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BIO+FORM 考 自然と建築の幸せな関係 NZ視察報告 DAY2 240220 オークランドのコハウジング事情

二日目はアースソングをでて、エココハウジング プロジェクトを2つ見学させていただいた。

 都市郊外型の集合住宅タイプのコハウジング。オークランドの都心からはいずれも車で15分ぐらいのところに位置する。

26Aroha 全景

一つは「26Aroha」プロジェクト、4階建で13世帯が居住している。これはコーポラティブ方式ではなく、事業がいて賃貸スタイル。元々ここに土地を持っていて、土地の仕入れがなかったことが助かった、とオーナーさんはおっしゃっておられた。

 ニュージーランドはここ数十年で経済発展を遂げ、今や平均年収は日本の1.5倍ほど、と聞いた。全人口が500万人ほどの国だが、そのうち165万人ほど、すなわち3割の人がオークランド周辺に住んでいるとのこと。よって、オークランドの地価の高騰や住宅事情が悪化し、どんどん郊外へ住宅がスプロールしている状況が見て取れた。

オークランド郊外の新興住宅地 日本の地方都市の郊外を見るようだ

 20年前に訪れたときは、オークランドの郊外に土地が広々と広がる中に、ゆったりとした平屋の住宅が建っている、という印象だったのだが、今回訪問してみると、長屋形式の2階建、3階建の集合住宅が多く目についた。つまり、土地の高騰でそうせざるを得ない、ということなのだろう。
 若年層にとっては、住宅を購入することが難しくなっており、問題になっている、とのこと。しかし逆の視点で見れば、そうした状況は「集住」を促し、その背後の仕立てとして、「互助的な暮らし」を備えておく、という機会にもなるかもしれない、とポジティブに考えてみる。

ちなみに、「26Aroha」という名称は道の名前と番地だそうで、住所がそのままこのコハウジングの名称になっている。「Alohaって、ハワイ語なんですよね?」と不思議そうに聞くと、「マオリ語でもArohaという言葉があり、愛、という意味です。」というお答え。

 各住戸縦長の間取りで、一軒、見学させてもらうことができた。目測だとおおよそ幅二間半くらい、奥行きは七、八間はある感じだ。
 内装の壁にはブロックが使用されていて、ダイレクトゲインで室内の蓄熱を促して必要以上の暖房はつけないようにしている工夫だという。ちなみに、オークランドは気候がマイルドで、夏の冷房はあまり使わないという。なので、エアコンは最近設置した、という話をよく聞いた。暖房側は小さな輻射パネルが居間に一台設置してあるだけ。シャワーは屋上に設置してある、太陽熱温水器からの熱供給を受けているという。

 コモンスペースを屋上に設け、共有ランドリーや集会スペース、コーヒーコーナーを用意。都会型の集住スタイルではお約束的なプランニングでもある。
 エコロジカルに暮らしたいので、洗剤の類はオーナー側が用意して、環境配慮型のものを置いているという。

屋上のコモンルーム
共同菜園

 もう一つは「Gray Lynn」という名前のコハウジング。3階建で20世帯の集合住宅。分譲タイプのコーポラティブだ。ここは都会ながら敷地の中心部に豊かな菜園とコモンハウスを設け、緑が充実していた。土地の価格が高騰している中、よくこれだけゆったりと中庭を確保できたな、と感心した。ただ、全体のプロジェクト費を聞くと外構まで入れて約20億円、ということだったので、一世帯あたり平均1億円の負担になる。オークランドの食事の物価だけで言えば、ラーメンが一杯2000円近くしたので、生活感覚としては日本の倍近いのではないか、と思う。不動産価格も倍とはならないかもしれないが、向こうの感覚だと日本円にして5、6000万円というところなのだろう。価格がオークランドの相場と比べて高い安いは一概には言えないかもしれないが、健康的なコミュニティと菜園やコモンハウスのような仕立てが手に入るのなら、必ずしも高くはないのではないか。

 26Arohaのオーナーも言われていたが、都会には都会の良い集住スタイルがあるのではないか、と。オークランド市内はバス網が発達しているので、仕事への通勤は難なくできるし、スーパーがすぐ隣にあるのも重要なファクターだとのこと。なので、両プロジェクトとも駐車場が限定的にしかない。むしろ駐輪場を大きく設けている。駐車場にはシェアカーが配備されていて、融通しあって利用しているという。都会型、ということで出来るだけ車を排除する意識で計画されている。オークランド市内ぐらいなら自転車でも十分回れる距離感なので、自転車での移動を基本にしている、ということだろう。

 建物が囲むようにして配置されている菜園、コモンハウスともいずれも住民同士の関わりしろをどう確保するか、なかなか良くできていた。そのほか、工作用の工房が設けられ、菜園に付随して雨水利用などの仕組みが設えられていて、この辺りのアイテムは、こうした暮らしにはお約束だといえよう。
 後者の案内役はここに住み、設計も担当した建築家のトムさん。(どこかのプロジェクトに似ているなあ、、、)
太陽光発電、太陽熱給湯器はこれもまたお約束な感じ。いずれも自給率は高いとのこと。

豊かな中間領域 東京では建蔽率いっぱいに建てるので無理か、、、、
住民で共同で耕す菜園

 土地、建物のコストの高騰で住宅の取得が難しくなっている中でこうしたプロジェクトもコスト的難しい面もあるが、エココミュニティに関心のある住まい手も増えていて、需要はあるということである。
 日本の都市近郊でのこうした類のプロジェクトはいくつかあるが、今後さらにこうしたことの可能性はあるのではないか、と思う。

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