ヤバいパルプ

方舟と根絶やしザメ あらすじ:地上の全動物と全人類が眠る方舟。そこで突如動物たちが目を覚まし、殺された。寝ずの番たるギルガメシュはロボットのエンキドゥと共に調査に当たるも、犯人をサメだと決めつけてしまう。報告に危機感を覚えた残存人類は目覚めようとするも失敗。その頃船上にはサメが。

方舟と根絶やしザメ あらすじ:地上の全動物と全人類が眠る方舟。そこで突如動物たちが目を覚まし、殺された。寝ずの番たるギルガメシュはロボットのエンキドゥと共に調査に当たるも、犯人をサメだと決めつけてしまう。報告に危機感を覚えた残存人類は目覚めようとするも失敗。その頃船上にはサメが。

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方舟と根絶やしザメ Part.2

方舟と根絶やしザメ Part.2

 ギルガメシュは部屋の中央へと歩み出て、おもむろに群衆を見回した。賢者の間を擁する建屋の延べ床面積は一億十万六千二百平方メートル、天井までの高さは二万メートルあまり。地上の全人口の収容してもなお余りある大きさだ。基底部に灯された僅かばかりの蝋燭の明かりが奇妙にも部屋の隅から隅までを照らしている。 「王さま、どうぞこちらへ」  車座になった座席の中から一人の女が進み出た。巫女と呼ばれる人物で、賢者の中でも非常に特異な立ち位置を占めている。彼女は奥にある籐椅子を指し示した。ギ

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方舟と根絶やしザメ Part.1

方舟と根絶やしザメ Part.1

 ギルガメシュとエンキドゥはそれはそれは広い舟の甲板を歩いていた。周囲には陸地さながらに鬱蒼と木々が生い茂っている。これは地上が水没した際にありとあらゆる樹木を船上に収容したためで、おかげで甲板にはほとんど足の踏み場がない。  先を行くエンキドゥは行く手を阻む枝を時に手折り、時に手にしたつるぎで切り落とし、盛大に樹木を破壊しながら道を切り開いていく。足元で蔦が絡み合っていようものなら強引に足で引きちぎってしまう。二人が通った後には寸断された枝や掘り返された根が無数に転がって

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アルフォンス・ミュシャ:死季

アルフォンス・ミュシャ:死季

 これがミュシャか――暗殺者はそう思った。ひび割れたような肌の深い皺に、柳の枝を思わせる長い髭。藤椅子に浅く腰掛け、現世を忘れたかのごとく微睡んでいた。初代ボヘミア皇帝にして最強の魔術師、アルフォンス・ミュシャは当年とって79歳になる。  燭台が照らす暗い広間の隅で、殺し屋は肩透かしを食ったような気分で短刀を手に取った。そしてその瞬間、自分が死地の只中にあることを知った。 「解れよ」呆けたように開いた老人のくちびるが、ひどく緩慢な動きで言葉を発音せしめた。暗殺者が振るった

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方舟と根絶やしザメ

方舟と根絶やしザメ

 ギルガメシュとエンキドゥはそれはそれは広い船の甲板を歩いていた。周りには陸地さながらに石造りの小屋が並んでいるが、これは神命を受けて作られた方舟がひとりでに増築を続けているためである。出航した始めの日には大通りが、二日目には上水路が、三日目には下水道が整えられた。事態が変化を見せたのはそれからだ。 「それで」ギルガメシュが言った。「アンフィスバエナはどうなった」 「殺られタ」エンキドゥが答えた。泥をこねて作った頭はちょうど桶をひっくり返したかのようで、その中央でモノアイ

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死の翼ふれるべし

死の翼ふれるべし

 立ち並ぶ煙突が薄暗い煙を吐いていた。  煙は一団となって宙を流れる。その一部は空に薄く広がって月を隠し、一部は寝静まった家並みの屋根の上に垂れ落ちる。工場地帯の西には名だたる探偵たちが葬られたピラミッド群の天を衝く威容があり、煙はその中腹に当たって二筋に分かれる。煙から突き出た先端部だけが月光を浴びて輝いている。  ピラミッドのふもとは、一帯が背の高い生け垣で仕切られた迷路じみた庭園になっていた。その街路に面した門の前に、二人の若い男がさりげなく、しかし人目を忍びながら

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地龍VS事故物件

地龍VS事故物件

 結局のところ、誰も地龍には敵わない。歴史がそれを証明している。  ある日突如として現れた怪物を前に現代兵器は軒並み歯が立たず、ついにこの国は巨獣に首都を明け渡すに至った。今日では地龍と呼ばれるこの個体は、ビルをなぎ倒して作ったねぐらに悠々と身をうずめている。吠え声は大地を揺るがし、戯れに尾で撒き上げた土くれが砂塵となって人々の疎開先に降り注ぐ。地龍はまさにこの世の王だった。  今廃墟と化した東京を、猛烈な勢いで駆ける一台のジープがある。監視衛星によれば、地龍は8km先の

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名もなき村のああああ(試験版400文字)

名もなき村のああああ(試験版400文字)

 名前が欲しかった。燃え盛る木の枝を飲み込んだから<火食い>とか、塔の上で30年暮らしたから<塔暮らし>とか、そんなんじゃなくて、きちんと名付けられた名前が。  大気が震えるほど荒い息を吐きながら、蹄で地面を蹴って飛び掛かってこようとしているのはハネボウキの亜種。ハネボウキは蹄のある四つ足のバカでかい鳥だが、コイツはさらに額に角がついている……まあ、見た目はどうだっていい。大事なのはコイツに名付け親がつけた名前があることだ。その名も――「アアアアア!」  けたたましい鳴き

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