なる 「ニュートラルゾーン」から何か新しいものが生まれてきたとき、あるいは、そのまわりにあなたが新しい人生を築いていけるような何かが生まれてきたときに終わる。「 生まれてくるもの」とは、 新しい仕事ではない( それは単なる変化である)。 「生まれてくるもの」とは、事故に対する新たな感覚、あなたが対処する新たな 現実、 前進させる新たなアイディアである。

p145

「このように見てみると、トランジションは道路を横切る時に似ている。必要以上に長い間、道の真ん中にとどまるのは馬鹿げている。いったん歩道から降りたら、できるだけ早く反対側へ渡ることだ。どんなことがあろうと、 センター ライン上に座り込んで考えることをしてはいけない。 確かに、トランジションは多くの困難を伴うものだ。 ただし、そう考えても、「終わり」に伴う苦痛が消えるわけではない。 なぜなら、我々はこの苦痛は、そもそも 初めから、この道を横断すべきではなかったということを示しているものではないかと考えてしまうからだ。
同様に、しばしば 生じる喪失感 や、空虚感 が未来永劫に続くような感じも受け入れがたい。「だが、ちょっと待って。道の向こう側に欲しいものがあるんじゃないか」。 トランジションは自己再生の鍵でもある 。恐ろしい場所を苦労して渡った後には、「必然的に」自己再生が起こるのである。

p195

「過去」として 思い出されるのは、実生活のごく一部である。 膨大な過去のほんの一部を抜粋して、それによって「現在」を説明しようとするわけである。・・・現在を変えようとする場合でも、その変化の可能性と限界を規定するのは過去なのである。
このように、トランジション中に過去を顧みることは、多くの理由で意義がある。なかでも、新しい現在の視点から見ると、過去がかなり異なって見えるということは重要である。 過去は、そこにただ存在する風景や花瓶のようなものでなく、むしろ、創作者を待っている素材なのである。

p212

(2023年5月17日)

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