【SLAM DUNK Gl】116話「ルーツ」
ヴィルフェーダ大阪トライアウトが終了した。
ブラジル出身のセバス・べノンの加入が決定した。
セバス・べノンのルーツとは?
サッカー王国ブラジルで生まれる。そこでは社会問題としてよく取り上げられる格差問題。
差別は少ない国ではあるがはっきりとした格差が存在した。
べノンもこの問題は無視出来ず、決して裕福な家庭で育ったわけではなかった。
それでもボール1つあれば、裸足でストリートを駆け回る。
足で稼ぐとプロを夢見る者、生きるためにプレーするハングリーな者。ブラジルのストリート環境が名プレーヤーを生んできたと言っても過言ではない。
べノンもそんな一人の少年だった。
「べノン! お前下手くそだな。足手まといだ!」
「背が高いだけじゃん。もっと出来るかと思ったぜ。」
べノン少年は、体格には恵まれたがサッカー王国ブラジルにおいてそのレベルは高くついていくのがやっとだった。
性格も優しく、厳しく言われようとも決してその輪から逃げるようなことはしなかった。
ブラジルのバスケット。
サッカー王国ブラジルにおいてその他のスポーツはマイナースポーツと言われてしまう節はあるものの、オリンピックで銅メダルを獲得し、日本と比較し遥かにNBA選手も排出している。
ブラジルのバスケットのレベルは決して低くない。
べノン少年はいつもの通りストリートでサッカーをしていた。
その帰り道、薄暗い路地からダムダムとボールをつく音が聞こえた。
「なんだ? ストリートバスケ? 珍しいな。」べノン
べノン少年の目に飛び込んできたのは片腕の少年だった。
「何? さっきからじっとみてさ。なんか変?」
「腕どうしたの?」べノン
「ははーん。片腕だからって、バカにしたでしょ?」
「そんなことないよ。」べノン
「俺はジウ。名前、なんていうの?」ジウ
片腕の少年の名前はジウだった。
「セバス・べノン」べノン
「そう。べノン勝負してあげるよ。」ジウ
「えっ?」べノン
「さ やるよ!」ジウ
ジウとべノンはストリートバスケで勝負した。
片腕とは思えないボールさばきでべノン少年を魅了した。
「すごいね! どうして そんなに上手なの?」べノン
「そうだろ! バスケの師匠がいるんだ。俺は兄貴だと思っている。」ジウ
「師匠?」べノン
「そう。べノンはサッカーやってるの?」ジウ
「うん。」べノン
「サッカーもいいけどさ。背が高いんだし、手足も長いじゃん。バスケやらない?」ジウ
「バスケ!? でも家が貧しいから サッカーでプロになって、、、。稼がないと、、。」べノン
「ふーん。でもやりたいかやりたくないか? どっち? バスケだってプロリーグあるんだよ。」ジウ
べノン少年はジウのバスケ姿に魅了されている自分に気付いていた。
「まだ少年なんだよ。可能性を広げたほうがいいじゃん?」ジウ
片腕の少年が可能性という言葉を何も疑うことなく使っている。
「うん。やるよ!」べノン
「よし。じゃ 明日から 兄貴のところに連れていってあげるよ!」ジウ
べノン少年は片腕の少年ジウによってバスケットに導かれた。
しかしサッカーを辞めたわけでなく、今まで通りストリートサッカーにも明け暮れ、さらにバスケットを始めたのだ。
ここでバスケットに絞ったとしたら卓越したテクニックを身につけていたかも知れない。
しかしなまじ身体能力が優れていたため、型にはまったインサイドプレーヤーに落ち着いてしまったかもしれない。
サッカーで培ったフットワークや走力、スピードはべノンに未知数の可能性を与えたのかもしれない。
そして片腕の少年ジウがバスケの師匠、兄貴と慕ったのが、
のちにフリースタイルバスケプレーヤーとなった
ダニエル・シルバだった。
べノンはジウと同様、バスケの師匠としてシルバを慕った。卓越したテクニックを持つシルバは、NBAを目指したが夢は掴めなかった。
しかしフリースタイルバスケに活路を見いだし、世界のスターの仲間入りを果たす。
べノンはシルバについていきプロを目指したが、裕福でない家庭に名門の高校や大学に通う資金もなく、陽の目を浴びることはなかった。
そしてシルバは、日本でのイベント、デサフィアンテをチャンスだととらえ、当初、シルバ単身でのイベントであったがシルバフレンズと題して試合を開催させ、べノンを参加させたのだった。
バスケの師匠、兄貴としての計らいだった。
~デサフィアンテ 終了後 日本にて~
「べノ、帰り支度してるのか?」シルバ
「うん。」べノン
「俺は、日本を旅立つ。でもベノ、お前はここに残っていいぞ。」シルバ
「どういうこと?」べノン
「デサフィアンテの試合で、ベノのプレーに興味を持った日本人関係者がいるんだ。」シルバ
「えっ ほんと!?」べノン
それが花形透だった。
その潜在能力は未知数だと、ヴィルフェーダ大阪トライアウトに推薦状を通したのだった。
「トオサン、オセワ二ナリマス。 オブリガード。」
続
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