マツモトキヨシ

三姉妹の賢い末の子

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    ヘチカチの木(冒頭1200字)

    資料b  A県Y郡H村には「へちかち原」と呼ばれる広大な枯れ野がある。半径1kmに及ぶこの地には作物はおろか雑草の類すら生えず、土地の者には忌み地として敬遠されている。しきたりによって「へちかち原」の中に住居が建てられることはなく、人通りも猟期に土地の者が足早に横切っていくのが見受けられる他は絶えてない。 「へちかち原」の全体はなだらかな峠になっている。峠の頂上から少し西側に外れた地点がちょうど中央に当たるが、そこには何かを燃やしたような黒い焦げ跡が残っている。言い伝えに

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      • アリババとロックダウン

         台車に乗せて運んできた金塊を交差点のド真ん中にぶちまける。山と積まれた金塊の上に腰を降ろしてライフルを構える。道路の先に火花と稲妻を伴って現れるが早いか、駆けてくる略奪者に向けてライフルを撃ち放つ。弾が当たると略奪者はロウソクの燃え残りみたいにグズグズとくずおれて消えた。  相手が撃った弾は俺の足元の黄金に当たって甲高い音を立てた。その余韻が消えるのを待って、俺は無線機に思いっきりがなり立ててやった。 「こちらフラグメント胡麻(シムシム)。『アリババ』だ。どうした! 近

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          君島大空『縫層』が良い感じだ

          昨年デビューのSSW君島大空がつい先日リリースした『縫層』がとても良い!アコギを核とした宅録スピリット溢れる痛快な電子音の大洪水。それが全7曲だ。この頃新譜を出すのは気合の入ったアーティストばかりだが、例に漏れず君島大空がポツポツと出す新曲はどれも冴えていた。今回のは言わばその集大成だ。イノセントさを前面に押し出しつつも開かれた雰囲気と、単なる小洒落た印象に終始しない楽曲のアイディアの秀逸さ、そして楽しさとエモーションがある。YOUTUBEで全曲視聴可能だ。7曲とも聞いてほしいが特に『笑止』『縫層』がいいぞ。来月には配信ライブも行うそうだ。チェックだ。

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          • 落日の死影

             関東大震災の翌日、瓦礫の散乱する浅草の路上にて、異形の怪物と立ち会う男の斬り飛ばされた左腕が瞬き一つする間にピタリと元通りに着いた理由なら在る。  着いた左手は右手と共に大鉈の柄を握って異形に斬りかかった。後ろ足で立つ獣のような異形の前で、今度は男の右足がひとりでに切り取られて落ちた。転倒するかに見えた男はしかし異形の胴を袈裟斬りに斬り降ろしている。身体が軽くなるのを補うための重たい鉈だった。  男の落ちた足はフィルムの逆回しのようにして、やはり元通りに治った。斬られた

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            • 西へ向かう三蔵

               春先に斉天大聖が街に戻ってきた。どこもかしこもその噂で持ちきりだった。 「それじゃ頼みの綱のボーイスカウトですら除隊になったわけだ」猪八戒が言った。 「パパが言うにはね」  なんでも脱走して地の果てまで逃げたつもりで、立ち小便をしたところが釈迦の手のひらの上だったらしい! そう僕が話すと猪八戒は汚ならしい声を上げて笑った。 「お前ら」僕らの座るテーブルへ、店の制服姿の沙悟浄が来た。「ポテトとコーラでいつまで粘るつもりだ。食い終わったら帰れ」彼は放課後をほとんどアルバ

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              • 竜とロックダウン

                 台車で運んできた金塊を交差点のド真ん中にぶちまける。山と積まれた金塊の上に腰を降ろしてライフルを構える。五十メートル先にグリッチを伴って現れるが早いか、駆けてくる略奪者に向けて弾丸を撃ち放つ。命中。略奪者はロウソクの燃え残りみたいにグズグズとくずおれて消えた。  俺は無線機に思いっきりがなり立ててやった。 「こちらフラグメントゼロ、『悪竜』だ。どうした! せっかく目につくところにお宝を置いてるのに近ごろ元気がないぞ! オーバー!」切った後無性におかしくなり、腹を抱えて大

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                  Shaolin Monk Motherfunk

                  Shaolin Monk Motherfunk

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                  • Fallen Monk Deadhack

                     死人月計算は覚えれば簡単だ。呪われたアプリの霊障で月に何人死んだかを表している。わかると思うが多いほどヤバい。 「そんなにヤバいですか」と国木田社長。 「ヤバいですね。平均六死人月も異常だがコイツはソースコードからして危険だ」俺はディスプレイを指し示した。そこに「死」の文字に囲まれた『警告:この先レビューするべからず』のコメントがあった。 「いいですか。今からこのコードを実行しますよ」俺は社長に念押しした。相手は怪訝な面持ちだ。自社サービスのユーザーの相次ぐ怪死に恐れ

