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五月雨、噎び泣く【3】
◆弐◆
優しく微笑んでくれていた母がいない。
あまり逢えなかったけれど、それでも同じ空の下で生きていてくれることは、幼い靖秋にとって大きな拠り所だったのだと、母が死んでから理解した。 胸のあたりにぽっかりと穴があいてしまったみたいで、靖秋は来る日も来る日もぼんやりと過ごしていた。
いっそ、屋敷を飛び出してしまおうか。
頼れる人もいないけれど、それでもこの窮屈で空虚な屋敷にいるよりは随分
小説を書くための思考を学ぶ
ここ5年ほど趣味でネット小説というものを書いてきました。
もちろん趣味なので本格的に勉強したこともないし、ハウツー本も読んだことがありません。
経緯として、同人誌即売会で販売し、ちょっと自分の力を試したくなってボーイズラブの出版社に3回ほど投稿してみたのですが、すべて「優秀賞」の一歩手前でデビューには至らず。A+評価やB評価など、その選考の中では上の順位のほうにはいるのですが、やっぱりトップは
今年は様々なジャンルの本を年間で80冊読む!
今更ですが2016年の抱負。
五月雨、噎び泣く【2】
あれから約十二年。
靖秋は此の屋敷へ来てから、一度も外へ出たことがない。最後に屋敷の外に出たのは、母の葬儀の日だった。
母・花江は七歳の時に靖秋を残し、突然他界した。
原因は過労だと聞いているが、母の身体にいくつもの痣や縛られたような痕が残っていたことを靖秋は知っていた。そしてその疵をつけた相手が埜耶の母・綾香である事も幼いながらに理解していた。
しかし、知っていたからとて、靖秋に何が出