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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY1 240219     『アースソング』

  2024年2月18日から22日にかけて、久しぶりにニュージーランドのエココミュニティを訪ねるスタディツアーに参加した。
  2000年前後にはパーマカルチャーセンタージャパンでは毎年1月から2月にかけて、ニュージーランドとオーストラリアのパーマカルチャーの先駆的事例を訪ねるツアーを開催していて、私はその案内、荷物運び、通訳などの役回りで毎年、都合4回ほど同行していたのだった。
最後に訪ねたのが確か2004年だったから、実に20年ぶりの再訪となる。

きっかけは、今回の主な訪問地である、Earthsong というエココミュニティを企画段階から主導したロビンさんの講座を2023年の4月から5月にかけてリモートセミナーとして開催したことによる。そこに参加した方々が講義の中の写真では飽き足らず、現地に行ってみたい!となり、参加者のうち9名が手を挙げ、今回のツアーとなったのだった。
ツアーの最初の最初はこのEarthsong eco-neigbourhood。オークランドの中心市街地から西へ車で20分ほど走ったところにある。 元々果樹園だったところをコーポラティブ方式で参加メンバーが買取、パーマカルチャーのデザイン方法論を活用しながら、コレクティブハウジング(コハウジング)の住まい方をデザインしたものだ。

ロビンさんによるレクチャー

企画は1995年から始まり、建設自体は2001年から開始。その後2008年まで8年にわたって、3期の工事を進め、コモンハウスも含め、9つの建物、32世帯用の住宅群をつくった。建設開始から数えて23年。私が訪問した時は1期工事と2期工事の最中2回だったが、その時はまだ緑も背丈が低く、土も剥き出しの状態で、床屋帰りの頭のような状況であったが、年月が過ぎ、緑(エディブルガーデン、果樹園)も成長し落ち着き、コモンハウスも充実、それとともに、環境配慮かつコミュニティのある暮らしが実現し、着地しているように感じた。 

建物はパッシブデザイン、1階は版築の建築。木材は全て近傍のローカルな素材を使っている、と言っていた。どこでも環境配慮型で考えると同じことになる。蓄熱性、調湿性が効いているのか室内気候はマイルドで、エアコンはないか、あってもほとんど使わないという。気候が穏やかなことと湿気が少ないということもあり、あまりエアコンに頼らずとも快適に暮らしていける温熱環境が成立していると想像される。
冬はそれなりに寒くなることと思うが、20年前の建物なので、窓のガラスはシングルで、現代の基準から言うと、ちょっと心許ない。家によっては薪ストーブがある。が、現在の室内の温熱環境でほぼ満足した暮らしになっていると言う。
コモンハウスの屋根では太陽光発電が搭載されているが、各住戸の屋根に乗っているのは太陽熱温水器である。プロパンガスのボイラーは備えているが、シャワーが主体なのか、この温水器の熱で温水はほぼ賄っている、と言う。(日本はお風呂にたっぷり入る習慣があるので、足りない。)

各住戸の前には住人が思い思いの方法で菜園を耕し、食べられる庭になっている。葡萄棚にタワワに実ったブドウが輝いていた。
元あった果樹園は残され、共有の菜園スペース、鶏など、住人同士が管理をしている。
水路のデザインがしっかりとしていて、雨水の利用と排水のコントロールがよくできている。土地の投稿線をうまく考慮した建物の配置計画になっていて、低い部分に水路と歩道を兼ねた動線が配置されている。末端には池が掘られ、水のバッファータンクとなっている。2023年にオークランドは豪雨が襲い、大規模な洪水が発生したらしいのだが、ここではうまく排水が処理され、洪水被害がなかったという。

コモンハウスでは定期的なコモンミールの開催と月一の全体ミーティングが開催されているという。閉じたコミューンではないが、とにかくコミュニケーションを欠かさない、必要な互助をいつでも提供できる、と言う空気感が感じられる。
コモンハウス含め、その前の広場や建物外部の中間領域が充実していて、そこここに人が集まる仕掛けが備えられているのは大変参考になった。

動機、スピリット、環境技術、運営プロセスなど多岐にわたり、ここでは日本でのエココミュニティ作りに参考になるアイデアが詰まっている。
https://www.earthsong.org.nz/home

2024年6月にロビンさんが来日予定。
今後来日講演を企画するので、ぜひご注視を!

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