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#SF
『ひとりぼっちの土俵戦争』
パンッ
乾いた柏手の音が住宅街へ響き渡る。深夜0時。静止した時間の中で塩を打ち力水を啜る。満月が煌々と照らす十字路の中心で大横綱・不二子藤が蹲踞して今宵の対戦相手を睨み付けた。その対戦相手とは、大横綱・不二子藤その人である。
二人の不二子藤が同時に拳で地を突く。未だ取り組みは始まらない。両横綱は値踏みしあい、取組相手が己と同じ力量であることを見抜く。
いままで土俵上で己(オレ)に勝てる相手は
俺と横綱の無限土俵 ~世界一短いタイムリープ~
初顔合わせは上手投げにて瞬殺。
十五戦にして叩き込みで初金星。
撒いた塩が煌めく。満員御礼の熱気が肌に伝わる。
現人神の存在感が世界を塗り潰す。
発揮揚揚!
やられた!思った時には既に廻しを引かれ、よろめくことすら出来ない。数秒の攻防、天地逆転。
これじゃダメだ。これじゃ――
幻の決まり手、襷反りに敗れたのは三十ニ番目。
撒いた塩が煌めく。満員御礼の熱気が肌に伝わる。
直前の対戦を
現人神、三千四百二十二代横綱は大トロ切り身概念の夢を見るか
横綱が寿司職人であることは周知の事実であり、当然のことながら、小結とはおむすびを完璧に作れなければ就けない役職だ。一般教養としての日本史を中学校で習っていれば、良い飯握ろう粟稗五穀という言葉にも慣れ親しんできたことだろうと思う。
人類が滅亡して久しい今でも、横綱は寿司を握り続けているし、それを合掌捻りで宇宙へと送り出している。横綱とは神であり、準ずる立場の大関、関脇、小結、前頭――土俵上でぶ
全時代的連続横綱殺人事件
四股踏みによるテラフォーミング。外宇宙力士の撃退。核汚染の浄化。偉大なる横綱、鳳乃鷲は同時に邪悪な横綱としての側面を持っていた。
八百長――力士の星操作は勝敗の結果だけではなく、自然災害、宇宙航行の安全、その他全てに関わりがあり、反抗的な力士は鳳乃鷲によってヤマへ送られた。
「発勁用意」
「発勁用意」
表向き、鳳乃鷲は偉大なる力士だ。野試合を断ることなどない。そして全盛期は過ぎたとは
ヨコヅナ・フォートレス (邦題:横綱要塞を突破せよ)
心技体、そして霊。
人は知る由もないが、力士の身体にはニューロンの速度で動き回る小さな精霊「角霊」達が宿っている。猛き力士には角霊が集い、角霊に愛されし力士は力を得て横綱となる。この循環により、我が国の五穀豊穣は保たれて来たのだ。
だがある時、大関「鬼乃若」に宿る角霊の1人が取組中に発狂。多数の角霊を殺傷せしめ、力士管制は崩壊。力を失った鬼乃若は受身を誤り長い休場を余儀なくされた。さらにその角