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家具の物語

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工房へ届く修復される家具たちの物語。同じものがひとつもないアンティーク家具の世界は深い!
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#海外生活

お宝出てきた。Jacob & Josef  Kohn

お宝出てきた。Jacob & Josef Kohn

曲木の椅子でよく知られているのはトーネット社。
この名前は世界で曲木の椅子の代名詞として知られています。
無垢材を蒸気で曲げて大量生産できるタイプの椅子で、
座面の多くは籐を編んだものでできていることが多いのが特徴でもあります。

曲木技術は座面の縁、背や脚と全てのパーツに見られることもありますが
そこから派生して
座面のみ、または座面と脚のみ、など、いろんなデザインを可能にした技術です。

修復

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停電したシャッター

停電したシャッター

久しぶりに工房日記らしい話です。

クリスマス休暇が始まった初日。
工房へ行くと
仕事熱心な角の肉屋のおっちゃんが外でタバコ吸ってる。
手前のカフェもなんか変。
バイク屋のチャビィが
「電気ないよ」って

ええぇ!?

停電!?

工房の前まで行くと隣のカーテン屋のおじさんがトウセンボして
「通行料金いただきます」
とか、また古典芸能なギャグをかましてきた。
「停電してるの?」って聞くと
「停電、

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修復の師匠・フリア

修復の師匠・フリア

自分の工房をスタートして3年が経ちました。
今日は原点からの振り返りとして修復の世界への出会いを。
元々は職業訓練学校の大工コースからスタートしたんですが

その辺りの流れはこちら↓

職業訓練学校のコースでは2年目の後半、実習研修がカリキュラムに入っています。学校が斡旋してくれる木工関係の職場で半年ほど研修をします。
が、
学校から紹介される先はたいていが、出来合いの建具を組み立てに行ったり合板

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アルメリアへ800km運んだガラスショーケース

アルメリアへ800km運んだガラスショーケース

また回帰録。
一昨年の夏の話。2021年。
ガラスショーケースはもっと遡って2017年くらいから始まるお話。

ボロボロで、飾りが欠けていたり、
引き出しの鍵がかかったままで開かなかったり、と
工房オープンより3年前、修復活動を再開した当時、なんだかハードルが高そうでなかなか手が出なかったショーケースです。

しかしながらガラスが完璧だったし虫喰いもそんなにひどくない。
マホガニーではないけれどマ

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60個のボタンに込めた姉妹愛

60個のボタンに込めた姉妹愛

ウベコ工房が気に入ってるアイデアの中に、縮緬端切れで作ったくるみボタンがあります。

チェスター風に椅子を張ったりする時のボタンにしようと思いつき、デニム地にこの色華やかなくるみボタンを合わせてみたりしてます。

ちりめんくるみボタンでデニム張ったチェアのエピソードはこちら↓

その時に余った素材で小さな額を作り、サンプル感覚で店に飾ってあります。

ある日、それを見たお客様が飛び込んできて、

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2m20cm、150歳、工房史上最大サイズ 

2m20cm、150歳、工房史上最大サイズ 

市の遺産になっているお家の家具修復の回顧録です。
このお家の一番の年長者はこちらの記事にも買いた150年越の書斎キャビネットでした。

詳しいお話はこちら。

が、

もうひとつ、多少パーツが足りていないものの同じくらいの年長者がいます。
それが高さ2m20cmのこちら。

すでに何回も手を加えられた様子が見られます。
虫喰い処理はもう数回されているみたいだし(穴を埋めてあるパテの色にいろいろ違い

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自分にしかできない仕事・魔女の宅急便に教えてもらった見つけ方 ウベコ工房自己紹介

自分にしかできない仕事・魔女の宅急便に教えてもらった見つけ方 ウベコ工房自己紹介

私は現在、スペイン・バルセロナの郊外の小さな町でアンティーク家具の修復工房を運営しています。
工房をオープンして一年が経ち、少しずつ町にも馴染み、お客さんも増えてきました。
スペインで暮らすようになって今年で19年。
40歳でやっと「これが私の仕事」と心から言える仕事を得ました。
これまでにも様々な仕事を日本やスペインで経験してきましたが
今感じている、「これ!」という感覚は一度も感じたことはあり

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孔雀の魔除け椅子。玄関に是非。

孔雀の魔除け椅子。玄関に是非。

ウベコ工房の活動の一環としてリサイクルアート、と言っては申し訳ないくらいのクオリティの着物を使ったミックスカルチャープロジェクトがあります。日本の箪笥で眠っているたくさんの着物に別大陸で活躍の場を見つけるというものです。

着物を着るものとしてだけでなく、インテリアのなかに日本文化のカケラとして楽しんでもらえるといいな、と考えて生まれたのがそもそもの着物椅子プロジェクトです。

海外に着物ファンは

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16世紀のおうち

16世紀のおうち

お仕事の話というのは一体ぜんたいどういうことで私の元へ舞い込んでくるのか。
InstagramなどSNSは多少利用しているけれど
どちらかと言うと備忘録・ポートフォリオ的に使っている感じで集客活動というのはほとんどしていません。
物理的にオンラインでできるような仕事ではないので、オフラインの地域密着式の方がお仕事は入りやすいです。
Instagramで問い合わせてくれてもアルゼンチンからの問い合わ

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初仕事・ベビーベッド

初仕事・ベビーベッド

我が工房TallerUBEKOの記念すべき最初のお客様のお話です。

オープンする前からいろんな人が訪ねてきてくれましたが
正式に仕事を依頼してくれた初めてのお客様は
中学校で音楽の先生をしているモンセでした。

パッと見た時、あ、この人知ってる、って思ったくらい
わたしの親戚のおばさんに似ています。
日本人とスペイン人でも
あ、似てるって思う人いるんです。

親戚のおばさんは白髪混じりのショート

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馬の毛の上で眠る王様と祈りの椅子prie-dieu

馬の毛の上で眠る王様と祈りの椅子prie-dieu

今日は教会で祈る人がいる国ならではの家具の話。

教会へ行くと、長椅子に座ってミサを聞きますが、
前の長椅子の背の部分に、聖書を置いたり膝まづいてお祈りするときに肘を支える幅の狭いテーブルのような台が付いています。
そして前の長椅子の脚の部分から膝をつくための台も付いています。

この肘を置く場所と膝をつく場所をおひとり様用にまとめた椅子がReclinatorio、
フランス語でPrie-dieu

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