山田 貴宏

一級建築士事務所 株式会社ビオフォルム環境デザイン室 代表取締役 パーマカルチャーの手…

山田 貴宏

一級建築士事務所 株式会社ビオフォルム環境デザイン室 代表取締役 パーマカルチャーの手法/考え方を背景に、環境と建築、エコロジカルな農的な暮らし、集まって住む、などがテーマ。 伝統的な木の家をベースに設計を行なっています。 https://www.bioform.jp

記事一覧

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 DAY3 240221 NZ視察報告 レインボーヴァレーファームとトリッシュの家

パーマカルチャー界隈ではレジェンドになっている、オークランドの北方80Kmほどにある『レインボーヴァレーファーム』(RVF)を実に20年ぶりに訪ねた。 ジョーとトリッシ…

山田 貴宏
5日前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 建物の周りと協働する柔らかい技術

住まいにとって、温熱環境と並んでとても大事なこと、かつクリティカルなことは、実は「水」である。 熱環境は厳しい環境でもなんとか凌げる可能性があるが、水の供給と人…

山田 貴宏
3週間前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY2 240220 オークランドのコハウジング事情

二日目はアースソングをでて、エココハウジング プロジェクトを2つ見学させていただいた。  都市郊外型の集合住宅タイプのコハウジング。オークランドの都心からはいず…

山田 貴宏
1か月前
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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 『ローカル+エコライフからの建築デザイン』(原稿再掲)

総合環境情報誌『BIOCITY』の88号(2021年)に『ローカル+エコライフからの建築デザイン』というタイトルで寄稿させていただいた。このNOTEで書き綴っている内容とほぼ被る…

山田 貴宏
1か月前
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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #04 『自然の仕組みの理解:植物文明への移行とパーマカルチャー』

■植物文明への移行  自然の仕組みを非常に大雑把に煎じ詰めると、「流れ」と「循環」と「ストック」ではないだろうか。地球上のエネルギーと栄養と物質は、太陽のエネル…

山田 貴宏
1か月前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係「重い」建築と「軽い」建築

 建築士は三年に一度、公的機関が主催する定期講習なるものを受講し、試験を受ける義務を負っている。日々技術研鑽に励み、建築環境にまつわる情報をアップデートしなけれ…

山田 貴宏
1か月前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 生態的建築

生態系のメタ構造としての建築 昨今、サーキュラーエコノミーが注目されるようになってきている。 かつては循環型経済と言われていたが、その深化と定義し直しがされている…

山田 貴宏
1か月前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY1 240219     『アースソング』

  2024年2月18日から22日にかけて、久しぶりにニュージーランドのエココミュニティを訪ねるスタディツアーに参加した。   2000年前後にはパーマカルチャーセンタ…

山田 貴宏
1か月前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #5 部分最適から全体最適へ

生態系の仕組みが持つ全体調和性の視点から、改めて現代の技術や仕組みを俯瞰してみたい。 現代の技術が指向していることは、まさに目の前のその問題を解決するためのもの…

山田 貴宏
1か月前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 金沢で考えた。ー伝統を未来へ繋げるには

北陸へ出張となりました。金沢、氷見と石川県、富山県にわたる2泊3日です。 寒波がやってくる、ということで結構ヘビーな防寒仕様で出かけましたが、雪はなく、晴れていた…

山田 貴宏
1年前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 トークセッション 「暮らしの場を自然に近づける」@益子/参考館 11/19/2023

■環境デザイナーの廣瀬俊介さんからお声がけいただき、2022年の11月19日に栃木県/益子の濱田庄司参考館にて、廣瀬さんとトークセッションをさせていただきました。 トーク…

山田 貴宏
1年前
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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #03 『自然の仕組みの理解:ゆく河の流れは絶えずして』

自然に寄り添った建築を想起するには、その理解が不可欠です。私は生態学者、生物学者ではないので、専門的な見地から自然の仕組みを解説することはできませんが、生態系的…

山田 貴宏
1年前
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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #02 『自然をどうみるか :生命環境主義』

■技術的環境主義 ここまで、環境問題への対応は技術による対処療法的な方法論で私たちは乗り越えようとしています。これまで引き起こされてきた環境の問題は人間の資源や…

山田 貴宏
1年前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #01 『自然をどうみるか:技術観の転換』

ここまで「パーマカルチャーとバイオシェルター」に言及していましすが、そのご紹介はもうちょっと先にします。 大晦日ですので、少し大きな話を書いて、来年に繋げること…

山田 貴宏
1年前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 「山川草木悉皆成仏 (さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」

環境と建築を考えることの間に、閑話休題として少し箸休め的なことを書きたいと思います。 昨日、天気が良い中、現在世田谷で進めている、「三年鳴かず飛ばず」プロジェク…

山田 貴宏
1年前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #00 環境と建築を考える その2   「生態建築」?

