『睡眠こそ最強の解決策である』
担当編集者が語る!注目翻訳書 第15回
『睡眠こそ最強の解決策である』
著:マシュー・ウォーカー 訳:桜田 直美
SBクリエイティブ 2018年5月出版
「本当は、毎日ぐっすり眠りたいんだよね…」
という方に朗報です。睡眠を削ってまで頑張る必要はありません。いかに短い時間で効率よく睡眠をとればいいか……なんて、考えなくていい。なぜなら、睡眠こそ、仕事のパフォーマンスを上げ、健康長寿を約束し、幸福を感じさせる唯一の「方法」だからです。
『睡眠こそ最強の解決策である』には、次のような文章があります。
世紀の大発見!
寿命を延ばす画期的な方法がついに開発された。しかも、効果は長生きだけではない。記憶力と創造性も向上する。外見も魅力的になる。余計な食欲がなくなり、スリムな身体を維持することもできる。ガンや認知症とも無縁になれる。風邪やインフルエンザも撃退してくれる。心臓発作と脳卒中のリスクも下がる。もちろん糖尿病にもならない。幸福感まで高まり、抑うつや不安は消える。どんな方法か、興味はあるだろうか?
もし、こんな記事を見かけたら、それはどんな方法か知りたいと思いませんか? 仮にその方法が「スクワット」だとしたら、スクワットをやってみようと思うだろうし、仮にその方法が「毎日日記を書くこと」だとしたら、毎日日記を書いてみようと思ったりするでしょう。だけど、その方法が「毎日十分に睡眠をとることです」と言われたら?
「睡眠が大切なのはわかるけど、時間がないからしょうがないじゃないか!」
なんて、怒ってしまう人は、なぜそんな状況になっているのか、考えてみるのもいいかもしれません。仕事のために、子育てのために、プライベートの時間をつくるために、睡眠を削る。そもそもなぜ、大切なものなのに削ってしまうのでしょう。仕事ができる人はたいていショートスリーパーで、睡眠を削ってまで頑張る人はえらいから?
寝坊したら怒られ、居眠りしたら注意され、寝すごすと呆れられ……とにかく眠ることに対してはマイナスの評価をされがちです。「寝る子は育つ」と言われているのに、寝る大人は「仕事ができない」という烙印を押されてしまうなんて! なんだか「歳を取ることは損」と言われている気分になります。
けれども、わたしたちが睡眠を削ってまで何をしているかというと、仕事や家事、ゲームやSNS……それは果たして「幸せになるため」に必要なことなのでしょうか。この本を読んだら、もう眠ることに罪悪感をもたなくなります。わたしは「朝起きられないのも仕方がない」と、とっても心が軽くなりました!
「だけど、夜更かししちゃうんだもん…」
ついつい夜更かししてしまうその気持ち、とってもわかります。でももう自分を責める必要はありません。もしかしたらあなたは遺伝子からして「夜型人間」なのかもしれないのだから。
原始時代、敵から襲われないためには見張りが必要でした。夜型人間は夜遅くまで見張りができるし、朝型人間は朝早くから見張りができる。朝型人間と夜型人間がいることは、人間の遺伝子に刻まれた生存戦略。
つまり、夜更かししてしまうのは、そもそも「夜型人間」だから仕方がないのです。わたしが「夜になるほど元気になる」のは、なるほどこういうわけだと、少し気が楽になりました!
「でも仕事があるんだよ、どうしたらいいんだよ!」
朝早くから夜遅くまで仕事がある人は、そんなふうに不機嫌になるかもしれません。その対策は本書の中身を読んでいただくとして……ひとつ、日本の読者の方に考えてもらいたいことがあります。それは、わたしたちはそろそろ「いかに短い時間で効率よく眠るか」ではなく、「いかに睡眠時間を確保するのか」を考えたほうがいいのではないかということ。いわば「睡眠第一主義」!
よく考えてみたら、睡眠をしっかりとらないと仕事ははかどらないし、見た目もなんだかしっくりこない1日になるし、自己肯定感は下がるし……いいことはひとつもありませんでした。だから、私は本書を読んで「睡眠第一主義」に鞍替えしました。一瞬で。鞍替えしたら、仕事もはかどるし、若く見られるし、気分もいいし、一石二鳥、一石三鳥。睡眠万歳!
「……あの、それよりぐっすり眠る方法を知りたいんだけど……」
もちろん、世界最高峰の睡眠学者が書いている本です。ぐっすり眠るための方法、きちんと用意されています。しかも巻末にギュッとまとめられているから、ここだけこっそり立ち読みしても……。いやいや、立ち読みではやっぱりもったいない!
本書を実践したら人生は本当に変わるだろうし、そこまで大げさじゃなくても、わたしのようにとっても心が軽くなるかもしれません。それに、読むだけでエビデンスとか知識が増えて、ものすごく頭がいい人に見えるかも……という特典も。そして、この本がアメリカやイギリスでベストセラーになったということも興味深い。ハリウッド俳優やセレブがこぞって絶賛する一冊なのです。というわけで、日本の方も、もっと「ぐっすり眠りたい」欲求に素直になっていいのではないでしょうか?
この本は、睡眠本だけれども、睡眠の枠にとらわれない、まぎれもなき「自己啓発本」です。ぜひこの本を読んで、「ロングスリーパー対ショートスリーパー」の論争なんてしてもらえたら。毎日当たり前に行なっている「睡眠」と向き合う機会にしていただけたらうれしいなと思います。
執筆者:杉本かの子(SBクリエイティブ株式会社 学芸書籍編集部)
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