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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 生態的建築

生態系のメタ構造としての建築
昨今、サーキュラーエコノミーが注目されるようになってきている。
かつては循環型経済と言われていたが、その深化と定義し直しがされている。「ゆりかごからゆりかごへ」などが謳われ、ようやく単なる「リサイクル社会」を目指そう、ということから発展が見られそうだ。

また同様に「Nature based solutions」という視点も注目されており、益々生態系の仕組みを手本にした仕組みづくりや方法論を模索する動きが加速している。サーキュラーエコノミーの議論の中では、建築を「資源銀行」として位置付けようということらしい。即ち、建築を構成する素材は自然の循環の輪の中で次の要素へと渡されていくべきもの、という考えである。パーマカルチャーでも「全ては資源」であって、「自然界にはゴミはない」と示唆している。生態系を構成する要素は全てインプットとアウトプットが繋がっている、というわけだ。

自然の循環の特徴は「動的平衡」とされる。
これは鴨長明が「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」としたこの風土の環境認識とシンクロするものである。自然の仕組みは、空気、水が地球の引力と宇宙とのバランスの中で循環し、それに乗って、物質、栄養、熱が運ばれる。それは基本的には「拡散」していくが(エントロピー増大)、拡散しっぱなしではなく、それを生命として再び凝集させる動きがある。そのエントロピーを減少させ、地上に栄養、エネルギーの塊としてストック、蓄積するのは植物の力であり、全ての生命がそこに連なっている。

であれば、建築もまたその循環の中で、資源をストックするものとして位置付け、また建築の寿命が終わったらそれを次の建築に引き継ぎながら、最終的には生態系の輪の中に戻していくという「ストック&フロー」的なイメージが符合する。

建物は、それを閉じた箱として捉えるのではなく、絶えず、環境との応答性の中で、光、水、空気、熱、材料等が出入りする。建物から出たものは外界の次の要素の資源となり、むしろより豊かにする(regenerative)。以上のように、建築は周りの生態系に接続している開放系の仕組みとして捉えるのが良いのではないか。
伝統的な日本の家屋は茅、木、土、紙、石など地上の自然物で構成され、それは住まいと暮らしの近傍の環境から拝借をしてきて、それを組み立て、やがて、それを自然に返していく循環の中で成立していた。
茅は藁であれば、農業の副産物であり、そこに農との連関がある。家を作る木材としての構造材は何度か再建や移築をされ再利用されたのち、その役目を終われば、板に挽き、その後は薪として熱回収し、灰はやがて畑に帰り、農作物として循環する。
こうした建物と農や生業と自然との大きな循環の一部として建築がある、という理解の仕方をすると、自ずと環境的な建築の作り方、あり方が見えてくるのではないか。


地上資源の自然物でつくり、やがて大地に還す


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