前稿からだいぶ間が空いてしまいました。 前稿のおさらいをすると、これからの環境建築を考えるとき、建築を「閉じた箱」として捉えるのではなく、自然との関係性の中で捉…

山田 貴宏
1年前
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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 DAY3 240221 NZ視察報告 レインボーヴァレーファームとトリッシュの家

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 DAY3 240221 NZ視察報告 レインボーヴァレーファームとトリッシュの家

パーマカルチャー界隈ではレジェンドになっている、オークランドの北方80Kmほどにある『レインボーヴァレーファーム』(RVF)を実に20年ぶりに訪ねた。

ジョーとトリッシュという類稀なる情熱とパワーを持ったカップルによって、1988年にスタートした、パーマカルチャーのデザインの原則を応用したモデル農園である。2000年前後にパーマカルチャーセンタージャパンで、毎年ツアーを開催しており、私も続けて4

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 建物の周りと協働する柔らかい技術

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 建物の周りと協働する柔らかい技術

住まいにとって、温熱環境と並んでとても大事なこと、かつクリティカルなことは、実は「水」である。
熱環境は厳しい環境でもなんとか凌げる可能性があるが、水の供給と人の「排泄」はその仕組みが成立していないとなんともならない。
それは災害が起こるたびにその必要性を痛感するが、どういうわけか、こちら方面の対策、対応というのは後手になっているような感じがある。

先日、排水の浄化や、コンポストトイレの研究者と

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY2 240220 オークランドのコハウジング事情

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY2 240220 オークランドのコハウジング事情

二日目はアースソングをでて、エココハウジング プロジェクトを2つ見学させていただいた。

 都市郊外型の集合住宅タイプのコハウジング。オークランドの都心からはいずれも車で15分ぐらいのところに位置する。

一つは「26Aroha」プロジェクト、4階建で13世帯が居住している。これはコーポラティブ方式ではなく、事業がいて賃貸スタイル。元々ここに土地を持っていて、土地の仕入れがなかったことが助かった、

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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 『ローカル+エコライフからの建築デザイン』(原稿再掲)

BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 『ローカル+エコライフからの建築デザイン』(原稿再掲)

総合環境情報誌『BIOCITY』の88号(2021年)に『ローカル+エコライフからの建築デザイン』というタイトルで寄稿させていただいた。このNOTEで書き綴っている内容とほぼ被るが、論考としてある一つのまとまっている文章になっているので、再掲させていただく。

(以下再掲 原稿) 

●山積する課題と都市の限界
 環境容量の限界、それに伴う気候変動やマイクロプラスチック等の問題、資源枯渇、従来型の

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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #04 『自然の仕組みの理解:植物文明への移行とパーマカルチャー』

BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #04 『自然の仕組みの理解:植物文明への移行とパーマカルチャー』

■植物文明への移行
 自然の仕組みを非常に大雑把に煎じ詰めると、「流れ」と「循環」と「ストック」ではないだろうか。地球上のエネルギーと栄養と物質は、太陽のエネルギーをエンジン役とし、水を運び屋として、この地球という世界を回っている。水、風、栄養、熱が流れの中にあり、生命はその中でエントロピーを小さくする形でストックとして存在する。こうして地上でそれを固定化してくれるのは植物である。
現在の環境問題

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係「重い」建築と「軽い」建築

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係「重い」建築と「軽い」建築

 建築士は三年に一度、公的機関が主催する定期講習なるものを受講し、試験を受ける義務を負っている。日々技術研鑽に励み、建築環境にまつわる情報をアップデートしなければならない、と言うわけだ。建築技術も日進月歩しているので、こうした機会が強制的にでもないと、どんどん置いていかれるので、面倒とはいえありがたい機会ではある。

 さて、講習のことが主題ではない。先日、この講習を受講したのだが、気になることが

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 生態的建築

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 生態的建築

生態系のメタ構造としての建築
昨今、サーキュラーエコノミーが注目されるようになってきている。
かつては循環型経済と言われていたが、その深化と定義し直しがされている。「ゆりかごからゆりかごへ」などが謳われ、ようやく単なる「リサイクル社会」を目指そう、ということから発展が見られそうだ。

また同様に「Nature based solutions」という視点も注目されており、益々生態系の仕組みを手本にし

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY1 240219     『アースソング』

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY1 240219     『アースソング』

  2024年2月18日から22日にかけて、久しぶりにニュージーランドのエココミュニティを訪ねるスタディツアーに参加した。
  2000年前後にはパーマカルチャーセンタージャパンでは毎年1月から2月にかけて、ニュージーランドとオーストラリアのパーマカルチャーの先駆的事例を訪ねるツアーを開催していて、私はその案内、荷物運び、通訳などの役回りで毎年、都合4回ほど同行していたのだった。
最後に訪ねたのが