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                    • 実話怪談:廃墟の怪

                      ネットで心霊スポットや怪談なんかを漁っててよく見る言葉に「心霊スポットで本当に危ないのはそこにたむろしてる地元の不良」っていうのがあって。 心霊スポットっていうのは大多数が郊外の廃墟だから、特に夜中に肝試しのつもりで行くと、ガラ悪いのが集まってて心霊現象どころじゃない物理的な身の危険があるっつう話なんだけど、経験者に言わせるとこれはガチ。 そもそも奴らはそこが心霊スポットだと思ってない。ネット見ないし、学校にも行ってないから。灰皿がないだけの喫煙所くらいにしか思ってねんだ

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                      • 拙作( https://note.com/kiyoshi_matzmoto/n/n74ed316bb143 )が第一回かぐやSFコンテストにて選外佳作となりました。有難うございます。某羅生門(好き)が流行った後で二番煎じの浅慮ととられないか心配でしたが、できた物がそれどころでなく浅はかだったので安心して出せました。悲喜こもごもです。

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                        • 動けメロス(加筆版)

                           高田はため息をついた。とびきり物わかりの悪い生徒たちに対して、高田に与えられた時間は午後の日没までの一時間だけ。彼はその一時間のうちに、予定されたカリキュラムを終えねばならない。  白壁の通路を歩く高田の足取りは重たい。扉の前で立ち止まって呼吸を整え、傍らの機器にカードをかざすと音もなく戸が開いた。中にいた生徒のうち、人の姿をとって座席についているのはほんの一握りだ。大半はゲル状であったりそばにあった机の形を真似ていたり、思い思いのアバターで壁や天井を這いまわっていた。

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                          • 方舟と根絶やしザメ あらすじ:地上の全動物と全人類が眠る方舟。そこで突如動物たちが目を覚まし、殺された。寝ずの番たるギルガメシュはロボットのエンキドゥと共に調査に当たるも、犯人をサメだと決めつけてしまう。報告に危機感を覚えた残存人類は目覚めようとするも失敗。その頃船上にはサメが。

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                            • 方舟と根絶やしザメ Part.2

                               ギルガメシュは部屋の中央へと歩み出て、おもむろに群衆を見回した。賢者の間を擁する建屋の延べ床面積は一億十万六千二百平方メートル、天井までの高さは二万メートルあまり。地上の全人口の収容してもなお余りある大きさだ。基底部に灯された僅かばかりの蝋燭の明かりが奇妙にも部屋の隅から隅までを照らしている。 「王さま、どうぞこちらへ」  車座になった座席の中から一人の女が進み出た。巫女と呼ばれる人物で、賢者の中でも非常に特異な立ち位置を占めている。彼女は奥にある籐椅子を指し示した。ギ

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                              • 方舟と根絶やしザメ Part.1

                                 ギルガメシュとエンキドゥはそれはそれは広い舟の甲板を歩いていた。周囲には陸地さながらに鬱蒼と木々が生い茂っている。これは地上が水没した際にありとあらゆる樹木を船上に収容したためで、おかげで甲板にはほとんど足の踏み場がない。  先を行くエンキドゥは行く手を阻む枝を時に手折り、時に手にしたつるぎで切り落とし、盛大に樹木を破壊しながら道を切り開いていく。足元で蔦が絡み合っていようものなら強引に足で引きちぎってしまう。二人が通った後には寸断された枝や掘り返された根が無数に転がって

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                                • 俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた

                                   俺の家に聖火が一時的に安置されることになって半年が過ぎた。誰が決めたわけでもない。成り行きでそうなったのだ。あれは四月のある晴れた日のこと、俺は朝早く近所のゴミ置き場にゴミを出しに行った。俺はいつも朝は早くに起きて仕事に行くのだが、ゴミを出す日には特別早く起きる。そうすれば近所の住人と顔を会わせずに済むからだ。  俺がゴミ袋を持ってアパートの二階の部屋から外に出た時、まだ東の空には日が出ておらず、空の色だけが夜明け前の藍色をしていた。ゴミ置き場はアパートから少し離れたとこ

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                                  • noteの短文コンテスト「一駅ぶんのおどろき」で拙作『ペイケガニ』が入選しました。webマガジン『カドブン』に掲載されておりますのでこの機会にご覧になってはいかがか。1000文字弱のショートショートです。 https://kadobun.jp/serialstory/ossp/2kdpdn3dtt0k.html

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