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美術館のすすめ

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美術館の展示レビューです
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#美術展

そして、4月がやってきた(東京国立近代美術館にて)

そして、4月がやってきた(東京国立近代美術館にて)

3月31日、夜。
私は竹橋の東京国立近代美術館にいた。絵の前で頭を空っぽにして息を吸う。
絵と向き合うときだけは、今日の晩御飯のことも、仕事のことも、週末のことも、出さなければいけないゴミのことも全て忘れて、今ここに集中している気がする。

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3月31日は、社会人になってから何度

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「I'm in the pink.」忘れられない絵

「I'm in the pink.」忘れられない絵

忘れられない出会いは人生で何回あるだろう。
私の人生に影響を与えた人はたくさんいて、それは友人だったり同僚だったり夫だったりするのだけれど、忘れられない絵との出会い、というのもある。きっとそれは誰かにとっては音楽だったり、本だったり、映画だったり、スポーツだったりするのだろう。

いくつかの記憶に残る絵があり、今でも追いかけ続けているいくつかの絵がある。ある日、あの時、あそこにいなければ出会えなか

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金曜の夜の贅沢(三菱一号館美術館にて)

金曜の夜の贅沢(三菱一号館美術館にて)

金曜日の夜、仕事を終えて、いつもと違う電車に乗り、私は東京駅へ向かう。

東京駅で降り、帰宅するために駅へ向かう人々と、逆方向へ私は歩いていく。

東京駅から歩いて5分ほど。赤いレンガ造りの建物が見えてくる。そう、三菱一号館美術館だ。

華金、なんて言葉があるけれど、私はどちらかと言えば、金曜日の夜は飲みにいくよりも、ゆっくり美術館で過ごす方が好きだった。大学4年生の頃、アートにハマり始めた私は、

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厳しい冬を乗り越えて(東京都写真美術館にて)

厳しい冬を乗り越えて(東京都写真美術館にて)

星野道夫さん、というと私が思い出すのが現代国語の教科書だ。内容はあまり覚えていないが、当時私が読んでいた国語の教科書に星野道夫さんの文章が掲載されていた。教科書のプロフィールに記載されていた、彼が数多くの動物や自然の写真を撮っていたこと、そして取材中にヒグマに襲われ、急逝されたことを覚えている。

当時の私にとっては、国語の教科書は癒しだった。幼い頃からたくさん本を読んできたからか、国語は得意でど

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人生、ずっと考え中(国立新美術館にて)

人生、ずっと考え中(国立新美術館にて)

六本木で降りたのは久々だ。前に来たのはいつだっけ、と記憶をたどる。いつだかの夏、幼馴染と六本木の国立新美術館に来た。カフェのテラスでお茶をしたのがとても気持ち良かったことを覚えている。青々とした夏の緑と夏の風。夕方になってもまだ明るい空。

もうあれから何年経っただろう。ここ最近の私は、記憶とその頃に見た美術館の展示が結びついていることが多い気がする。まるでそれは、高校生のときに散々自転車に乗りな

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「才能がある?それどころか、ありすぎる」(東京都美術館にて)

「才能がある?それどころか、ありすぎる」(東京都美術館にて)

自分の人生はあと何年くらい残されているのだろうか。

たまにふと考えるけれど、現代の日本に生きる我々は事故とか、病気とか、天災とか、何か自分ではどうしようもないことに巻き込まれない限りはおそらくあと50年くらいは生きることができるのではないか、と当たり前のように明日があることを考えている自分がいる。まあ、なにせ人生100年時代である。とはいえ、何が起きるかは誰にも分からないけれど。

そんなことを

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