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #5 部分最適から全体最適へ

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #5 部分最適から全体最適へ

生態系の仕組みが持つ全体調和性の視点から、改めて現代の技術や仕組みを俯瞰してみたい。

現代の技術が指向していることは、まさに目の前のその問題を解決するためのものであることが多く、個別の最適性を目指している。そうした単一課題の効率論は、問題を根本的に解決してくれるのだろうか? というモヤモヤ感がある。

現在、喫緊の課題になっているエネルギー問題は、「夢のエネルギー」が発明されてしまったら、果たし

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 金沢で考えた。ー伝統を未来へ繋げるには

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 金沢で考えた。ー伝統を未来へ繋げるには

北陸へ出張となりました。金沢、氷見と石川県、富山県にわたる2泊3日です。
寒波がやってくる、ということで結構ヘビーな防寒仕様で出かけましたが、雪はなく、晴れていたので、ちょっと歩くと暑くて汗が出るくらい。ちょっと拍子抜けでした。

さて、お約束の「ひがし茶屋街」へ。金沢は何度か来ているので、初めてではないのですが、伝統的建造物群保存地区、ということもあって、ここは好きな所です。
伝統的な茶屋では残

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 トークセッション 「暮らしの場を自然に近づける」@益子/参考館  11/19/2023

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 トークセッション 「暮らしの場を自然に近づける」@益子/参考館 11/19/2023

■環境デザイナーの廣瀬俊介さんからお声がけいただき、2022年の11月19日に栃木県/益子の濱田庄司参考館にて、廣瀬さんとトークセッションをさせていただきました。
トークセッションのイベントは↓

現在参考館にある長屋門の茅葺の葺き替えをおこなっていて、その一連の活動の一環として、このイベントに呼んでいただきました。
茅葺や藁葺きは、地域の農や自然との連環の中で成立する建築資材です。生態系的建築を

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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #03 『自然の仕組みの理解:ゆく河の流れは絶えずして』

BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #03 『自然の仕組みの理解:ゆく河の流れは絶えずして』

自然に寄り添った建築を想起するには、その理解が不可欠です。私は生態学者、生物学者ではないので、専門的な見地から自然の仕組みを解説することはできませんが、生態系的建築をこれから考えるにあたって、その仕組みの大きな掴みぐらいは、なんとかスケッチできるかなと思います。

■生態系の仕組み:植物の役割
中学、高校などで誰でも、「生態系の仕組み」を理科の授業で受けたことがあると思います。自然の仕組みを理解す

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BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #02 『自然をどうみるか :生命環境主義』

BIO+FORM考 自然と建築の幸せな関係 #02 『自然をどうみるか :生命環境主義』

■技術的環境主義
ここまで、環境問題への対応は技術による対処療法的な方法論で私たちは乗り越えようとしています。これまで引き起こされてきた環境の問題は人間の資源やエネルギーに対する飽くなき拡大指向に基づくものであり、そこは依然としてあまり顧みられていないように思います。エネルギーや資源が足りないならば、それを解決するためには、いわゆるその「効率」をもっと高めれば良いのでは、とする「技術的な環境主義」

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #01 『自然をどうみるか:技術観の転換』

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #01 『自然をどうみるか:技術観の転換』

ここまで「パーマカルチャーとバイオシェルター」に言及していましすが、そのご紹介はもうちょっと先にします。
大晦日ですので、少し大きな話を書いて、来年に繋げることにします。

■いわゆる「環境問題」
現代は「環境問題」が喫緊の課題、となっています。これは今に始まったわけではなく、1972年にローマクラブ「成長の限界」を著したことに象徴するように、ずっと以前から警鐘が鳴らされていたことです。ですが、人

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 「山川草木悉皆成仏 (さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 閑話休題 「山川草木悉皆成仏 (さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」

環境と建築を考えることの間に、閑話休題として少し箸休め的なことを書きたいと思います。

昨日、天気が良い中、現在世田谷で進めている、「三年鳴かず飛ばず」プロジェクトの地鎮祭が行われました。

今回の地鎮祭は神式ではなくて、「仏式」。私もこれまでのキャリアの中で、仏式では二回目です。プロジェクトオーナーのご縁で地域のお寺さんのご住職に執り行っていただきました。
今回感心したのは、ご住職の最初のご挨拶

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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #00 環境と建築を考える その2   「生態建築」?

BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 #00 環境と建築を考える その2   「生態建築」?

前稿からだいぶ間が空いてしまいました。

前稿のおさらいをすると、これからの環境建築を考えるとき、建築を「閉じた箱」として捉えるのではなく、自然との関係性の中で捉え、考えることが必要でしょう、ということでした。

建築の近代化は設備を伴い、また、主に工業材料で作ることが可能になり、ゆえに、環境と関係なしに成立することとなりましたが、それが環境への負荷を増大させることとなったわけです。

改めて、建

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